お熱いの一つ その3
今回は少し短めです。
「おはようございます。昨晩はよく眠れましたか?」
二人揃って部屋を出て一階へと降りると、既に起きていた村長と村長の奥さまから挨拶の声がかかる。
無難に挨拶を返すと、朝食が用意していますと客間へと誘導される。
そして客間に足を踏み入れると、レオーネ達の姿は見えず、どうやらレオーネ達はまだ起きてきていないようだ。
「泊めていただいただけでなく朝食まで、本当に有難うございます」
「いえいえ、皆さまは命をかけて村の為に頑張ってくださったのですから、これ位のもてなしは当然ですよ」
昨晩と比べると幾分質素に思えるが、それでも朝食としては豪勢な部類に入る品々が並ぶ。
レオーネ達が起きてから揃って食べようかとも思ったが、やはり料理は出来たて熱々のうちに食べるのが作っていただいた方への最大の感謝であろう。
と言うわけで、一足先に朝食をいただく事に。
それからどれ程経過したか。朝食を食べていると、やっと起きたレオーネ達が村長に誘導されながら客間へとやって来る。
「ふぁ……、二人とも早いっすね」
眠気が残る素振りを見せつつも、朝食を前にするとその匂いに釣られて残っていた眠気が吹き飛んだのだろう。席に着くや否や次々に手を付けていく。
こうして朝食を楽しんでいると、昨晩の件で何か言われるのではと内心心配していたものが現実となった。
「そう言えばお二方とも、昨晩はお楽しみでしたか?」
刹那、口に含んでいた紅茶を一気に放出しそうになる。何とかそれは阻止したが、反動でむせてしまう。
先ほどの声の主を見ると、表情は変わらない筈だが、何故かその時はリッチ4世さんの顔がニヤニヤしているように見えた。
「あ、あのな……」
「いや~、実は俺も気になってたんっすよ」
これ以上余計な質問をする前にその口を閉じさせようと思った矢先、新たな対象が現れる。言わずもがな、レオーネだ。
レオーネの表情は、リッチ4世さんよりもはっきりとニヤニヤしていた。それはもう憎たらしい程に。
「どうなのですか?」
「どうなんっすか?」
朝の爽やかな食事の場に似つかわしくない話題を追及するレオーネとリッチ4世さん。
昨晩は本当に何もなかったと嘘偽りなく本当の所を告げてもなお、どうやら嘘をついていると思っているらしく追及を止めない。
既に本当の事を言っている以上、これ以上言う事はないのだが、それでも嘘の一つでありもしない事を告げなければ止まない雰囲気だ。
と思った矢先、それまでの矛先が自分からレナさんへと変わる。
どうせ答えは一緒だと思っていると、レナさんが口を開いた。
「ふふ、そうですね。お互いの肌の温もりを感じ合いながら一つのベッドで眠った、かな」
本日二度目。再び、口に含んでいた紅茶を一気に放出しそうになる。
ちょっと待ってくださいレナさん、何ですかその明らかに誤解を招きそうな答えは。
確かに間違ったことは言ってないが、その言い方は不味いですよ。
「村長ぉぉぉっ! コーヒー、苦いコーヒーを大至急っす!」
「私にも!」
刹那、案の定と言うべきか、レオーネとリッチ4世さんが壊れた。もう溜息が漏れるしか他ない。
こんな状況を作り出したレナさんの方をふと見ると、少しやり過ぎたと思ったのか視線でごめんねと訴えてくる。
本当は一言でも言っておくべきなのだろうが。だが、レナさんの少し御茶目な部分を見られたと思うと、特に怒りは湧いてこない。
なお、話の流れがあまり理解できなかったのか、カルルとフェルは頭に疑問符を浮かべていた。
こうして賑やかな朝食は進み、程なくして朝食を終えると、いよいよ王都に戻る為に村を後にする事に。
村長を始め村人の方々に見送られながら、荷車を連結させ自分達を乗せた辻馬車は一路王都に向けて進み始めた。




