アウラ、葛藤する②
今日はヒーちゃんのアルバイトの日です。
と言ってもただのお手伝いなんですけど。
私とエリー、ソフィー姉さまが忙しい時は独り寂しくさせてしまうのでそんな時はキャロルさんにお願いしています。
「それじゃキャロルさん、よろしくお願いします。」
「了解よぉ。ヒーちゃん、今日も頑張ろー!」
「あい!いっぱいチラシくばりましゅ!」
既にメイドさんの服に着替えたヒーちゃんはそれはそれはかわいいのでした。
「ヒーちゃん、キャロルさんの言う事ちゃんと聞いてね。それから知らない人には絶対について行っちゃダメですからね?」
「ねぇね!わかった!」
良いお返事です。
ナデナデ。
いけません!これではいつまでもここから離れられませんね。
グッと我慢して私はお城に戻ることにします。
「ねぇね-、ばいばーい!」
私はヒーちゃんに手を振って『乙女の嗜』を後にしました。
お城に戻ると既に騎士さんたちは集合していました。
今日の私とエリーは昨日ハウエルさんにもらった装備を身につけています。
なんと!
騎士さんたちも同じ装備です。
騎士さんたちの表情は何だかワクワクしているみたい。
お揃いの新装備が嬉しいのかな。
とりあえずこれで街の人たちに他の騎士さんが声をかけられる数が減ると思われます。
「皆さんおはようございます。今日のお仕事ですが~」
今日の作業を騎士さんに説明します。
昨日収穫した赤芋を天日と生活魔法『ドライ』で乾かし、ボロ切れに包んで保管する作業です。
騎士さんたちは皆生活魔法が使えますから問題なしです。
ここはエリーに監督をお願いして私はおやつの支度とまいりましょう。
頑張ってくれている騎士さんにこの赤芋の美味しさを教えてあげなくてはいけません。
ひとり一本、50本あればいいかな?
~作業開始から暫くして~
「ふう。俺、こんなに土に触ったの始めてだぜ。」
「ああ、俺もだ。だがやると結構面白いもんだな。」
「そうか?まぁ農民の苦労が体験できたのは良い経験だな。」
「それにしても‥‥あと20日もこんな事すんのか?」
「仕方ないだろう。マスター・アウラの指示だからな。」
「『ドライ』!よし。こんなもんか。」
「なあ、お前らさ。面接の最後、どうだった?」
「‥‥」
「‥‥」
「だよなぁ。」
「‥‥俺はなんとか持ちこたえた‥‥」
「「「おお!」」」
騎士さんたちはおしゃべりしながらも作業してくれています。
エリーも特に指摘していません。
締め付けてばかりだと息苦しいですからね。
「みなさーん!お疲れさまです!おやつですよー!」
今日も簡単、ふかし芋です。
シンプルにして最高なのですよ!
「アーちゃん、ふかし芋?」
「はい。皆さんもどうぞ!」
真っ先にエリーが駆け寄ってきました。
よっぽど気に入ったのですね。
「マスター・アウラさま、これは?」
騎士さんからの質問です。
「これは皆さんに収穫してもらった赤芋です。美味しいですよ?」
怪訝な騎士さん。
しかしうちの剣姫さんは
「おいしー!あまーい!」
パクパクいってます。
それを見た騎士さんも恐る恐る一口。
「美味い!これがあの芋なのか?」
「何?そんなにか!」
「俺にもくれ!」
「おお!甘い。菓子みたいだ。」
「お?なんだか魔力が回復してきた?」
皮を剥いて食べる人、豪快に丸ごと食べる人。
皆さん夢中で食べていますね。
「これが栽培出来れば皆さんの食卓にも気軽に上ってきますよ。」
「本当ですか!しかし高価なのでは?」
「いえ、皆さんご存じの通り野生のお芋さんですからね。それに手のかからないお芋さんですから。」
サツマイモは連作障害も少なく、病気に強い。
それに養分も少なくて済みますから痩せた土地でも栽培できます。
この赤芋は森の中で見つけた品種ですからきっと種芋としてはかなり優秀なのではないかと思っています。
「しかし美味いな。」
「ああ。香りも良い。」
「焼いても美味そうだぞ?」
「おお!それは美味そうだ。」
ふっふっふ。気付かれましたか。
焼き芋の存在に。
じっくり焼いたお芋さんは蜜が出るほどに甘いですからね。
そのうち試してみましょう。
「さて、残りのお仕事を頑張りましょう!」
『おおお!』
ふかし芋で鋭気を養ってもうひと頑張り。
午前中には乾かし終わりたいですね。
そろそろお昼休みになる頃。
事件は起きました。
「アーちゃん!エリー!」
ソフィー姉さま、どうしたのですか?
こんな表情のソフィー姉さまは始めてみます。
「ヒーちゃんが!ヒーちゃんが攫われたのよ!!」
な、なんですとー!




