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読まれる日常と、読む非日常。  作者: 金木犀
参:暑さを感じさせるのは、何かを想う気持ちでもあるのかも知れない。
43/46

――初日。二人の、シスコン。(前)

二十六話目(前編)を更新しました!!


いつも読んでくださっている方、

ありがとうございます!


この話は昨夜に更新するはずでしたが、僕の手違いで更新できていませんでした。申し訳ございません。

一日目。


「お兄ちゃん、気を付けて行ってきて」

「ああ、ありがとう。 ――でも、本当に一人で大丈夫か?」

「うん、大丈夫だよ。 ……お兄ちゃんがいないのは寂しいけど、委員会のお仕事だから仕方ない事だし、月には太陽がいるから、なんとか大丈夫……」

笑顔と声色がミスマッチな月に、不安を抱く。

一人の妹を、一人にしてしまうのは一人の兄として、一瞬たりとも安心は出来ないが、

月は俺が思うよりしっかりしていて、時には冷静で頼りになる事はよく分かっている。

「ちゃんと、帰ってくるからな――留守番、頼んだぞ」

「うん、まっかせといてっ」

俺を笑顔で送り出してくれる月に、いつまでも俺が不安がっていてはいけない。

ちゃんと帰宅して、あった出来事を笑顔で月に過去の事として話す、それこそが礼儀であり、月の求めている事だと思から。

「それじゃ、行ってきます」

「いってらっしゃい、お兄ちゃん」


ガチャン、と玄関の閉まる音が俺たち兄妹の進むべき、はじめの一歩を響かせているような後押しで、「頑張るか」と無意識で呟いた俺の気持ちは、今日の雲一つない晴天と同じように、清々しいものだった。

というもの、それは俺たち兄妹だけだったのかも知れない。


「――楓も連れてってよ‼ ねえ、お兄ちゃんってば!」

待ち合わせの場所へと、近づくにつれて聞き覚えぼある声が大きくなる。

行く人行く人が視線を向けてしまうような、金髪の二人はこの閑散とした待ち合わせ場所に、とても映えていた。

「連れて行けるわけないだろ。――これは、委員会の仕事の一環なんだよ、バカンスに行くわけじゃないんだぞ? それに、こんなところで駄々をこねるのはやめてくれ。恥ずかしくて、仕方ない」

「嘘だね‼ 楓は見たんだもん! お兄ちゃんが水着を持っていくところ‼ お兄ちゃんが言う、委員会のお仕事は水着に着替えるのですか⁉ ――着替えないでしょ‼」

「こ、これはなぁ‼ 万が一の為だ‼ 聞く話によると、合宿の為に使う施設の傍には海があるらしいから、もしかして、海の塩分を自らの体を使って確かめなさいとか、先輩に言われたら断れないだろ? なら、やるしかない。そしたら、水着がいるだろ。――分かったか?」

「そ、そうゆう事なら――」

「わ、わかりゃいいんだ――」

「って、なるかぁ‼ お兄ちゃんのアホっ‼」

近づこうにも近づけない。見渡す限り待ち合わせ場所には、金髪二人と、それを傍から眺めている俺だけの計三人なのだが、これから東雲や先輩たちなどが集まってくると考えると、普段先輩などにケンカ売っている城島が、実の妹には歯が立たないなどという、ギャップ姿を目の敵にしている春夏冬先輩に目撃され、以降、弱みとして握られてしまい、仲の悪さが悪化し、これからの合宿に悲観的災害をもたらされては、家で留守番をやってくれている月に血で血を洗った土産話など出来るはずもない。

こうなったら、第三者の俺が関わる事によって今の状況が少しでも和らぐのなら、俺の選択は正しかったという事になり、俺ら兄妹の為にもなる。

「――おいおい、付き合いたてホヤホヤのカップルですか?」

「なっ‼ ――か、十七夜……」

「あっ‼ ――この前のセクハラ男‼」

「や、やめろ‼ こ、声がでかい‼」

「うぁ、流石セクハラ男、楓ちゃんの可憐な姿を盗撮でもしていたんですか? どうです、どうです、楓ちゃんの素敵なスタイルがはっきりくっきりと浮き出ているこの服装は?」

「――城島、お前の妹は発情期なのか……?」

「た、頼む。この事は、春夏冬先輩だけには言わないでくれ……」

「ちょっと、お兄ちゃん‼ その春夏冬先輩ってのは誰なのよ‼」

俺は静かに親指を立てた。

「まあ、とにかくだ。関係者以外は参加できない。そうゆう決まりだから、兄貴の言う事を聞いときなさい」

「うぬぬ……」

――そんなに睨まないでくれるか。年下の女の子に睨まれるのは、慣れていないんだ。いや、年上も慣れてはいないけど。

「俺の事を心配してくれるのはありがたいが、そこまでいったらそのありがたみが消えてしまうだろ、な?  楓は家で俺の帰りを待っていてくれ」

「――でも……」

「楓、昔と違って今、俺には友達がいる。だから、何も心配することはない」

「……友達」

――え、どうして今、俺をチラッと見て、嫌そうな顔したの? 兄貴の友達、悲しいよ?

「な?」

「……うん、分かった。 大人しく家に帰るね」

「ああ、気を付けて帰るんだぞ」

「……お、お兄ちゃん。 楓ちゃん大人しく帰るから、い、いつものやって……」

「――ったく」

互いに頬を赤らめ、城島は「いつもの」とねだる妹の頭を優しく撫でた。

「――お兄ちゃんを、よろしくお願いしますね。 じゃあね、お兄ちゃんっ」

「いや、俺にもその笑顔くれたって……」

言うだけ言って、城島妹はルンルンと帰って行った。

「――今の事は」

「いつものねぇ」

「くっ」

「城島ってあれか、俗にいうあれか、いや、確認するまでもないな、城島――お前」

――ピリリ、ピリリ。

「ああ、もしもし。 あ、月か? ん? おう、ちゃんと着いたぞ。 うん、うん。 分かったよ。え? 『お兄ちゃん、大好き』? 何言ってんだ、俺も好きに決まっているだろ。はいはい――じゃあな」

――ピ。

「城島、お前ってシスコンだろ?」

「いや、お前だけには言われたくないからね⁉」

「――あらあら、喧嘩ですか?」

男と男の会話に、聞き慣れた優しい声がいきなり飛び込んできた。

俺と城島は、その声のする方へ視線を向けた。向けた先には、

「おはようございます、ジュウシチヤ君に城島君」

大きな荷物を細い両腕で支え、暑い日差しの為か、被っている大きな麦わら帽子が東雲の表情をひんやりと覆っていた。

――制服と麦わら帽子。 なんともまあ、似合っておるか。


最後まで読んでいただきありがとうございます。


評価・ブクマの登録の程もよろしくお願いします!


次話は少し期間を開けて

八月二十六日の更新予定ですのでよろしくお願いします!

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