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読まれる日常と、読む非日常。  作者: 金木犀
壱:非日常である、日常の大きなプロローグにあたる物語。
5/46

――死。それを思わせる言葉を吐いた幻影は、何もかも燃やし尽くしそうなほどの赤髪で。(後)

いつもお付き合いいただきありがとうございます!

後編を更新させていただきました!

感想、評価、お付き合いの程、よろしくお願いします!

「へえ、この子がお兄ちゃんの幻影か……」

家に帰宅して、早々と俺の幻影「編」を俺の妹「月」に紹介したのだが、俺の妹「月」はまじまじと俺の幻影「編」を見つめるや否や、「なら、私も!」と俺の妹「月」の幻影「太陽」を出し、俺の幻影「編」は、「すごーい、オオカミだ」と俺の妹「月」の幻影「太陽」に跨り、俺「綴」はその状況に、「危ないから、降りなさい!」と―――。

いろいろと強調しすぎて分かりづらかったと思うが、簡単に説明すると、


・帰宅して「編」を「月」に紹介。

・「編」を見た「月」は、『私の幻影も見せる』と「太陽」を召喚。

・召喚して出てきた「太陽」に「編」は『すごい、オオカミだ』と興奮し、跨る。

・それを見た「綴」は「編」に『そのオオカミは、とても凶暴で容赦なく噛みついてくるような生き物で、危ないから今すぐに降りなさい!』と注意をした。


ということになる。


「でも、つづり。このオオカミ―――全然、おとなしいよ?  ほらみて、こうやっても全く怒らないし……」

オオカミ野郎の頬は編によって伸ばされたり、上下左右にグリグリと。もし、跨っているのが俺で、そんな事をしようものならば、腕の一本や二本、いや三本……は無いけど、噛み千切るほどの奴がなんともまあ、滑稽な姿。

「ほんとだ、おとなしい。―――おーい、太陽さん、怒らないのか? え? ほうほう、うんうん。そうか、そうゆうことか……へえ、それはそれは……大変ですねえ」

「――お兄ちゃん、太陽が何言ってるか分かったの?」

「おう、当然だ。――教えてほしいか? 聞いたら幻滅するぞ? いつもはクールなお方がね・・そんな事だったとわね……お兄ちゃん―――がっかりだよ」

「ええ、なんて言ってたの? 教えてよー」

これで、オオカミ野郎のプライドは傷ついているに違いない。立場はこちらの方が優勢。

さあ、終わりだ。オオカミ野郎!

「それはな、月! こいつは―――」

「ああ、もう飽きた。―――よっと、やっぱり地面に足が付いた方が安心するよ」

「・・・ガルルルル」

「で、お兄ちゃんその続きは?」

わお、なんてハプニング。

「―――そうだ……お腹すいた……だろ? す……寿司頼もうぜ! 寿司だ寿司! ほら、俺の幻影召喚祝いにさ! 月は寿司好きだろ⁉ 編は寿司って食べたことあるか⁉ ―――え、ない⁉  寿司は美味しいぞ! ほらほら!」

「……お兄ちゃん」 

すまない、月。これ以上、俺は傷つきたくないんだ。



「ほお、これがお寿司か……」

なんとか無傷のまま、オオカミ野郎には月の影に帰ってもらい、言った通りに寿司を頼んで、数十分後、寿司が到着。今は、テーブルに寿司を並べて、それを三人で囲んでいた。

「どうだ、編。美味しそうだろ? 知ってるけど食べたことがないなんてな・・・幻影って人間とシェアリングする前は何を食ってるんだ?」

そんな詳しく知りたいために聞いたわけじゃない。なんか流れで、そう。流れで聞いたのだ。

「うん、美味しそう! ―――えっとね、なんだろ。人間の記憶?」

しかし、とんでもない答えが出てきて驚いた。

「なんだ、それ―――人間の記憶? 美味しいのか?」

「うーん、美味しい時と、不味い時があるよ。まあでも、そんな事を気にしていたら、おなか一杯にならないから、我慢して食べるけどね?」

「……でも一体、誰の記憶を食べるんだ?」

「うーんと、つづりはたまに『あれ? なんて言おうとしたんだっけ?』とか、『先週何したっけ?』って思い出せない時あるでしょ? それは幻影が腹ごしらえをしたからなんだよ。だから、食べるのはランダム。その記憶の種類によって美味しいか、不味いか決まるんだよ」

「へえ……なんか、うん。―――食べるか、寿司」

人間の常識では理解できない幻影の食生活と価値観。目の前にある寿司の誘惑に負けた俺は、割り箸を月と編に配った。

「おい、月。よだれが垂れてるぞ……」

「え? あ、ああ、余りにも美味しそうだから……ねえ、早く食べようよー」

「手前も食べたーい!」

なんと、なんと。食べ盛りの子が二人もいる。

―――ほんと、お母さん大変だわぁ。

一人、心で思う。

「よしよし、それじゃ! 編を無事、召喚したと言うことで……かんぱ―――じゃなくて、いただきます!」

「「いただきまーす」」

俺の後に、無邪気な少女達の声が響く。

――女テニの合宿? 

