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日常 その3

 翌日、準備を整え朝食を食べ、全員揃ってギルドへと足を運ぶ。そして、依頼掲示板の前で本日の仕事を選ぶ。

 害獣の討伐か、はたまた探し物や買い物代行等のものか。どれにしようか迷っていると、カルルがふと目に留まったのか近寄ってそれを手に取ると、その紙を自分に差し出した。


「ん? どれどれ……」


 差し出された紙を手に取りその内容を確かめると、そこに書かれていたのは一応護衛。

 いやこの場合は防衛になるのだろうか、所謂農園を害獣の脅威から守ってほしいと書かれていた。


 依頼の遂行場所となる農園の場所は、どの程度の所にあるのか分からなかったが。後にレオーネから王都から馬車で三時間程度の所に在ると教えてもらった。


 そして、カルルがこの依頼に目を付けたであろう最大の理由がある一文から読み取れた。

 そこには、特別報酬としてこの農園で栽培しているリンゴが貰えると書かれていたのだ。

 ふとカルルの方に視線を移すと、そこには切望の眼差しで自分を見つめるカルルがいた。


 漫画やアニメなら確実にお星様が飛んできそうな、そんな目で見つめられて、断れる者がいったいどれ程いるのだろうか。少なくとも、自分は無理だ。


「よし、それじゃこの依頼にするか」


「やったー!」


 レナさんもレオーネも特に反対していないので、今回はこの依頼を引き受ける事に。

 この依頼を受けると告げると、カルルはぴょんぴょんと体全体で喜びを表現する。そんなカルルの姿に自分も自然と笑みが零れながらも、手続きを済ませる為にカウンターへと向かう。


 程なくして無事に手続きが完了すると、ギルドを後に農園に向かうべく辻馬車乗り場へと足を運ぶ。

 御者の男性に行き先を告げると、自分達を乗せた辻馬車は農園を目指し王都を後に一路街道を走る。



 途中、害獣と遭遇する事も無く、王都を出発してから約三時間後。無事に、自分達を乗せた辻馬車は今回の依頼の遂行場所となる農園へと到着した。

 待ってもらう旨を伝え支払いを済ませて辻馬車を降りると、今回の依頼の依頼主に会って状況を聞くべく、依頼主がいるであろう農園脇の建物へと足を運ぶ。


「すいません。依頼を受けてやって来たんですが……」


 石と木で出来た三角屋根の家。その家の玄関を叩いて声を掛ける、が返事が返ってこない。留守なのだろうか。

 と思っていると、不意に玄関が開き中から一人の初老、いや中老辺りか。日頃の作業で見事な小麦色に肌を染めた小柄な、しかし日頃の作業の賜物か体格のいい男性が表れる。


「何だね。依頼? ……あぁ、依頼か。どうぞ、中へ」


 一瞬目の前にいる自分達に不審を抱いてはいたが、直ぐに思い出したのか。家の中へと自分達を招き入れる。

 大人数では手狭なリビングへと通されると、男性は椅子に腰かけ話し始めた。なお、椅子は一脚あるにはあるが自分達は一応立って話を聞く事に。


「一応、害獣対策として柵や罠は仕掛けてあるんだが、幾分奴ら諦めが悪くてね。私が必死になって育てた作物をみすみす害獣の成長に使われるのは癪で仕方がない」


 思った通り、この小柄な男性が農園の主にして今回の依頼の依頼主であった。

 男性の話によれば、上級の害獣は確認されていないようで、作物荒しの犯人は主に下級の害獣だとか。


 勿論黙って静観などせずに対策も打ってはいる様だが、あまり効果のほどは上がっていないらしい。

 しかも、害獣たちはあろうことは白昼堂々と作物を荒らしに来るのだとか。

 依頼主に追い返すだけの力が無いと分かっているのか、何と大胆で小馬鹿にする犯行だ。


「許せない! 折角大切に作った作物を目の前で食い荒らすなんて!」


「全く以てその通りです! 礼儀を知らぬ害獣達にはきっちりとその命でその行いの代償を精査してもらわなくては!」


 依頼主の話のを聞いてカルルが声を挙げる。すると、それに感化されたのか珍しくリッチ4世さんも声を挙げた。

 確かに、手塩にかけて育てた作物が無残に目の前で害獣に食い荒らされる様は、看過できるものではない。

 しかもそれを自分自身でどうする事も出来ない悔しさ、それは他人には計り知れないものだろう。


 過去は変えることは出来ないが未来なら可能だ。依頼主がこれ以上そんな悔しい思いをする事のないように、自分達が腕を見せねば。


「任せてください。これ以上害獣に好き勝手させませんから」


 力強い言葉を残すと、いつも害獣が姿を現す時間帯と言う事で、いよいよ作物を守る為の害獣駆除に乗り出す。


 依頼主の家を後に農園からほど近い森林の方へと足を向ける。周辺に大規模な森も山も無いこの辺りで、唯一と言ってもいいある程度まとまった草木が密集しているのがこの森林だ。

 柵はもとより、害獣対策用の手製の罠も森林と農園との境界辺りに重点的に設置されている。


「おや、今回はフェルの活躍はなしですか?」


「うん。動き回って罠に掛ると厄介だから」


 どうやらまだ害獣達はその姿を現していないようなので、その前に軽く作戦会議を開く事になった。


 その中で、今回フェルに関してはカルル同様にサポートに徹してもらう事になった。主な理由としては、害獣対策用の罠の存在だ。

 フェルは動き回る事でその能力を最大限発揮できる、しかし今回は罠が設置していある場所での戦いだ、罠に掛り痛手を負って最悪殺されてしまっては元も子もない。

 それに、依頼主の話を聞く限り相手の害獣は下級で数も大規模と言うほどのものでもない為、フェルがいなくても大丈夫だろうと判断したからだ。


 ただ、万が一に備えてリッチ4世さんには本来の姿に戻ってもらう。予期せず数が多ければ魔法で対処してもらう為だ。


「グウゥゥ……、ワン!」


「トホホ、やはり駄目ですか」


 なお、これは最近分かった事だが。どうもフェルは省エネモードのリッチ4世さんは大丈夫なのだが、本来の姿に戻ったリッチ4世さんは駄目らしい。

 この間も互いに省エネモードのフェルとリッチ4世さんは戯れていたが、今は見事に省エネモードとは言え、可愛らしいがそれでも鋭い歯を見せて威嚇している。

 一体何が違うと言うのか、単に外見的な違いとは別の、フェルにしか分からない何かがあるのだろうが。その微妙な線引きを理解するにはどうやらまだまだ時間が掛りそうだ。



 さて、こうして軽く作戦会議を終えてリッチ4世さんとフェルとの掛け合いも見終わった所で、農園に害をなす害獣達が森林からその姿を現した。

 今の所姿を現したのはゴブリン系が数体のみ。依頼主の話によると複数の種の害獣が犯人であると言う事なので、まだまだ氷山の一角なのだろう。

 だが、氷山の一角だろうが何だろうが、姿を現した以上討伐させてもらう。

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