調査 その7
しかし、高い繁殖能力にものを言わせ数で他を圧倒しその地域の生態系を狂わせる事もある。まさに数の暴力だ。
どうやら今回の調査隊の派遣、そのあたりを危惧しての事らしい。
調査の内容いかんで討伐隊を派遣すると言う話も、成程、それなら納得がいく。
他にもトンドの森にはいない蟲系以外の系統の害獣も何種か目撃されているようだが、圧倒的に蟲系がその割合を占めているとの事。
「にしても、トンドの森にはこんなに沢山の蟲系は生息してない筈だろ。何だって急にこんなに増えやがったんだ」
「その原因を突き止める意味でも、自分達が調査に行くんですよ」
一体今回の調査を何だと思っていたんだと言わんばかりの視線がグランさんに降り注ぐ、どうやらグランさんは物事を深く考える事が苦手らしい。
視線に気づいたグランさんは、やや頬を赤く染めながら顔を突っ伏してしまった。
「整理すると、調査対象となり得る害獣は蟲系となる可能性が高く、蟲系は種にもよりますが基本的には個体能力の低さを数でカバーします。となると、必然的に遭遇し討伐となった場合、多数を相手にする事態になる可能性が極めて高い」
そこで一旦呼吸を整えると、再び話し出す。
「なら、パーティー単体では不安もあります。なので、ここはパーティー二組による行動をとった方が万が一の場合にも対処しやすいと自分は思います」
自分が新たに出した提案に、ハイドルトさんは賛成の意を示すかのように頷いている。
しかし、残りの二人については手放しで賛成とはいかないようだ。
「ちょっと待て、そりゃ確かにそうかもしれないが組むったって何処と何処が組むんだよ? 俺達は見ての通り三……」
「あの、グランさん。先ほどから気になっていたんですが自分のパーティーの頭数にカルルの使い魔を入れてますが、使い魔には金銭的な報酬は必要ないのでは?」
「いや、そりゃぁ……」
「それに、純粋なパーティーのメンバーと言う事であれば、自分達のパーティーもグランさんのパーティーと同じ三人と言う事になりますが」
多少屁理屈かもしれない自分の意見に対して、グランさんは特に反論を述べる事はなかった。
その後、自分の提案に賛成したハイドルトさんと自分達のパーティーが組む事となり。残りの二組が自動的に組む事となった。
互いに出し抜こうとしているパーティー同士が組んだので、互いにけん制し合って突発的な行動に出る事はないかも知れない。この組み合わせはそんな可能性も含めての組み合わせだった。
なお、別途報酬については公平に一人頭で割る事で合意となった。
こうして色々とあった顔合わせも終わり、いよいよ調査隊がトンドの森を目指して出発する運びとなった。
王都からトンドの森へとの移動は、途中まではギルド側が用立てた馬車に乗って行く、そしてその後は、言わずもがな歩きだ。
「そう言えば、君達の荷物は随分と少ないようだけど、それで大丈夫なのかい?」
「ご心配どうも。でも、自分達の荷物は冒険者鞄に入れてるんでご心配は不要ですよ」
自分で提案しておきながら、少しこの提案をしたことに今更ながら少し後悔している自分がいた。
自分達のパーティーと組むことになったハイドルトさんのパーティーは、自分達と同じ馬車に同乗する事となった。そしてその際、余計な心配をしてくれる事になる。
どうも、自分はハイドルトさんとは反りが合わないらしい。
因みに、自分達以外のパーティーの荷物は、ギルドの職員に頼んで先に馬車に乗せていたらしい。どうりで待合室で見た時に余計な持ち物がなかったわけだ。
「レナさんって肌綺麗ですよね。やっぱり日頃からお手入れは欠かさないんですか?」
「そ、そんな事はないと思いますけど」
「セナ、あまり質問攻めにするのはよくないよ」
なお、自分とハイドルトさん以外のメンバーはと言えば。女性陣は何やらガールズトークで盛り上がっている模様で。
カルルとリッチ4世さん、それにガウリーさんはどうやらガウリーさんの故郷の話で盛り上がっているようだ。
距離が縮まっていないのは、どうやら自分とハイドルトさんだけらしい。
とは言え、その後も馬車に揺られ続け移動している間、特に互いの距離が縮まると言う事はなった。
無理に距離を縮める必要もないので、反りが合わない事も相まってそうなったのかも知れない。
こうして時が経ち馬車での移動も終わり、徒歩での移動でトンドの森を目指す。
そして数日後、途中障害にもならない程度の害獣との遭遇戦を経て、自分達はいよいよトンドの森へと足を踏み入れる事になった。