そんな事を思ったりしたのだが、それは心の中だけで留めとくとして、日頃はあまり食べる事の出来ない寿司に舌鼓を打つ。

美味しいものを食べると、どうして人は幸せな気持ちになるのだろうか。

理由は分からないが、分からないが、ホッとする。

それならば、過酷な状況で美味しいものを食べたら少し絶望な気持ちが和らぐのだろうか。

そうゆう結果が研究で正規に出たとしていても、俺はならないと思う。

その場の状況、その場の空気、浮気がバレた時にショートケーキを食べて「うん、美味しい!」って言える奴がこの世にいるだろうか。

美味しいものを食べて幸せな気持ちになるのは、美味しいものと自分が望む情景。

その二つが揃った時だと俺は若い心ながら思う。

とにかく何が言いたいのかというと、今が幸せだ。そう言いたい。

「ねえ、お兄ちゃん。これ、外に出しといて?」

「はいはーい。今日は洗い物が少なくていいな」

「そりゃ、出前だもん。それに、洗い物は二人で協力してやろうって決めてたのに、最近は月が一人でやってるんだよー?」

食器を洗いながら、月は口を尖らせる。

「わるいわるい、だから今日はこうして二人並んで食器を洗っているんじゃないか? あ、それ取って」

「今日だけじゃなく、いつもね! ――はい、お兄ちゃん」

「―――ああ、月? 編と仲良くしてくれよ? 一応、月の方が年上だから、なにかと教えてやってくれたら……ありがたい」

「うん……でも、びっくりしたよね。お兄ちゃんが幻影だって連れて帰って来たのが、可愛い女の子でさ、ついに法を破ったのかと思ったよ」

笑うことなく真顔で言うから、さらに怖い。

「俺をいつもどんな目で見てるんだ……」

本当に法を破って、見知らぬ女の子を家に連れて帰り、「うふ、これが、僕の幻影ちゃんだぉ」とか言っても、月は受け入れたのだろうか―――いや、そんなことは無い。即110番だ。

「でも……本当にびっくりした」

笑うことは無かったが、月は少し俯き、声のトーンを落とした。

「……月。でも……俺が幻影を召喚出来るまでになったのは、月のおかげなんだ。ほんと、感謝している―――ありがとう」

「……お兄ちゃん」

急に直視されたらなんだか、恥ずかしい。「ありがとう」言えたことは良かった。

「お、俺……これ、外に出してくるわ―――」

俺が言っている「これ」というのは、寿司が入っていた大きな丸い入れ物。これは返さないといけないため、洗って外に置いておくのがマナー。

それを手に持ってキッチンを去ろうとした時、ドフッと後ろから急に抱きつかれる。

……寿司が出るかと思った。じゃなくて、

「ど……どうした、月?」

「……月も嬉しいよ。お兄ちゃんがそうやって笑って「ありがとう」って言ってくれて……今までは……泣きながら「ありがとう」だったから……なんか、不安で……不安で」

……そうか―――そうだよな。

「もう、大丈夫だから……今度は俺が月を面倒見て……守っていくから」

「……うん。任せるね……月の事……ちゃんと、守ってよ……?」

「――ああ、当たり前だ」

俺の体に腕を回す月の体は小さかった。

「あ、ごみ」「これ、買ってきて」「ええ、お兄ちゃんがやってよ」「もう、疲れた」

「あれも食べたいなぁ、ああ! こっちも美味しそう」「これ重たい」「ねえ、お兄ちゃん」

―――我慢させていたんだな。俺の記憶的にはちょっと曖昧な月しか出てこないけど。

「……お兄ちゃん、あったかい」

あれー、俺はいつになったらこれを外へ持っていけるんだ?

「―――ああ、面白かった。人間が見るテレビとはあんなに笑えるものだったとはなぁ」

向うの方から編の声がこっちの方へ近づいてくるように聞こえる。

「あれ……つづりはどこに……」

―――やばい、このままだと。

「……ちょ」←俺。

「あ……」←編。

「……え?」←月。

わーい。見られちゃった。

「つづり……なにしてるの?」

編は声のトーンを下げて言う。

「え、いや、なにって……お皿洗いっていう家事を全うしていて……」

「へえ、その状況でね……」

目を細めて腕を組む。

小学生が勉強をすると言ってゲームしてるのがお母さんにバレたみたいな感じ。

―――でも、まって。――よく考えろ。この状況が怒られる状況に価するのか?

なんか、この状況だと―――。

「編ちゃん、これはスキンシップだよ? ―――兄妹のスキンシップ」

月は俺から離れて、弁解をする。

そう、これは兄妹のスキンシップ。――――スキンシップだ。

「スキンシップか×××の狭間じゃん」

「おーい、編。今、そこ自主規制入りましたよー?」

「―――な……何を……⁉」

顔を赤らめる月。

―――あ、意味知ってるんだ。

「……ほら、編。月が困っちゃっただろ! ―――気にするな、月! 編はこう見えて知識的に『二千歳』なんだ、少し月より変な知識もあるだけだから……」

「そんなことよりも! つづり説明しなさい!」

「―――お兄ちゃん!」

おいおいおい、もう、これって―――

「誰か……俺にショートケーキを食べさせて……」

「―――誤魔化すな、つづり!」

「もう……お兄ちゃん!」

そんな左右に揺らさないでくれ……寿司が出そう……






―――もう一度言おう。

俺にはおかしな妹が、もう一人。今日、高校の入学式―――四月十日。

ごみを必ず俺に持たせる妹たち。

そして、瞳は綺麗な茶色、赤髪のツインテールに薄いワンピース。

今日―――四月十日。

―――俺に幻影が出来ました。


読んでくださってありがとうございます!

この頃は、帰る時間が遅かったりと不規則な感じではありますが、

二日置きに更新していきたいと思っていますのでよろしくお願いします!

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