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読まれる日常と、読む非日常。  作者: 金木犀
参:暑さを感じさせるのは、何かを想う気持ちでもあるのかも知れない。
45/46

――犬猿。多分この二人(前)

二十七話(前編)を更新しました!!

長い間、休載させて頂きましたが、そのおかげで

内定を無事もらうことが出来ました!

就職先が決まったのなら、執筆にも力を入れていきたいと思います!


それでは、久々の『読まれる日常と、読む日常』

お楽しみ下さい!!

「分かりやすいため息を吐くんだな、貴様は」

「そりゃ、まあ、嫌いなんでぇ」

「それは奇遇だな、私もだ」

「ちょ、ちょっと、城島君と春夏冬先輩……三縁ちゃんもいる事ですから、もう少し仲良く……」

猿と犬が果たして仲良くできるのか、なんて答えは決まっている。

「天音ちゃん」「東雲ちゃん」

お互いは睨みを合わせたまま、

「「無理」」

と、仲良く言葉を重ねる。

「大体な、おもむろに先輩にため息を吐かないだろ。そこにいるバカは先輩という人へ対しての礼儀が皆無過ぎるんだ」

「いやいや、俺だって礼儀っていうものくらい兼ね備えていますよ? そもそも、春夏冬先輩は礼儀っていう意味知っていますか? 人間関係や社会生活の秩序を維持するために人が守るべき行動様式、特に敬意を表す作法の事ですよ。――それって、ゴリラにも通用するんですか?」

「よし、分かった。殺す」

「ちょっと、城島君、春夏冬先輩、落ち着いてください……‼」

「白昼堂々と殺人予告ですかぁ‼ まあ、道徳の欠片もないなぁ」

「生憎、貴様が言ったように、ゴリラには道徳も糞もないからなぁ」

――ゴリラにも道徳あるのでは? じゃなくて!

「あはは……三縁ちゃん、ジュース買いに行こうか、俺が奢るから」

――すまない、東雲。 三縁ちゃんにこの光景はあまりにも悪影響過ぎる、ここは任せた! 

「やっと気が付きましたか、ゴリラ先輩。 そうなら大人しく檻へと帰りましょ?」

「やっと檻から出られたんだ、少しぐらい遊んでも良いだろ?」

「もう‼ 二人とも……‼」

背中でゴリラ……じゃなくて春夏冬先輩と城島の交戦を受けながら三縁ちゃんの手を半ば強引に引いて近くに自販機なんか見当たらないが、この場から離れたいという衝動に身を任せ、取りあえず去る事にした。

「……綴さん、良いんですか? 放っておいて……」

「ああ、放っている訳じゃないんだ。――なんていうか、これは作戦なんだよ、ほら、東雲が止めようとしていただろ? あの場における俺の行動手段としては、三縁ちゃんをあの場から一時退避させることが正解なんだよ、うん。 ――実は東雲は温厚そうに見えて怒らせると一番怖い人なんだ、そんな鬼に変貌した東雲を三縁ちゃんには、見せられないなぁ」

――すまない、東雲。 鬼になちゃった。

「そ、そうなんですか」

「そ、そうなんだよ、全く」

嘘で言葉を固めながら、ある程度歩いたところで未だに三縁ちゃんの手を握っている事に気が付き俺は、慌てて手を離した。

「――綴さん」

「べ、別に下心あった訳じゃないから⁉」

「分かっていますよ、綴さんが――」

――良かった、俺が紳士だという事を理解してくれていたのか。

「変態だって事は」

――全然、分かってない⁉

「へ、変態じゃ、な、ないお?」

――だ、大事なところで噛んでしまったぁ‼ 『変態じゃないお?』って完全に変態という轢かれたレールの上を走っているじゃないか……

「あはは、冗談ですよ。 綴さんっ」

「そ、そうかぁ、冗談なのかぁ、あはは」

――笑えない。ぞ?

「私の為を思って、手を引いてくれたんですよね……私、月ちゃんが羨ましいです」

「月が……?」

「……はい。 私、月ちゃんから綴さんの話をよく聞くんです。『外見は怖そうだけど、中身は優しくて頼りになる月の自慢のお兄ちゃんなんだ』って……それ聞いて、想像して、実際に合ってみて、想像と比べて、怖さは実物の方が一枚上でしたけど、その分、優しさも想像よりはるかに超えていて……私も綴さんのようなお兄ちゃんが欲しかったなぁ、なんて……でも、もう無理なんですよね、お兄ちゃんが欲しいなんて願望は――まあ、お兄ちゃんがいないからこそ、羨ましいって思ってしまう、隣の芝生は青く見える現象なんでしょうけどね」

日差しが照りつける中、三縁ちゃんはそう涼しそうに語った。

そして、その三縁ちゃんの横を歩く俺に、果たして何が出来るだろうか。

隣の芝生は青く見える現象に納得して、思っている想像と日常生活にある現実と言うのは、かけ離れているものだと伝えることが正解なのか、それとも――

「なら、三縁ちゃん」

「……はい、なんですか?」

「この合宿の間だけ、兄妹っての……体験してみる……か?」

「――それって」

――こんな提示は、法律で裁かれないだろうか。

いろいろとまずい様な気もするが、俺が選んだ選択は、何も否定することのできない三縁ちゃんの想像を現実で壊すような事はしたくない為の理由だった。

「いや、変な事を言ってごめん、気にしないでくれ」

しかし、自ら選んだ選択は、やはり間違いだろうと提示を破棄したその時、俺の空だった左手にひんやりと冷たい感覚とそれは、

「知っていますっ! だって、変態だもんね、綴お兄ちゃんはっ」

小さな三縁ちゃんの手に繋がった。


最後まで読んでいただきありがとうございます。


これからは出来るだけ更新していきたいと思っております!

よろしくお願いします!

加えて、

感想・ブクマの登録の程もよろしくお願いします!

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