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味噌と薬草 その4

 その足で向かったのは相変わらず同業者や商人等で賑わっている道具屋通りの一角、馴染みの店だ。店内は相変わらず閑古鳥が鳴いている。


「いらっしゃい」


 相変わらず愛想のいいとは言い辛い店主に軽く挨拶を済ませながら、依頼をこなす際に必要であろう品々の購入を行っていく。

 今回の依頼をこなすべき場所は、地図によれば王都から馬車などで移動して少し日を費やす場所なので、消耗品などは少し多めに購入する。


「毎度どうも」


 こうしてこの店での必要な物の購入を終えると、次はレオーネの矢羽を購入すべくヘンライン鍛冶店へと足を運ぶ。

 そしてレオーネの矢羽を購入し店を後にすると、既にその頃には王都の空は一面暁に染まっていた。

 因みに、ヘンライン鍛冶店に足を運んだ際に丁度休憩の為店の奥から出てきていたヘンラインさんと鉢合わせし、そこで言わなくてもいいのにレオーネがシャガートさんの館での昼食会の事を話し、ヘンラインさんの雷が落ちた事をここに付け加えておく。


「あ~、なんだか一気に気分がブルーになったっす」


「レオーネが余計な事を漏らしたからだろ。自業自得といえばそれまでだ」


「うぅ、このお喋り口が憎いっす」


 暁に染まる王都内をボルスの酒場目指して移動する。

 まだ移動の際に必要な食料などを調達していないが、それは明日、出発前に購入するので本日の買い物はこれで終了だ。


「まぁでも、美味しいものでも食べて気分一新しよう、な」


「そ、そうっすね。マスターの作る料理で気分一新っす」


 ボルスの酒場へと戻ってきた自分達は、時間帯からして賑わいを見せつつある店内に足を踏み入れると、定位置となったカウンター席に座り店内の笑い声などを背に夕食会を始める。

 昼食会で出た料理と比べるとどうしても見劣りしてしまう感じは否めないが、それでもお手ごろで自分達の舌を満足されるには十分な料理の数々を堪能しながら、明日から始める依頼の成功を祈る。


