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はぐれエルフちゃんと剣姫さん~生活魔法も使いよう~  作者: トルク
五章 結成!カルナザルガード
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親子、幸せへの一歩

お城に戻った私たちは早速イメルダさんの治療にあたります。


「アーちゃん、拘束は解く?」

「はい。もし暴れたらまた無力化しますから。」

(えっ!ダメよ!死んじゃうから!!)

大袈裟ですよ、精霊さん。


「じゃ解くわね。」

エリーは皮の紐を解くと治癒魔法を施します。


「ん‥‥ちょっと時間がかかりそう。足の付け根が‥‥粉々みたい。」

エリーがジト目で見ていますが気にしない事にします。


「んみゅ‥‥ねぇね、おあよー‥‥」

ヒーちゃんが目覚めましたね。


「ヒーちゃんおはよう。ねぇ、ヒーちゃん。この人知ってますか?」

私はヒーちゃんにベッドに横たわるイメルダさんの前に連れて行きます。


「おかーしゃん‥‥おかーしゃーん!!」

ヒーちゃんがイメルダさんに飛びつきそうになって慌てて阻止します。


「ヒーちゃん落ち着いて。お母さんは少しケガをしてるみたいなの。今エリーが治してくれるからちょっと待とうね?」

少しのケガではありませんが。


「うん。分かった‥‥」

ヒーちゃんは心配そうにイメルダさんの傍に立っています。

うう。ケガさせた本人としてはちょっと心が痛みます。


「足の方はこれで良し。次は肩ね。」

エリーの手に淡い光が集まり、イメルダさんのケガを癒していきます。


「うう‥‥」

「おかーしゃん!」

イメルダさん、意識が戻った様です。


「ここ‥‥は?」

「おかーしゃん、おかーしゃん‥‥」

ああ!ヒーちゃん号泣です。

イメルダさんはヒーちゃんの頭をそっと撫でています。

私とか対峙した時とはまるで別人な表情です。

‥‥母親なのですね。


「ここはカルナザルのギュスターヴ家の城よ。まだ治療中だからじっとしてなさい。」

エリーは治療を続けます。


「‥‥かたじけない。」

イメルダさんもヒーちゃんを片腕で抱き寄せ安心した表情で治療を受けています。


これなら私のお話しも聞いてくれるでしょう。


「イメルダさん、私が勝ちました。」

「そうだな。」


「お話しを聞いてくれますか?」

「約束だからな。」


「あなたのやり方では誰も幸せにはなれません。私は義姉としてヒーちゃんが不幸になる事を許容できません。」

「‥‥何故、不幸になると言い切れる?」


「あなたと同じ業界でヒーちゃんは生活できませんよね?それにイメルダさんが仕事中、ヒーちゃんはどうされるのですか?」

「‥‥」


「万が一、あなたが命を落とした場合、またヒーちゃんはひとりぼっちになるのですよ?」

「ならばどうしろと言うのだ!」


イメルダさんも薄々は気づいていたのでしょう。

どうしょうもない想いが伝わります。


「ですので。私がイメルダさんを雇います。」

「なんだと!」

「聞いてないよ、アーちゃん!」

イメルダさんとエリーからダブルで突っ込まれましたね。


「イメルダさんは私に弟子入りして貰います。これは絶対条件です。」

イメルダさんは真剣な表情。


「あ、あの苛烈なる技を私に授けると言うのか?」


「イメルダさん、あなたは攻撃的過ぎます。そして交渉事にも暴力で解決する短慮も欠点です。それはあなたの強さが中途半端だからなのですよ。」

「わ、私が中途半端?」


「ええ。おそらくですがそこであなたを癒しているエリーにも敵わないでしょう。彼女は私の一番弟子ですから。」

エリー、ドヤ顔はいけません。


「私が‥‥敵わない?」

イメルダさんはショックを受けている様ですね。

だけど事実です、受け止めて下さい。


「私の流派は守る為の力です。防御特化とは違いますよ?大切な誰かを、大切な場所を『護る』力です。」

「守る‥‥大切な誰か‥‥」


「ちなみにイメルダさんは三番弟子ですよ?2番弟子はヒーちゃんの予定ですから。」

「な、なんだと!ヒルダは戦えないだろう!」


「アウラ流活殺術は闘法だけではありません。歩法、魔力操作、練気など。それに合成魔法もありますしね。そうですね、魔闘術って所ですかね。」

「なんだそれは?知らない、聞いた事も無い!」


「それはそうですよ。だって開祖は私で使い手はまだ2人だけですから。弟子候補は50人居ますけど。」

ゴクリ。

イメルダさんが生唾を飲む音が聞こえます。


「どうしますか?」

「少し‥‥考えさせて欲しい。」


「‥‥イメルダさん。明日にでもダカン父さま、カルナザルの領主さまに会って下さい。」

「領主に!」


「ええ。エリーのお父さまです。きっと何かを感じ、進むべき道筋が見えるでしょう。」

治療は終わったみたいですね。


「そうね。父上ならあなたとヒーちゃんの力になってくれるわ。」


「‥‥何故?何故お前たちはここまで私に世話を焼くのだ?」


「「あたながヒーちゃんのお母さんだから。」」


思いがけず声が揃った私とエリーはお互いを見てクスリと笑うのでした。


ヒーちゃんは‥‥泣き疲れてまた眠っています。

今度はお母さんの傍らで。

ボロボロのブランケットを抱きしめて眠るヒーちゃんはまさに天使なのでした。

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