ヒルダ、妹になる①
眠っているヒルダちゃんを連れてお城に帰りました。
ひとまず私のお部屋に寝かます。
「ふう。これで一安心ね、アーちゃん。」
「はい!でも皆さんにきちんと報告しないと‥‥」
「そうね‥‥でも大丈夫だと思うよ?」
「でもヒルダちゃんはダークエルフです。本当に大丈夫でしょうか‥‥」
ダークエルフは私たちエルフと違っていわゆる戦闘民族です。
世界各国に散らばり、傭兵になったり冒険者になったり。
戦闘力が高い割に学がなく、分け前で騙されたり危険な任務に薄給で就かされたりと冷遇されているとも聞きます。
お勉強する時間があれば戦闘訓練する。
生粋の戦闘民族なので心ない人たちに利用されたり意味なく嫌われたり‥‥
「そうね。でも大丈夫だよ。」
エリーは自信たっぷりで答えます。
「ヒルダちゃんはヒルダちゃんだもの。」
「そうですね!ヒルダちゃんはヒルダちゃんです!」
うん、なんか私も大丈夫な気になりました!
「それじゃ暫くの間、アーちゃんがお世話するって事でいいのかな?」
「はい!それでは皆さんにお話しに行きましょう。」
私とエリーはそっと部屋を出ました。
~家族の間~
「ふむ、なるほど。それは難儀だったな、2人とも。」
「あらあらまあまあ。それでヒルダちゃんは?」
「ねえエリー!その子って可愛いの?」
‥‥エリーの予想通りでした。
「父さま、母さま。ヒルダちゃんのケガはすぐ良くなるはずです。ソフィー姉さま、とっても可愛いのですよ!」
父さまと母さまはホッと一息。
ソフィー姉さまは目がキラキラです!
「ねえねえ!どんな感じなの?」
「えっと、ヒルダちゃんはダークエルフの女の子で5歳です。髪は私と同じプラチナで背は‥‥同じくらいです‥‥」
あれ?そう言えば私と同じくらいですね?
いやいや!
私の方がちょっぴり高いですよ!
ちょっぴりだけど‥‥
だってお姉ちゃんなんだもんね。
「どうしたの?アーちゃん?」
「訂正します!私の方がちょっぴり背は高いです!」
「えっと‥‥はい。」
なんです?ソフィー姉さま、その間は!
「もう!ソフィー姉さまのいじめっ子!」
「ウフフ。ごめんなさいアーちゃん、ね?」
「むぅ。今回だけですよ?」
明るい笑顔と笑い声が家族の間に広がります。
するとそこへ、
「あのー。失礼します。」
おや?メイドさんです。
どうしたのでしょう?
「あの、こちらのお嬢さまが‥‥」
メイドさんが言い終わる前に
「おねーしゃん‥‥おねーしゃん、アウラおねーしゃん!」
ヒルダちゃんです!
必死に駆け寄って私に抱きつきます。
「ヒルダちゃん!どうしたの?どこか痛いの?」
私はとっても心配です。
やはりひとりにするべきではなかったのかな?
「ちがうの‥‥めがしゃめたらおねーしゃんがいなくって‥‥また‥‥わたち、しゅてられたのかと思って!うわーん!」
号泣です!ヒルダちゃん号泣!!
どうしたらいいの?
ああ!
と、私が困っていると
「ヒルダちゃん、ごめんね。アウラお姉ちゃんはどこにもいかないわ。ううん。みんな一緒よ。」
「どこにもいかない?みんな‥‥いっしょ?」
「そう。ずーっと一緒。」
まるで女神さまの様な微笑みでヒルダちゃんに語りかけたのはソフィー姉さまでした。
そっとヒルダちゃんの頬を撫で、涙を拭います。
「えっと。おねーしゃんはだあれ?」
「私はソフィー。そうね、ソフィーお姉ちゃんって呼んで?」
「‥‥ソフィーおねーしゃん。」
「ウフフ。ヒルダちゃん。」
なんなんでしょう。
お花畑です!
お花畑が見えます!
でもヒルダちゃんが泣き止んでくれてよかったぁ。
くー。きゅるきゅる。
「あ。」
「ウフフ。お腹の虫さんはとっても元気みたいね。」
「あい!」
にぱっと笑うヒルダちゃん。
はうぅ。可愛いよぉ。
「よし。それでは食事にしようか。」
「あらあらまあまあ。そうしましょう。」
でもその前に‥‥
「ダカン父さま、マリア母さま。私とヒルダちゃんはちょっとお風呂に行ってきます!」
ヒルダちゃんはとっても可愛いのだけど今はとっても汚れていて服もボロボロです。
「エリー、ヒルダちゃんの体の痣も看て欲しいの。着いてきてくれますか?」
「分かったわ。服はアーちゃんのでいいわね?」
「はい。」
「ならば私たちも少し待っていよう。食事は大勢で食した方が美味いからな。」
「あらあらまあまあ。」
本当に優しいご家族です。
自分の事の様に誇らしいです!
‥‥一部王都のお馬鹿さんは除きますが。
「ヒルダちゃん、お風呂に行きますよ!」
「おふろ?」
もしかしてお風呂に入った事がない?
「エリー‥‥サポートよろしくお願いします。」
「了解しました。」
どうやらもう1戦始まりそうです。




