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はぐれエルフちゃんと剣姫さん~生活魔法も使いよう~  作者: トルク
三章 ギュスターヴ家の人々
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ダカン、告げる

家族の間に急ぎます。

でもゆっくり、慎重に。

せっかくのお菓子を落っことしたくないからね。


お部屋の前に到着~!

あれ?騎士さんがあわあわしてますけど‥‥


「どうしたんですか?」

私は騎士さんに尋ねます。


「あっ!マスター・アウラさま!大変なんです!」

「先ほどカイルさまが部屋に入ったのですが‥‥」


まさか!

カイル某、エリーに酷いことを‥‥

もう許しません!

今度はおしっこ漏らすくらいじゃ済みませんよ?


『ほらほらどうした?この口だけ愚弟が!』


ガシャン!

パリン!


『ひー!あ、姉上!や、やめて、やめてー!』

『あーはっはっはっは!踊れ踊れ!!』

『ソフィー姉さま!落ち着いてください!』

『ソフィーリア!』


‥‥何がおきてるの?


私は騎士さんにドアを開けてもらいます。

両手はふさがっていますから。


そして私の目に飛び込んできた光景はー


鞭を振り回しカイル某を追い立てるソフィー姉さまでした!

あ!あの鞭。

私が護身用にとソフィー姉さまに贈ったブルウィップじゃないですか!

芯にかつら用の女性の髪の毛を編んで入れてますから見た目以上の破壊力なのですよ!


「おらおら!もういっそここで死んじまうかぁ?」

「い、痛!姉上!ゆ、ゆるして‥‥」

カイル某、ボロボロです。

立派な服もほとんど破れてますね。


「あらあらまあまあ、アーちゃん。」

マリア母さま、何故に冷静?


「え?アーちゃん!!」

髪を振り乱し夜叉のようだったソフィー姉さまが私に気づきます。


「アーちゃん、大丈夫?酷いことされてない?ケガは?それから‥‥」

ブルウィップを投げすてて私に駆け寄る姉さま。

それで理解できました。


ソフィー姉さまは私とエリーのために怒ってくれたのだと。


「大丈夫ですよ、姉さま。」

ニッコリ微笑むとお返しの笑顔。

いつものソフィー姉さまです。


「そんなことより、お菓子できましたよ!」

私はテーブルにトレーを乗せます。


「あらあらまあまあ。初めて見るお菓子ね。」

「ほう。アウラ、これは?」

「エリーのために心を込めてつくりました!」


エリー、元気出してね?


「私の?」

「はい!その名も『プディング・ショコラーデ』です。」

みなさんカップの中を覗き込んでいますね。


「アーちゃん、これは飲み物なの?」

「ソフィー姉さま、ほら。」

私はカップをひとつ持ち上げて軽く揺すってみます。


「ええ?プルプルしてるわ!」

「ふっふっふ。さあ、エリー。食べてみて?」

「う、うん。」


エリーはスプーンでひとすくい、可愛いお口に運びます。


「~!」

「え、エリー、どうなの?ねえ、美味しいの?!」

ゴクリ。

みなさんの咽が鳴ります。


「す、凄く美味しい!こんなの初めてよアーちゃん!ありがとう!!」

えへへ。喜んでくれて何よりです。

ちょっと照れますね。


「わ、私もいいか?」

「ね、アーちゃんいいかな?」

「あらあらまあまあ。」

待ちきれないようですね。


「みなさん召し上がれ!」

「「「頂きます!」」」


ダカン父さまは目が全開です。

マリア母さまはとってもニコニコ。

ソフィー姉さまは


「アーちゃん、とっても美味しいわ。ね、エリー。」

「はい!姉上。」

エリーと一緒に美味しそうに食べてくれます。


それにしても‥‥

私はまたまたポッケから櫛を取り出します。

ソフィー姉さま、御髪が大変なことになってますよ?


「姉さま、失礼します。」

「あ‥‥」

私はソファーの上に立ってソフィー姉さまの髪を梳きます。

これでいつも素敵なソフィー姉さまに戻りました!


「ありがとう、アーちゃん。」

「いいえ。姉さま。こちらこそ、私とエリーのために怒ってくれてありがとうございました。」

「もう!言わないで、恥ずかしいんだから‥‥」

頬に手を添えてイヤイヤする姉さま、可愛いです!


「あ、あのー‥‥」

おや?すっかり忘れていました。

カイル某。


「あなたの分はないですよ?」

「っ!そんなことはどうでもいい!ち、父上!よろしいのですか!こんな、次期当主に向かってこの仕打ち‥‥」

カイル某の言葉を遮るようにダカン父さまが告げます。


「何を言っている?お前は次期当主ではないぞ?」


ポカーンと口を開けて跪くカイル某。


「ち、父上?」

「はっきり言おう。お前は人を束ねる器にない。だがお前が残念騎士と罵るエリザベートは誠実で民に人気もある。」


ビクッとするエリー。

大丈夫ですよ、と私は背中をトントンします。


「ですがエリザベートはボクより弱い!このカルナザルを総べる事など出来は‥‥」

「エリザベートは近衛騎士団長のハウエルと互角の試合をするぞ?不殺の制約があっての試合だがな。」


近衛騎士団長のハウエルさんはダカン父さまのお友達でとっても強いおじさんです。

ツーハンデッドソードって言う大きな剣を片手で振り回しちゃう。


「そんなバカな‥‥」

「ならばカイル、エリザベートと試合ってみよ。」


「分かりました、エリザベート。本気で行くからな!」

(あのはぐれは本物だけど、ほんの数か月間師事しただけだろ?ならばボクの勝ちだ!)


あれ?

雲行きが怪しくなってきましたよ?

エリーの圧勝で間違いないのですけど‥‥

エリーはまだ俯いています。


「ダカン父さま!エリーは‥‥」

ポンと頭に手を乗っけられます。

エリーの手です。


「アーちゃん、大丈夫よ。父上!その試合、お受けします!」

エリーは折れそうな心を奮い立たせて言いました。


いつの間にかギュスターヴ家の家督争いになってしまったようです。



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