アウラ、指導する②
エリーに身体強化の指導をして10日が経ちました。
最初は明るく光ったり弱々しくなったりと安定しませんでした。
3日目には安定してきましたが二時間程度で魔力切れでダウン。
それから日をおうごとに強化時間は延びていき、今では半日程度なら強化を維持出来るようになりました。
弊害として力加減が出来なくていろんな物を壊しちゃったのはご愛嬌。
おトイレのドアノブを壊して閉じこめられたエリーはドアを破壊して出て来ましたが‥‥
おかげでエリーの基礎身体能力は一般の騎士さん並みにまで向上しました。
常に細胞を活性化させた事によって筋肉や心肺機能が鍛えられたのでしょう。
それより何より!
なんと私の滑舌が良くなりました。
いっぱいおしゃべりしたのがよかったのでしょう。
さて、エリーの訓練です。
今は体術の指導も行っています。
基本的な歩術と震脚からです。
身体強化状態で震脚をしたら訓練場の地面が大きく凹んだので体術の訓練中は強化なしで行うことにしました。
やはりエリーは飲み込みが早く、すぐに体得していきます。
繰り返しの訓練に文句ひとつこぼさすに頑張っています。
身体能力の向上したエリーは少し訓練マニアっぽくなってしまいました。
よっぽど嬉しかったのね。
「エリー、震脚は全ての技に繋がる基本です。この踏み込みが最強の一撃になるのです!」
「はい、師匠!」
ほらね。私の滑舌、良くなったでしょ?
ふふ。これで私もはぐれエルフから一歩前進です。
そして訓練の合間に石鹸も作りました。
ソフィー姉さまとマリア母さまのおねだり&ハグ攻撃に屈した訳です。
石鹸といっても初歩的な石鹸ですから簡単なものです。
木の灰から灰汁を作って強アルカリ水を作るのが面倒なだけ。
何度か繰り返し灰汁を濃縮させると十分な強アルカリ水を得られました。
後はオイルに好みの香水を混ぜて強アルカリ水で凝固させていく。
乾燥させれば出来上がり。
みなさん喜んでくれました。
作り方があまりに簡単なのでカルナザルの名産品にしようなどとダカン父さまが呟いていたのは内緒です。
ダカン父さまはエリーの訓練を結構な頻度で見学に来ていました。
エリーが常に光り始めた頃、家族のみなさんはそりゃもう大騒ぎでした。
すぐ落ち着きましたけど。
ダカン父さまはこっそりエリーに訓練内容を聞き出そうとしたそうですが
「私がまだ収めていない技術を父上に教授することは憚られます。『アウラ流活殺術』の完成をお待ちください!」
と言ってお断りしたそうです。
そしてエリーの訓練が始まって約一ヶ月が経とうとしています。
エリーは身体強化(改)、八極拳、無影拳と剣技を合わせた『アウラ流活殺術』の最初の使い手となりました。
とは言えまだまだ基本を収めたのみです。
精霊魔法使いへの対応は今のところは難しいでしょう。
エリーが望むなら生活魔法(改)についても教えていきます。
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「今年も始まるか。」
「ええ、楽しみですこと。」
ダカン父さまとマリア母さま、なんのお話しですか?
「ああ、アウラちゃんは初めてなのよねぇ。」
「うむ。この領では年に一度、武競大会が開かれるのだよ。」
むむ。これは!
「ダカン父さま、マリア母さま。その大会にエリーは出られましゅか?」
あ、嚙んだ。
「エリザベートが?可能ではあるが。」
おや?何か問題?
「完成したのかな?『アウラ流活殺術』とやらは。」
「はい。まだ皆伝とまではいきませんが今のエリーは戦闘力だけならカルナザル屈指と思います。」
「戦闘力だけ?」
「はい。やはり経験不足が否めません。訓練と実践は別物ですからね。」
なるほど、とダカン父さまは頷く。
「父上!是非私に機会を与えください。」
エリーの瞳が燃えてます!
「いいだろう。エリザベートの出場を認める。私も娘たちの成長をこの目にしたいのでね。」
そう言って頭をナデナデしてくれます。
ん?娘たちの?
もしかして私も入ってるの?
「アウラちゃん。あなたも私たちの家族なのよ。」
マリア母さまに優しく抱き寄せられました。
エリーもソフィー姉さまも優しい笑顔です。
ああ、神さま。
ありがとうございます。
こんな素敵な家族と巡り合わせてくれて。




