アウラ、葛藤する①
翌日です。
私はダカン父さまに赤芋の事、そして来春について提案をしました。
ダカン父さまは二つ返事で了承、領の事業として計画を練ってくれるとお約束してくれました。
そして今。
西の森には48人の騎士さんとエリーで赤芋狩りに来ています。
ヒーちゃんはお勉強なのでソフィー姉さまとお留守番。
樽に詰めた赤芋、荷車5台分を収穫しました。
騎士さんたちは土まみれになっても文句ひとつ言わずに頑張ってくれました。
しかし。
赤芋掘り中に数人の騎士さんに相談を受けたのですが‥‥
相談① 近衛騎士 コンラッドの場合
孤児たちとどう接すればいいか分かりません。
特に獣人族の子供です。
「そうですねぇ。あれこれ世話を焼くんじゃなくて見守ってあげるだけでも良いのではないですか?ケガしてないか、病気になっていないか。少しずつ距離を縮めてみては?」
相談② 騎士 ハーディナンの場合
同僚の騎士から苦情を受けました。
街の住人が雑用を押し付けてくると。
「それについては報告が上がって来ています。ですので近日中には何とかするつもりです。」
と、言う具合にちょこちょこ問題も発生しています。
獣人族の孤児たちについてはやはり時間をかけて接するしかないでしょう。
もうじき冬がやって来ます。
それまでになんとか、冬を越すまで孤児院に入ってくれるといいんですけど。
ハーディナンさんの苦情については現在ハウエルさんに依頼中です。
明日にでも試作品が届くとの事でした。
街に帰る頃には陽も傾き始めていました。
昼間の時間がだんだんと短くなってきています。
明日からは今日収穫した赤芋の保存作業をしましょう。
それにしても少し疲れました。
こう見えて私もエリーも基礎体力は人並みなのです。
騎士さんたちのペースで歩いているとそれなりに体力を使うのです。
後半は荷車に乗せてもらいましたけど。
早く帰ってヒーちゃんとエリーとお風呂に入りたいです。
お城に着いて荷車は練兵場に集めて今日は解散です。
明日のスケジュールを手短に伝えると皆さん帰路につきました。
3人でお風呂に入り、命の洗濯をした私。
夕飯も済んでまったりしていると
「アウラ殿、出来ましたぞ!」
ハウエルさんです。
「こちらがアウラ殿用、こっちがエリーのだ。」
渡されたのは装備一式。
青地に白いラインの入ったチュニックとズボン。
銀色の胸当てに手甲。
そして黒いブーツ。
「ほら、試着してみて下さい!」
私とエリーはさっそく着替えます。
「どうですか?」
私はみんなの前でくるりと1回転。
「ねぇね、かっこいー!」
「アーちゃん凛々しいわよ。」
「あらあらまあまあ。」
「うむ、よく似合っている。」
「‥‥アーちゃん、格好いい。」
「エリーも‥‥すてき。」
エリー、完璧です。
見とれてしまいました。
エリーも少し惚けています。かわいい。
「2人ともお似合いですぞ。では正式に手配しますがよろしいでしょうか?」
「ハウエル、問題ない。進めてくれ。」
ハウエルさんには満足げに立ち去っていきました。
「ねぇね、わたちのは?」
「あはは。ヒーちゃんのはまた今度ね。」
「むう。ぜったいでしゅよ?」
あらら?ヒーちゃんの言い回し、誰かに似てるなぁ。
「うふふ。ヒーちゃん、アーちゃんみたい。」
そっか、私に似てたのかぁ。
ちょっと嬉しいかな。
「これで本格的にカルナザルガードの発足に近づいたな。」
「カルナザルガード?」
ダカン父さま、なんですそれ?
「ああ、お前たちに選抜してもらった者がアウラ流活殺術を収めた暁に組織する精鋭の事だ。」
「カルナザルガード‥‥格好いい‥‥」
え、エリー?
そうだ、エリーってたまにこんな感じになるんだった。
「ねぇね!わたちも、わたちも!」
はいはい。
ハウエルさんにお願いしましょうね。
いつもの楽しい団欒でした。
この時、誰が予測できたでしょうか。
ヒーちゃんが居なくなるなんて。




