カルナザル、緊急事態発生?!
「やったね!エリー。」
「うん!アーちゃんのおかげよ。今までどんなに訓練を積んでも結果を出せなかったから‥‥」
「それは違いますよ、エリー。」
「え?」
「エリーがこれまで一生懸命に諦めずに頑張った下地があればこそ、結果が出たのです。エリーは美少女頑張り屋さんなのです!」
「あ、アーちゃああああん!!」
「エリーィィィィィィィィ!!」
抱き合うふたり。
むにゅ。エリー。柔らかいです。
「でもエリー、初戦の鉄山靠に魔力を込めたでしょ?」
「う、うん。」
「あれはちょっとやり過ぎでしたよ?アウラ流活殺術がアウラ流交殺法になる所でした。」
「ご、ごめんなさい。ししょー‥‥」
「でもたいへんよく頑張りました!」
「アーちゃああああん!!」
「エリーィィィィィィィ!!」
ぷにゅぷにゅ。あー気持ちいい‥‥癒やされるぅ!
「おほん、感極まっているところ済まんな。」
私とエリーが反省会及び友情のハグ&頬ずりをしている所にダカン父さまがいらっしゃいました。
「ち、父上!私の試合をご覧になられたのですか?」
「うむ。エリザベート、見事であった。そして、アウラど‥‥アウラ。」
はぇ?ダカン父さま、私のことアウラ殿じゃなく呼び捨てに?
「よくやった。自慢の娘たちよ!!」
「父上!」
「父さま!」
私たちは予選会場の片隅で人憚ることなく抱き合っていました。
「あらあらまあまあ。私たちはのけ者なの?」
「むう。のけ者、よくない。」
「マリア母さま、ソフィー姉さま!」
「母上と姉上も試合を?」
「ええ。エリー‥‥」
「あ、姉上?」
ふわり、と音が聞こえそうな。
そしてとても優しく美しい笑顔で。
ソフィー姉さまはエリーを抱きしめました。
「頑張ったわね、エリー。」
「はい‥‥はい!!」
かく言う私はマリア母さまに捕まって癒やしのハグ&頬ずりです。
「さて、今晩は宴だ!我が娘たちの勝利のな!!」
「あらあらまあまあ。じゃみんなでお家に帰りましょう。」
エリーはマリア母さま、ソフィー姉さまと手を繋いでいます。
え、あれ?
私のは?と、手をにぎにぎしていると
「アウラは‥‥こっちだ!」
「ひゃう!?」
ダカン父さまは徐に私の背後からサッと抱き上げます。
肩車です。
‥‥人生初肩車です!
「さあ、我が家へ。」
陽が落ちかけた夕焼けにはちょっと早い時間、私たち『家族』は連なって家路に着くのでした。
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明けて翌日ー
今日から本戦が始まります。
本戦は初日に1回戦、10試合が行われます。
会場はカルナザル中央広場。
特設舞台が設置され、観客や街に被害が起こらない様に結界も張られるそうです。
さて、そろそろお出かけの時間ですね。
「き、緊急、緊急!」
お部屋のお外が騒がしいですね。
バン!と扉が開かれ騎士さんが家族団らんのお部屋に駆け込んできました。
「何事だ。」
ダカン父さまは冷静に対応します。
「東の空が『黒』に染まっています!」
『なんだって!?』
え?え?ナニ?
『ライブラリー』にあったこのシチュエーションだと虫?イナゴさんとか大量にやって来ちゃうの?
「よっしゃあー!」
そ、ソフィー姉さま?
「何年ぶりだ?」
「はっ。7年ぶりとなります!」
え?イナゴとか来ちゃうのにうれしいの?
良いイナゴさん‥‥なのかな?
「各所に伝令!武競大会は中止、城の全兵力を集めよ。各師団へ通達、即時行動に移せ!また冒険者組合へも同時通達しこれに当たらせよ。報奨は弾むともな!」
「はっ。了解です!」
え?武競大会、中止なの?
エリーの晴れ舞台は?なんで?
「よーし、アーちゃん。私たちも行くわよ!」
「あの、エリー?良く分からないんでしゅけど」
嚙みました。
「あらあらまあまあ。アーちゃんは知らないのね。」
「そっか。森の方には行かないものね。」
マリア母さまもソフィー姉さまもニコニコしてとても嬉しそうなんですけど。
「あのね、アーちゃん。」
「うん。」
「来るの。」
「ナニが?」
「『マイグラトリー・ショコラ』よ!!」
‥‥
なんですか?ソレ。
渡りチョコレート?
「ふむ、アウラ。マイグラトリー・ショコラはモンスターなのだが無害だ。しかし此奴は‥‥甘い!!」
「そうなのよ!美味しいの!!」
「あらあらまあまあ、蕩けちゃうのよねぇ。」
エリーが続けて教えてくれます。
「そうなのよアーちゃん、マイグラトリー・ショコラはお菓子みたいなモンスターなの。」
お菓子‥‥チョコレート‥‥
『ライブラリー』にあった地球のお菓子‥
これは是非にでも味あわねば!!
「よーし、総員に告ぐ。狩って狩って狩りまくれ!!」
ダカン父さまの号令。
「「「おおおおおおお!!」」」
女性陣も父さまに続いて猛々しい呼応を返します。
甘いものと可愛いものは正義なのです!
これはまさに聖戦と言えるのではないでしょうか!!
武競大会?
そんなの、明日です。明日!!
ある意味、武競大会より盛り上がるカルナザルの街なのでした。




