新たな出会い その4
王都へと到着し、第一の難関であり最大の難関とも言える衛兵の厳しい視線を受ける事になる。
しかし、事前にぬいぐるみの様に装い動かないようにとの指示をリッチ4世さんが忠実に守ったからか、特に問題もなく王都内へと足を踏み入れられた。
「ここが王都ですか。いや~、多いですな」
衛兵対策としてカルルの腕に抱かれているリッチ4世さん、まるで地方から都会へと初めて出てきた者の如く行き交う人々や建造物等を眺めている。
「それに。いや~、平均的なレベルも高くなかなか多種多様なマドゥモワゼルの方々がいらっしゃいますな」
否、どうやら見ていたのは主に女性のようだ。
全く、その女性に金銭を吸い取られあまつさえ殺されそうになったと言うのに、懲りないと言うかなんというか。
「リッチ4世さん、これからギルドに行きますから、またしばらくは黙っててくださいね。リッチ4世さん好みの女性も多数いるかとは思いますが」
ギルドには文字通り多種多様な人々が集う。それは性別や年齢層のみならず、種族の枠を超えてその顔ぶれは多種多様だ。
そして、ギルドと言う職種は他の職種に比べ女性の比率が高いものであると思う。それは男女平等と言うよりも、単に敷居の低さと一攫千金を得られる前例などがあるという所によるものだろう。
更に言えば、何故か比率的にリッチ4世さんのみならず健全な男性ならば誰しもが目を釘付けにするであろう装いをしている女性も多い。中には、羞恥心なんて概念もないかのように、また本当に戦闘を考慮しているのかと疑問を持つほどに際どい装いをしている者もいるのだ。
かく言う自分も、ギルドのメンバーになった当初は異性の同業者のその際どい装いの数々に、目のやり場に困ったものである。
今となっては、特に意識する事もなくなってしまった。本当に、慣れとは恐ろしいものだ。
そんなギルドへと辿り着くと、慣れた動作でカウンターで手続きを済ませる。
手続きを済ませている間、周囲にいるギルドの職員や同業者たちは特にリッチ4世さんを気にする様子はうかがえなかった。
「いやはや、ギルドって本当にいい所ですね。私なら一日中いても飽きないですよ」
リッチ4世さんなら一日と言わずいつまでもいそうな気がするが、そこは声に出さずに心の中にしまっておく。
「しかし、ここも中々いい所ですね。こんなに美味しい料理を提供してくれるのですから」
「お褒め頂いて光栄です」
さて、それよりも今自分達が何処にいるのかと言えば、それはボルスの酒場だ。
別の依頼をこなすには少し中途半端な時間帯であり、加えて夕食を食べるにしても少し早いと言う事もあり、時間潰しもかねてギルドからボルスの酒場へとやって来たのだ。
こうしてボルスの酒場へと足を運んだわけだが。そこで腹が減ったと言い出したリッチ4世さんの訴えに応える形で、結局少し早目の夕食をとる運びとなった。
しかも、何故かマスターは普通に喋ったり食事をするリッチ4世さんの事を特に気にする事もなかった。
「あの、マスター。リッチ4世さんの事、気にならないんですか?」
このまま触れずにいるのもよかったが、流石に気になりマスターに質問をぶつける。
するとマスターは、リッチ4世さんと言う名前なのですかと言いつつ、質問の答えを返す。
「ショウイチさんかカルル君の使い魔ではないのですか?」
「え、あ……。まぁ、そんなところです」
どうやら、マスターはリッチ4世さんの事を自分かカルルの使い魔と思っていたようだ。
同業者の中には、使い魔と称する手懐けた害獣を連れている者も存在する。そうした者達は、害獣使い等と呼ばれている。
ただ、リッチ4世さんは正確には害獣とは異なる為、使い魔と言ってよいのかとの疑問は残る。ま、その見た目は可愛いとはいえ害獣と言えなくもない。
しかし、本当の事を言っても話がややこしくなるだけなので、とりあえず使い魔という事にしておこう。
その後、マスターが他の客と談笑している隙にカルルとリッチ4世さんを交え、小声で話を合わせる事に。
「おや、てっきりショウイチさんの使い魔にするのかと思いましたが」
「そこは何というか、バランスを考えた結果、かな」
「オイラは別にいいぞ」
その結果、対外的にはリッチ4世さんはカルルの使い魔とする事になった。
リッチ4世さんの言うように主人が自分でもよかったが、パーティーとしてのバランスを考慮し先のような結果に至った訳だ。
こうしてリッチ4世さんの立ち位置も決まったところで、中断していた夕食を再開する事に。
省エネモードと言う割には食欲は全然省エネではないと矛盾を感じる程に、頼んだ料理が次々にあの小さな体の中へと消えていく。
いや、食欲以前に。あの小さな、しかも骨格だけであろうその体の何処にあれだけの量が消えているのか。考えるだけで、この世界の奥深さと言うか神秘という物を感じずにはいられない。気がする。
ふと、視線を他方に向けると。いよいよ書き入れ時が迫って来たのか、店内の賑やかさも増してきていた。
そしてまた、新たな客が店へを足を踏み入れていた。
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