「それじゃ、皆おやすみなさい」


「お休み!」


「おやすみなさいっす」


 こうして夕食会も無事に終わり、明日に備えて十分な睡眠をとるべく各々の部屋へと戻っていく。

 自分も部屋へと足を踏み入れると、ランプを付けて装備を外し始める。木箱に入る装備を納めると残りを定位置に置き、やっと寝るのに適した服装へと変わる。

 こうなれば後はベッドに倒れこむように寝転がり、夢の世界へと旅立つのみ。


 薄暗い天井から瞳を閉じて真っ暗な空間へと世界を変える。

 程なくして夢の世界への案内が訪れると、その案内に従って意識を夢の世界へと向かわせる。次に意識が戻ってくる頃には、すっかり外は明るくなっているだろう。



「ふぁ」


 翌朝、窓から光が差し込む程のすばらしい晴天の下、自分は夢の世界から生還を果たしベッドから上半身を起こす。

 軽くストレッチするとベッドから起き上がり、昨晩脱いだ装備の数々を身に付けていく。こうして支度を済ませると、部屋を後に一階へと降りて行く。

 一回に降りると、既にレナさんやレオーネ等、自分以外のパーティーメンバーが既に朝食に舌鼓を打っていた。レナさんは兎も角レオーネが早起きとは、珍しい。


「お、珍しく遅かったっすね」


 いや、どうやらレオーネが早起きしたのではなく、自分がいつもよりも遅く起きてきたようだ。たまにはこんな日もあるか。

 その後いつもより一足遅れの朝食を手早く食べ終えると、一足早く食べ終えていた皆と共にお勘定を済ませた後、いよいよ依頼に出発すべくボルスの酒場を後にする。


「皆さん、お気をつけて」


 マスターに見送られながらボルスの酒場を出た自分達は、先ずは食料等を買い込むべく朝市へと向かった。

 ピーク時よりも幾分少ないとは言えやはり人の往来が多い主要な通りを抜け朝市の開かれている場所へと足を運ぶと、そこには既に多くの人で賑わいを見せていた。

 献立に必要な野菜を買いに来た主婦の方々や、これからの移動に備えてだろう行商人や旅人、それに同業者等々、様々な装いをした多種多様な人々で活気に満ちている。


 それに更に勢いを加えるかのように、店頭からは威勢の良い声が自分達を含めたお客達を誘おうとする。

 また、店頭に並べられた色とりどりの野菜や果物、それに肉や魚等、ついつい目移りしてしまいそうなほどの商品の数々が無言の誘惑を放っている。


「さてと、それじゃ先ずは干し肉や堅焼きパンからだな」


 そんな何でも揃う勢いの朝市を回り、必要な食料等を買い込み冒険者鞄へと収めていく。

 と言っても、冒険者鞄にも容量の制限はあり、むやみやたらに入れられると言うわけでもない。なので、必要最低限から少し余裕を持たせた程度の量を買っていく。

 それに、冒険者鞄も何でも入ると言うわけではない。流石に樽や木箱と言った大きさのものは冒険者鞄には入らないので、買った所で荷車に載せなければならない。


 が、今回の目的地である場所は幸い道中に幾つかの町や村等経由出来る為、飲料水の確保には困らない。

 なので、購入する飲料水の量も冒険者鞄に入るほどの量で収めることが出来る。


 こうして朝市を回り必要な食料等の買い込みを終えると、これより依頼をこなすべく秘密の穴場を目指して移動を開始する。

 先ずは駅馬車を使って穴場近くの村付近にある町まで移動する。よって、ステーションへ赴き目指す町へと向かう駅馬車を探す。

 

「まもなく発車致します、ご乗車のお客様はお急ぎください」


 すると丁度良いタイミングで、目的の町へと向かう駅馬車が発車間近であった。

 そして無事に駅馬車に乗車出来た自分達は、発車の合図と共に一路穴場を目指して王都を出発した。

 駅馬車の適度な揺れに揺られながら、自分達は移動中の時間をつぶすべく雑談したりビスケットを食べたりとして楽しく過ごしていく。



 休憩を挟みつつ道中の村や町に立ち寄り夜を過ごし、再び休憩を挟みつつ目的地である町を目指す。

 そんな事を数度繰り返し、ようやく目的地である町へと到着したのは、既に暁の空が夜の闇へと変わろうとする頃であった。


「ご乗車、ありがとうございます」


 町のステーションへと降り立った自分達は、とりあえず本日の宿を取る為の宿屋を探す。


 夜道を歩いて村まで移動する事も考えたが、やはり夜道は何かと危険をはらんでいる為移動はなるべく日が出ている間の方がいいと判断し、本日は町で一夜を明かすことに。

 駅馬車の発着する町である為か、王都に比べると大きさや城壁等少し見劣りするが、それでも人口も多そうだし商店などの数もそこそこあるので宿屋は複数あるだろう。

 と、軽く町を回りながらも難なく一軒の宿屋を見つけると、迷うことなく足を運ぶ。


「いらっしゃい」


 特に取り立てて特徴の無いフロントには、必要最低限の待合用の木製の椅子や有名ブランドでは無いであろう調度品が設けられている。


「泊まり、一泊で」


「生憎と今は個室は全部満室で、大部屋しか空きがないけどそれでもいいかい」


「構いません」


 受け付け用のカウンターで宿泊の手続きを済ませると、手渡された鍵を頼りに本日お世話になる大部屋へと移動する。

 宿屋の外観からして二階建てこの宿屋、どうやら二階は全て個室のようで、自分達が使う大部屋は一階にあった。


 鍵を使い部屋に足を踏み入れると、そこは大部屋と言う名の如く個室とは異なり広々とした空間が広がっている。

 とは言え、やはり不満が無い訳ではない。

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