イメルダ、決心する
ソフィー姉さまとヒーちゃんはお勉強に。
エリーとダカン父さまは私に目配せすると退室しました。
『マリア母さまに任せていれば大丈夫!』
と、言われたような気がしました。
今『家族の間』にはマリア母さま、イメルダさんと私の3人です。
「イメルダさん、でよろしかったかしら?」
「うむ。いや、はい…」
穏やかで、そして想いのこもったマリア母さまの声。
優しく。
私の大好きな声。
マリア母さまはイメルダさんに話しかけます。
「ヒーちゃん、ヒルダちゃんのこれまでの事については知ってらっしゃるの?」
「…はい、概ねは。」
「そう。」
マリア母さまはイメルダさんの手をとります。
「辛かったでしょう。ほんのひと時とはいえ、愛する我が子と離ればなれになったのだから。」
ぐっ。とイメルダさんが俯きます。
「……とても良くしてくださっていたと理解しています。それなのに私は…」
キャロルさんの事ですね。
「うふふ。バーンズ、今はキャロルだったかしら?あの人の事なら心配いらないわ。恐らくだけど傷は肉に達していないわ。」
え?マリア母さま、キャロルさんとお知り合いなのですか?
「彼?彼女?が現役の冒険者だった頃にも似た様なケガをしたのよ。後衛の仲間を護るために盾になってね、為すがまま切り裂かれたのだけど刃が通ったのは皮膚だけ。派手に出血して朦朧としてたけど。ほら、あの顔でしょ?最後は眼力でモンスターを追っ払ったの。」
……確かに包帯まみれのキャロルさんは怖かったです。
「た、確かに。私もあの者の形相には、その…」
「でしょ?うふふ。」
「ははは。」
共通の話題『キャロルさん』で掴みはオーケーですね。キャロルさん、ありがとう!
「落ち着いたら会うといいわ。ヒーちゃんにもとっても良くしてくれていた様だから。」
「…会ってくれるだろうか?」
「大丈夫じゃないかしら?多分もう傷も癒えてるはずよ。」
キャロルさん、規格外です!
「…わかっ……わかりました。謝罪と感謝を伝えます。」
それはそうとイメルダさん、口調が変わってません?
武人然とした口調から丁寧になってます。
これもマリア母さま効果なのでしょう!
「それでイメルダさん?」
「はい。」
「決心は着いたかしら。」
「……私は」
イメルダさんと私の目が合います。
今回はマリア母さまにお任せなので私は一言も発言しません。
イメルダさんから問われない限り。
「私は。そこのアウラ殿に負けた。圧倒的な技と力で。」
はい。少しやり過ぎたと思ってます!反省。
「しかしアウラ殿は…その力は護るために振るう力だと言った。そして私を中途半端だと……」
マリア母さまは黙ってイメルダさんの独白を聞いています。
いつもの優しい眼差しで。
「アウラ殿、奥方様。私も…護る者になれるだろうか?」
イメルダさんは初めて会った時の様な手負いの獣の様な雰囲気はありません。
今は何か、彼女の中で新しい答えを漠然と見出している様に不安な迷子みたい。
「そうね。あなたが望むならなれるんじゃない?」
「私が望むなら…」
「でもね。アーちゃんの言う『護る力』は諸刃の剣よ。あなたに御せる?」
「それは…」
ふう。そろそろお助けしましょうか。
「マリア母さま、大丈夫ですよ。」
「?アーちゃん、どうしてそう言えるのかしら?」
「だってヒーちゃんのお母さんですから。」
「あら。それもそうね。」
「え?あ、ええ?」
イメルダさんウチはこんな感じですよ。
慣れてくださいね!
「では!イメルダさん。私の弟子となり、アウラ流活殺術を収めますか?そしてヒーちゃんと幸せになりますか?」
ヒルダさんは一呼吸置くと迷い無く私に告げました。
「よろしくお願いします。師父。」
この日、私に3人目の弟子が出来ました。(ヒーちゃんの二番弟子は決定事項です!)




