アウラ、お礼をする③
今回はちょっと長いです(笑)
商店街ー
ヒルダちゃんを真ん中に3人で手を繋いで道行きます。
目指すは『雑貨屋 乙女の嗜み』。
キャロルさんのお店です。
「おっ!ちびっこ師匠。今日は見てってくんなよ。珍しい果実が入ったんだ、安くしとくからさぁ。」
野菜や果物のお店の前でおじさんに引き止められます。
「珍しい果実ですか?」
どれどれ?
濃い黄色の長細い果実。
とってもいい香りです!
もしかして地球にも似たような果実があったかも?
私は『ライブラリー』で検索します。
見た目は『マンゴー』って果物とそっくりです。
「おじさん、この果実はなんて名前なんですか?」
「おおよ。こいつはマングァーっつんだ。味見してみるか?」
おお!味見が出来るんですか!
是非いただきましょう。
おじさんはナイフをマングァーに縦に入れ、クルリと回転させます。
「よっと。」
果実をねじると真ん中に大きな種。
「でだ。こいつをこう‥‥」
種を取った果実に格子状にナイフを入れ、裏表ひっくり返します。
「はいよ!食ってくれ!姫さまと黒ちびも!」
ムム!私のヒルダちゃんを黒ちび呼ばわりですか?
‥‥ヒルダちゃんは気にしてないみたいだけど!
今日のところはこの果実に免じて許しましょう。
次はありませんからね!
ともかく試食です。
「いただきます!」
「‥‥アーちゃん、本当に食べるの?」
「ねぇね‥‥」
おや?2人とも反応がイマイチですね?
「んー。まあこの辺りじゃ南方の蛮族の食い物だって言われてっからなぁ。旨いんだがなぁ。」
美味しい物に罪はありません。
では、実食!
「あむ。じゅるっ。」
おお!美味しい!
甘さと酸味が絶妙です!しかもなんですか、この舌触り!
まるでプディングの様です!
「凄く美味しいです!」
「だろ?」
おじさんは得意満面です。
「アーちゃん、本当に美味しいの?」
「ねぇね、わたちも、わたちも!」
2人が興味津々です!
「エリー、食感はまるでプディングですよ!」
「ええ!」
「ねぇね、はやくぅ。」
2人がマングァーを口にします。
「こ、これは!」
「おいちー!」
これは買いですね!
「おじさん、このマングァーってどのくらいありますか?」
「あん?ふざけて仕入れたからそんなにゃねえよ。樽に一杯くらいだな。」
「全部下さい!」
「な?!ぜ、全部?」
「はい。当然安くしてくれるんでしょ?」
ふざけて仕入れたから丸々損する予定なんでしょ?
「ちびっこ師匠にゃ叶わねぇな。よし、銀貨5枚でどうよ?」
「買った!」
このマングァーを『ライブラリー』で調べた時にヒットしたワードに『マンゴープリン』がありました。
作り方も記録されています。
キャロルさんへのお礼は『マンゴープリン』にしましょう。
そうと決まれば大至急、お城に戻ってハインツさんにお手伝い願わねば!
「エリー、ヒルダちゃん。一旦お城に戻りましょう。」
「キャロルさんのお店には行かないの?」
「このマングァーでお菓子を作ってキャロルさんにプレゼントしませんか?」
「アーちゃんのお菓子!いいわ!凄くいいアイデアよ!」
「おかしー!」
よし、満場一致ですね。
ひょいっとエリーが樽を担ぎます。
おじさんや周りの人たちは驚いていますが私たちには通常運転です。
「エリーおねーしゃん、しゅごい!」
「んふふ。凄いでしょ?アーちゃんも出来るんだよ!」
「ねぇねもしゅごい-!」
「さ、戻りましょう。」
私たちはまた手を繋いでお城へと戻るのでした。
~城の厨房~
「それでマスター・アウラさま。今度はどんな菓子を?」
ハインツさんお目々がキラキラです。
「はい!今日はマングァープリンを作ります!」
「了解です!ご指示願います!」
それではさっそくまいりましょう!
まずは『ゼラチン』から。
膠は武具屋さんにあるそうですが接着剤の要素が強いため食用まで精製されていません。
なので自作します!
