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仲間 その3

「ところで。フィル以外にはどんな人がパーティーに?」


 パーティーに加わること自体は初めてではあったが、自身に与えられる役割が分かっている分不安は少なかった。

 それよりも、他のメンバーと意思疎通が上手くできるか、そちらの方が不安ではあった。自分は人見知りではないとは思うが、やはり人間である以上合う合わないは存在する。


「え、アタシとショウイチ以外はいないけど」


 流れるかのようにさらっと答えるフィル。


「え、二人だけ!」


「そ。いや~実はさ、少し前まではもう一人組んでたのがいたんだけどね、その人がちょっとやられちゃって。あぁ、命に別状はなかったんだけどさ、その、五体満足じゃいられなくなってね」


 以前組んでいた人が一体どれほどの実力の持ち主かは分からないが、こんな世界だ、油断すれば手足なんて一瞬で失う。そして、トレジャーハンターにしろなんにしろ、ギルドは実力社会だ。五体満足でない身体では現役続投は絶望的だろう。


「でさ、代わりの人をと思って探してたんだけど。まぁ、まだトレジャーハンター歴一年のアタシみたいなのを相手にしてくれる奴ってなかなかいなくてさ」


 トレジャーハンター歴一年、その言葉が漏れた瞬間驚きを隠せなかった。

 その雰囲気からてっきり、十年は言い過ぎでも数年程のキャリアは積んでいるとばかり思っていたのに。まさかのまだ一年。


 いや、トレジャーハンターになる以前には他のキャリアを積んでいたかも知れないから、一概に心配する事もないかもしれない。

 そうだ、成り立ての者と比べれば一年もキャリアを積んでいるんだ、大丈夫だろう。


「そんな時にショウイチの噂を聞き入れて、もしかしたら。って訳で挨拶がてら実力を見極めようと思ってね。ま、多少期待外れした所はあるけどね」


 少なくとも、形から入っている自分よりは頼れるはずだ。


「あ、そう言えば。まだちゃんとパーティーに加わってくれるかどうか聞いてなかったわね。で、どうなの?」


 あらかた喋り終えて本来の目的を思い出したのか、フィルは改めて加わるのかどうか尋ねてくる。

 既に答えは決まっていたので、特に困る事もなく返事を返す。


「パーティーを組むのは初めてだけど、今後ともよろしくフィル」


「うん、よろしく!」


 再び握手をし、この瞬間にフィルと自分はパーティーを組む事となった。

 とは言え、時間の関係でパーティーとしての本格的な活動は明日以降となった為、今日は互いの親睦を深める為に使われる事となった。


「マスター! おかわり!」


 もっとも、親睦を深めると言っても食事会のような感じではあるのだが。


「あ、そうだ。折角アタシのパーティーに加わったから、今回の支払い、ショウイチよろしくね」


「な! なんでだよ」


「えぇ、か弱い女の子のアタシに支払わせるって言うの。 ショウイチには男らしさは欠片もないの!」


 本当にか弱い女性は肉の塊にフォークをぶっさしてかぶりつくような食べ方はしないと思うのだが。などと思いながら、本当に彼女とパーティーを組んでよかったのだろうかと疑問も生じ始めた。

 ただ、食事代を肩代わりしてほしいなら他の方法など幾らもである筈だし、自分の事が嫌いならパーティーを組もうとも思わないだろう。となると、これは彼女なりの接し方の一つのなのかもしれない。


「あ、マスター。これおかわり!」


 もっとも、出来ればもう少しお値段のリーズナブルな料理を頼んで欲しい。



 その後、決して安くはないパーティーの参加料。と言う名のお勘定を拝見して口が半開きになりつつも、お勘定を済ませるとお互いに明日に備えて解散する事となったのだが。


「あの、フィルさん」


「ん?」


「どうして部屋まで付いて来てるんですか」


 何故か帰る事無く彼女は自分の部屋へと付いて来て、そして彼女自身の部屋の如くベッドで寛ぎ始めている。

 困り果てている自分を余所に、彼女は怪しげな笑みを浮かべると質問に答え始めた。


「さっきは奢ってもらったし、そのお返しをしようと思ってね。……アタシのか・ら・だ、で」


 予想もしていなかった答えに、思わず声が上擦り自分でも顔が赤くなるのが分かる。


 生まれてこの方、と言っても前世ではあるが。そういった経験が無い訳でもなかった、と言ってももはや片手で収まる程度の回数でしかないのだが。

 しかし、このようなシチュエーションに限定すればそれは初めてであるし。そもそも、女性の方から積極的に言い寄られたのも初めてであるし。


「……ぷ、っはは。ねぇ、もしかして本気にしちゃった?」


 なんて頭の中で思考が目まぐるしく回っていると、フィルが突然笑い始めた。そして、本気と言う単語が発せられた瞬間、自分の顔がそれまで以上に赤くなるのを感じた。

 どうやら、まんまと彼女の口車にもてあそばれたようだ。


「ごめんごめん。本当は今後パーティーを組む上で互いの居場所を把握しておきたかったから来ただけなんだけど。まさかあそこまで反応するなんて思わなくてさ」


 多少悪びれる様子のない彼女の姿に、ため息が漏れると今後ももてあそばれるかもしれないと心配になってきた。


 結局もてあそぶだけもてあそんだら、自身が泊まっている宿の住所を書いたメモを渡して彼女は何事もなかったかのように帰っていった。

 肉体的にと言うよりも精神的に疲れた、その言葉に尽きた。まだであって半日程度しか経っていないのだが、彼女の凄さというものが身に染みてわかった気がする。

 と同時に、素性も知らず会ったこともない以前組んでいた人物の気苦労も、分かったような気がした。


「寝よ」


 兎に角疲れた、そしてそんな疲れを解消する一番の方法は睡眠をとる事だ。寝れば、もとい適度に寝れば疲れも取れる。

 装備を外し定位置となった場所に置くと、すぐさまベッドに寝転がる。

 抗う事無く身を任せ夢の世界へと旅立つ準備は完了だ。今後は色々と考える事もあるだろうが、それは起きてから考えればいい。

 今はただ、夢の世界へと旅立つ第一歩を踏み出すだけだ。

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