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出会いと別れ

 あのワナワナ遺跡での出来事から、早いもので更に一か月という月日が流れていた。

 あの遺跡では色々と衝撃的な体験をした。特に、人を意図的に殺めた事は、自分にとっては衝撃的で。あの後も、しばらく夢であの光景が繰り返される事もあった。

 だが、いつまでも引きずってはいられない。ここは前世とは違う、ここではあれが当たり前なのだから。


 幸いと言うべきか、不幸と言うべきか、人は慣れる生き物だ。徐々にではあるが、薄れているのは感じる。肉料理も、今では以前同様普通に食べることが出来る。



 さて、自分の心情の話はこの辺りにして。フィルと自分のパーティーについての話をしよう。

 共にやり遂げた依頼の数も増え、ますますパーティーとしての熟練度が上昇中なのだが。まだまだこれから。と思った、そんな矢先に事は起こった。


 仕事を終えた翌日は休息日としようと、二人の間ではそんないつの間にかそんな決まりが出来ていた。そして今日は、そんな休息日であった。

 にも拘らず、何故かフィルはボルスの酒場の自分の部屋にいた。しかし、いつぞやのように不法侵入した訳ではない。

 休息日と言う事もあり、少し遅めの朝食を一階部分の酒場で堪能していると、突然フィルがやって来て部屋で話したい事があると切り出してきたのだ。

 もはや彼女が突然訪ねてくるのは慣れてしまったが、その時はいつものノリの良さではなく、何時にもなく真剣な表情をしていたのは印象に残った。


「で、話したい事ってなんだ?」


 自分の部屋なのだから何処に腰を下ろそうと勝手だが、自分は椅子に座り、フィルはベッドに腰を下ろしている。

 しかし、悩んでいるのか話があると自分から切り出した割にはなかなか言い出せず、いつものフィルらしくない歯切れの悪さだ。


「まぁ、あの。……驚かないで聞いてね」


 やがて彼女の口から言葉が漏れると、その内容に驚くなと言われていても驚かずにはいられなかった。


「突然こんな事を言うのもなんだけど、ショウイチ。パーティー、解散しよう」


 何故なら、突然の解散宣言だったのだから。


 驚きのあまり声を挙げてしまう事はなかったが、あまりに突然の事に開いた口はふさがらなかった。

 と同時に、解散の原因となる要因が見当たらずしかし彼女の口からはっきりと解散の二文字が出てきた事実に、もはや頭の中は混乱せずにはいられなかった。

 自分が頼りなくなったのか、それとも他に腕のいい相棒を見つけたのか。頭の中では様々な憶測が出たり消えたりしている。


「ちょっと、そんな顔しないでよ。解散って言っても一時的、永遠にパーティーを組まないって事じゃないんだから」


 頭を抱えて悩む自分の姿に、自身の言葉が足りなかったのだと悟ったのか、彼女の口から再び言葉が漏れた。

 そしてその中には、気になる単語が含まれていた。一時的、一体どういう事なのだろうか。


「え、一時的? フィル、どういう事だよ」


「アタシがトレジャーハンターの修行し直している間の一時的って事」


 何故今更になってフィルが修行をし直す必要があるのか、そんな疑問をぶつける前に彼女自身の口からその答えが明かされる。


「どうして今更って顔してるけど。……ショウイチ、アタシとパーティーを組んで仕事で色々な遺跡なんかを巡ったわよね」


「あ、あぁ」


「様々な遺跡には様々な仕掛けがあって攻略するのは一苦労。でも、アタシ達は運が味方してくれたのか、幾つかは偶然にも労せず攻略できたわ。でも、アタシとしてはそれが許せないの。運なんかじゃなく自分の手で、自分の知恵で攻略したいの!」


 カユーイ遺跡以降。他の遺跡などに行った際も味を占めた訳ではないが、あれ(自称万能携帯端末)でこっそり確かめた事は幾つかあった。

 無論、フィルにばれないようにしていたのだが。どうやら、それが彼女自身に重しとなっていたらしい。


「だから、運に頼らなくても出来るように自分を鍛え直す。その意味で、もう一度トレジャーハンターとして修行し直すの」


 実は運なんかじゃない、とも言いだせず。言い出したところで彼女の気持ちは揺らがないんじゃないだろうか、そんな思いさえあった。

 なので、ここは黙って彼女の背中を押す意味でも、一時的にパーティーを解散する事に同意する。


「所で、修行ってどれ位の期間行うんだ?」


「ん~とね。アタシが満足するまでだから半年か一年か、はたまた五年か十年か……」


 フィルが鍛え直して再びパーティーを組めるようになるまでは、どうやら長い期間が空きそうだ。


「あ、でも。アタシとのパーティーを解散したからって遠慮して一人で活動してなくてもいいのよ。二人でも三人でも何人でも、他の誰かとパーティーを組んでてもアタシは構わないから」


 それからいつもの調子に戻ったフィルと暫く談笑した後、まるでいつもの仕事終わりのように別れる。一年か五年か、少し長い間離れるとは思えない程、いつもと変わらないような雰囲気がそこにはあった。


「それじゃ、アタシも頑張るから、ショウイチも頑張ってね」


「分かった、戻って来た時に見違えたと言われるように頑張るよ」


「ふふ、楽しみにしてるよ」


 フィルが部屋を出ていき一人残された自分は、何をするでもなくベッドに横になった。そして見慣れた天井を見つめながら、今後の事について考えを巡らし始める。

 再び一人となり、今後どのように活動していくか。一人ならば他人に合わせる必要はないから気は楽だし、縛りも少ない。


 しかし、フィルとパーティーを組んでいて分かったが。パーティーを組んでいれば仕事の幅も広がり、何より収入が一人の時よりも段違いになる。

 無論、一人でもパーティーを組んでいるより割の良い人はいるかも知れないが、そんなのはおそらくギルドではほんの一握り位だろう。

 そんな一握り程の人達の中に入るには、自分はまだまだ力不足だろうし、明日明後日で入れるものでもない事も分かる。


 となると、やはり誰かとパーティーを組んだ方が今の自分にとっては良いだろう。

 ただ、一つ問題がある。それは、パーティーを組んでくれそうな人物の目当てが無い事だ。

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