その名は、カルナザル焼き 後編
夕暮れ時。
お好みパーティーが始まります!
「アーちゃん、今度は何をやらかしたの?」
エリー、あんまりです。
それじゃいつも私がハチャメチャみたいじゃないですか!
プンスコ。
「ハインツさんが新しいソースを開発したのでそれに合う料理を作っただけなんだけど……」
「あ、新しい料理!うん、アーちゃん最高!」
ここのところエリーは食いしん坊になってませんかね?
食べ物に敏感です。太りますよ?
「ほほう。なかなか趣があって良いな。」
「あらあらまあまあ。楽しみね。」
「うふふ。アーちゃんのお料理はいつも驚きと美味しさで二度びっくりだから。」
皆さんいらっしゃいましたね。
「ねぇね!おいしーの、はやく!」
「こらこら、慌てるな。師父、すみません。」
イメルダさん親子もそろいましたね。
それではそろそろ始めますか。
「ハインツさん、お願いします。」
「かしこまりました!」
特注の魔導コンロで熱された巨大な鉄板。
皆さん興味津々です。
「これからお出しする料理は『お好み焼き』と言う料理です。マスターアウラさまが考案され、私がソースを開発しました。」
厨房の面々が慌ただしく準備をしています。
ご苦労さまです。
「まずは一見にしかず。」
ハインツさんの調理が始まります。
ボウルの中には混ぜられたタネ。
キャベートと言う葉野菜を刻んだもの、小麦粉をお魚のスープで伸ばした物を混ぜた生地。
とっても簡単です。
鉄板の上に獣油をたらしヘラで伸ばしていきます。
その上にタネを落とし丸く整えます。
その上に薄く切ったお肉を乗せてしばらく。
「…………」
皆さん無言で見てますね。
「今だ!」
ハインツさんは気合を入れて2本のヘラで掬うと綺麗に1回転した生地。
お肉の焼けるいい匂いと音。
焼くこと数分。
「ここだぁ!」
ハインツさんのヘラ返し炸裂です!
そしてソースをハケで塗ると……
ジュワーッ
んんんー!いい匂い~!!
皆さんも同じ反応です。
「完成です。領主さま、どうぞ。お熱いのでお気を付けて。」
「うむ!いただこう!」
皆さんが注目する中、ダカン父さまがお好み焼きを一口。
「う、うまい!うまいぞ!!」
はふはふと食べる父さま。
「ね、ねぇハインツ!私達の分もお願い!」
「承知いたしました。お前たち、行くぞ!」
「応!」
厨房の料理人たちフル回転でお好み焼きが焼かれていきます。
「うーん!おいしー!」
「アーちゃん、最高だわ!」
「あらあらまあまあ!」
「ねぇね、おいちーの!」
「これは。うむ、うまい。」
皆さんに好評でなによりです。
カルナザルガードのメンバーにも行き渡りそうですね。
「ところでアウラよ。お好み焼きだったか。これはひょっとして安価なものではないか?」
ダカン父さま気付かれましたか。
「はい。メインはキャベートを刻んだものです。小麦粉をスープで溶いていますの小麦の消費も抑えられます。」
「なるほど。アウラ、これを領内で流行らせて良いか?」
私は構いませんけどお好み焼きはこのソースが無いと成り立ちません。
「マスターアウラさま、私からもお願いします。」
「ハインツさん?いいのですか?ソースのレシピを広めても。」
「構いません。私の作ったソースが世に広がる。こんなに嬉しい事はありません。」
ならばせめてー
「ではこのソースは『ハインツソース』、お好み焼きは『カルナザル焼き』として広めましょう。」
「おお、それは良いな。ハインツよ、後ほど別に褒賞を出そう。」
「領主さま、ありがとうございます。」
かくしてハインツさんの勿体ないソースに出会った私のお好み焼き食べたい!から始まったパーティーは満点の笑顔で締めくくられたのでした。
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「なあ、食ったか?」
「ああ、美味かったな。」
「あれで銅貨5枚ってんだからな、安いよ。」
「だな、腹もふくれるし酒にも合う。」
「お?わかってるな、お前。」
カルナザルの街中、あちらこちらからソースの焦げるいい匂いが漂う。
貧しい者でも安価で腹いっぱいになるカルナザル焼きが領内に広まるのにそんな時間はかからなかった。
ハインツはその後、旧知の商人にソースのレシピを渡し製造を任せた。
その利益の一部を受け取る事としたのだがハインツの懐には1銭も入ってはいない。
後のカルナザルに建つ、孤児が料理を学ぶ舎、『アウラ料理学校』の設立費用となったことを知る者はー
少ない。
次話から新章です。
ライオが再び大暴れ……するかもしれません(笑)
ありがとうございました。




