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アウラ、家出する

とある雨の日。

夜が明けるほんの少し前。

アウラは目を覚ます。


雨音に混ざり父母の話し声が聞こえる。


子供部屋の壁越しに聞こえた話し。


「この長雨では夏までに作物が育たんかもしれない」

「となるとやはり森の中へ移るのでしょうか」


エルフは元々森の民。古くは森の中を移動し狩猟によって生活をしていた。

里を構えるようになったのはアウラが生まれる100年前だと以前、母親に聞いていた。


「里長次第ではあるが‥‥このままでは飢えることになるやもしれん」


アウラの家族は父母、兄、姉、弟の6人家族。


自宅前に畑を興し、根菜や葉野菜、小麦を育てている。

父母の話しでは長雨のせいで期待した収穫が困難だと言っている。


アウラは前向きで朗らかな幼女である。

が、そんなアウラでも落ち込む台詞が父親の口からこぼれた。


「‥‥口減らしも考えるべきか」


アウラは賢い。

前世の記憶があるから、と言うわけではない。

彼女の記憶は知識のみ。

前世の人格までは甦ってない。


だから判った。


父親が誰を思って口減らしと言ったのか。


アウラは即決する。


捨てられる前に。

捨てよう。


父さまも母さまも傷つかない様に。

自分も傷つかない様に。


この日からアウラは準備を始めた。


雨の中、アウラはせっせと準備をする。


草を編み合羽を作った。

溢れた川に罠を仕掛け魚を獲り。

それを燻製にし保存食としたり。


7日後、支度が整った。


雨が草を打つ音だけが響く漆黒の闇。

皆が寝静まる深夜。


アウラはそっと家を出る。

置き手紙を残して。

手紙にはただ一言。



「冒険に行ってきます」



その日アウラは里を飛び出した。

今までアウラはどんなに蔑視されようと罵られようとも泣いた事はなかった。

しかし。


生家を背にして森の中へ走り出す彼女は大粒の涙をその緋色の瞳にためていた。


さよならー


アウラは心の中でそう呟き、こぼれ落ちる涙を拭きもせず森の中を走り続けたのであった。



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