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選挙デビュー3

 平野凡太は名前の通りふつうの高校生。

 先月18歳の誕生日を迎えた。そして役場から選挙の知らせの葉書が届いた。

 それは市長を決める選挙の投票場入場券だった。


「ああ……このあいだも嫌な夢を見ちゃったなあ……もう、投票所に行くのをやめようかなあ……」


日曜日の朝、ご飯をもそもそ食べながら独り言をいっていたら、母親が聞きとがめ、


「なにを言ってんだい、凡太! さっさと行っておいで」

「いや、母ちゃん……このあいだから投票所へ行くと嫌なことが起きる夢を二回も見ちゃってさ……これはきっと予知夢にちがいないよ、何か悪い事がおきる前兆だよ……」

「わけのわからない事いって。投票に良いも悪いもあるわけないでしょ……投票にいくのは国民の義務だよ」

「いや、義務ではないけど……」


 母親に口ではかなわない、凡太はもごもごとご飯をたいらげ、着替えて公民館へ行くことにした。


「せめて、立候補者を変えようかな……」


 縁起が悪いので候補者のパンフレットを読み返して考えなおし、別の人物を選んだ。

 凡太は市街地にある公民館へ行った。ここが投票場だ。凡太は係員に案内されて館内の体育館へと進む。今までの夢と違ってリアルな現実世界だ。


――はじめてのことで心臓がドキドキする。


 しかし、ここの体育館は子どもの頃遊んだ場所なので、見慣れていて少しホッとした。チラホラと投票に来た人たちが散在している。

 体育館にはコの字型に折りたたみテーブルが並べられ、係員たちが椅子に座っていた。入口にある受付に入場券をわたし、本人かどうかの確認をした。次のテーブルで投票用紙を引き換えにもらった。

 凡太はついたてのあるテーブル(投票記載所)に案内された。投票用紙にそなえ付けの鉛筆で候補者の名前を記入しようとしたら、手が震えてきた。


――ああ、なんだかまたドキドキしてきた……


 なんとか名前を書き込み、係員に案内されて銀色の四角い鉄の箱(投票箱)に用紙をいれた。

 ポトンと音がして肩の力が抜けた。 出口を出ると、太陽の光がまぶしい。


「あ、凡太くんじゃないの……」


 声がして振り返ると、同じ出口から黒髪の美少女が出てきた。ドキンとして、胸の動悸が高まる。


「えっと……きみは確か……」

「小学校のころ同じクラスだった香織よ」

「え!? ……まるで別人みたいだ……綺麗になったね」

「やだ、ありがとう……凡太くんはすっかり背が伸びたけど……相変わらず“普通”って感じね」

「ほっといてよ……香織ちゃんは相変わらず思ったことを口にするんだね……」


 凡太は唐突に自分のほっぺたをつまんで、ねじった。


――痛い……


「あら、どうしたの? ほっぺたをつねって……」

「いや、こんな偶然は夢かもと思ってね……」

「なにそれ、あははははは……」


 香織は外見は変わったが、中身は変わっていないようで安堵した。しかも、懐かしい感覚がしていきた。

 凡太は彼女に淡いほのかな感情をいだいていた。


――まさか、こんなところで再会するとは……いい事、あったかも。


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