ゼラチンは動物さんの皮や爪、コラーゲンが主成分でした。
今日は豚さんの皮を使用します。
「ハインツさん、この豚さんの皮を水でじっくり煮てください。」
「皮ですか?」
「はい!豚さんの皮を煮るとトロトロプルプルが出来ますよね?あれが必要なんです。」
「わかりました!」
ゼラチンはハインツさんにお任せしましょう。
「では私は『生クリーム』を作ります。」
「アーちゃん、生クリームって?」
「ミルクからある程度水分を分離‥‥って見てたらわかりますよ。」
私はミルクの入った陶器の瓶の中へ風の生活魔法『ウインド』を螺旋状に展開します。
高速で攪拌する事で遠心分離する仕組みです。
「アーちゃん見ててもわかんないよ~」
陶器の中は見えないもんね。
「ゴメンね、ほら。もう出来ましたよ。」
私は瓶の上澄みをそっと別容器に移します。
「薄いミルクだね‥‥あ!そう言う事なのね!」
上澄みが少し濃くなった所で移すのを止め、ボウルに一気に開けます。
「わあ。トロッとしてるね。」
「これが生クリームですよ。」
「アウラさま、皮は仕込みました。次は何を‥‥って何ですか、それ?」
私はハインツさんに生クリームの作り方と使用方法を説明します。
「なるほど。乳清と脂肪乳に分離‥ふむふむ。」
ハインツさんは勉強熱心です。
そのうちオリジナルで凄いお菓子を作ってくれそう!
「ここからはエリーとヒルダちゃんにもお手伝いを頼みますよ。」
「はい!マングァーの下拵えね!」
「おてちゅだいしゅるー!」
エリーにはナイフを使って半割と種取り、ヒルダちゃんにはスプーンで果肉を刮いでもらいます。
「しゅぷーん!」
シャキーン!とスプーンを掲げるヒルダちゃん。
おお!今朝に引き続きやる気のヒルダちゃんです。
集めた果肉を裏漉しします。
これだけでも美味しそう!
「アウラさま、煮こごりが出来ました。」
「どれどれ?」
いい感じです。
出来た煮こごりを裏漉しします。
そして
「『ヒート』!アンド『ドライ』!」
出来た煮こごりを一気に脱水・乾燥です。
「相変わらず凄い魔法ですね‥‥」
キニシナーイ、キニシナーイ。
「ハインツさん、このカチコチになった物をおろし金で削って粉にして下さい。」
「了解しました!」
さあ、準備完了です。
ここから一気に行きますよ!
鍋に生クリームを入れ火に掛けます。
お砂糖を溶かし入れ焦げない様に混ぜます。
弱火でかき混ぜながら。
よく混ざったら一旦火から下ろしてあら熱をとります。
「『クール』!」
一肌くらいになったかな?
ここに裏漉しした果肉を投入、一気に混ぜます!
ここで手を抜くと生クリームとマングァーが分離してしまうのです。
力仕事はハインツさんにお任せ。
私は別の鍋にお湯を沸かし、ハインツさんが削ってくれたゼラチンを溶かして行きます。
仕上げです。
よく混ざった生クリームとマングァーにお湯で溶いたゼラチンを投入、ハインツさんに混ぜてもらいます。
程よく混ざったらティーカップに注ぎます。
「『ミスト』!アンド『クール』!」
ティーカップに入れた液を生活魔法で冷やします。
完成です!
「ねぇね、おあじみ!」
「うんうん、お味見は必要よ!」
エリーとヒルダちゃんは待ちきれない感じです。
ハインツさんもスプーンを持って待機中。
皆さん仕方ないですねぇ。
「それでは試食しましょう!」
「こないだのプディングみたいにプルプル!」
「ぷでぃんぐ?」
「ヒルダちゃんには今度ね?ね?ハインツさん。」
「はい。ヒルダお嬢さまにも是非食べていただきたいです。ですが今は!」
「どうぞ、召し上がれ!」
あむ!
ぱく!
はむ!
「お、美味しい!」
「きゃー!おいちー!」
「凄い!アウラさま、これ凄いですよ!宮廷料理でもこんな菓子は出ませんよ!」
大成功の様です。
それでは私も。
あむ。おいちー!
キャロルさん、喜んでくれるといいな。




