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読まれる日常と、読む非日常。  作者: 金木犀
弐:これから始まりを告げる為に幕が上がる。
36/46

――仕事内容。それと、約束。(前)

二十二話目(前編)を更新しました!!


いつも読んでくださっている方、ありがとうございます。


それではお楽しみください!

今回の仕事内容。それは――

「はい、ジュウシチヤ君と編ちゃん。 埃を吸うといけないのでマスクです」

「あぁ、ありがとう」

影倫室の大掃除だった。

この高校の各委員会専用の教室は広く、ローテーブル、パイプ椅子、書類棚など、想像出来る内の内装なのだが、この影倫室は余計な物が多かった。

初めて影倫室へ入った時、驚くほど一際目立ったのが、怖いほど壁に掛けられている狐のお面だった。お祭り用の倉庫かと思ってしまうほどに、年季の入った狐のお面が沢山壁に掛け、並んでいるのだから率直の感想としては、言った通りお祭り用の倉庫。

――どうして、こんなにお面が?

当然、委員長に問うた。

すると委員長は、不思議そうな表情で首を捻り、そのあとニコッと笑い、

『わっかんない』

と答えられた。

その笑顔につられて俺も口角が上がってしまい、

『もしかして……怒ってる?』

と、聞かれた事に落ち込んだ。

そんな思いでもある狐のお面は、今日も不気味に掛けられている。

「とりあえず、私はほうきで掃きますので、ジュウシチヤ君と編ちゃんは窓を拭いてください。――窓は、そこに置いてある新聞紙で拭いてくださいね。なんでも、新聞紙は繊維が細かく、その繊維が汚れをすくい取ってくれて、それにインクが油分を分解して艶出しまでしてくれるそうなので、新聞紙でお願いします」

「了解だ」「はーい」

饒舌に知恵を喋る東雲に言われた通り、ローテーブルに置かれている古びた新聞紙を手に取り、俺と編は、はぁっと、窓に息を吹きかけ新聞紙でゴシゴシと磨く。

その後ろで、東雲はマスクを装着し、ササッと手慣れたように床のゴミや埃を丁寧に集めていた。

人は集中すると無言になると言うが、それはあながち間違いでもなかった。いや、幻影にもその概念は適用されるのだろう。


窓を磨く音、床を掃く音、時計の秒針の音、部活生の微かな掛け声、影倫室にはそれだけの音しか意識的に聞こえてこない。

実は掃除好きな俺は、綺麗になっていく窓に満足感を得ながらリズミカルに新聞紙を動かしていた。

椅子を使って高い位置の窓を拭いている編も、綺麗になった窓に映る自分を眺めては、満足そうに口角を上げていた。

チラッと東雲の方を見ると、ほうきを巧みに使い一生懸命にゴミを集めていた。それを見ると今まで気にしていはいなかったが、影倫室は相当汚れていたらしい。

東雲の掃除スキルが高いのか、影倫室の汚れ度が高いのか、それは分からないのだが、どっちにしてもほうきを持った東雲の目は、獲物を狩る虎のよう見切りつけていた。


それから何分たっただろうか。当然、複数でやっている窓ふきは、一人でやっている床掃きよりも早く終わり、俺と編はピカピカな窓を背に新たに仕事をもらうべく、東雲に話しかけた。

「ジュウシチヤ君、編ちゃん、お疲れ様です。――すごく、ピカピカじゃないですかっ。やはり、ジュウシチヤ君に声を掛けたのは間違いではありませんでしたね! ……えっと、次の仕事ですか? それなら――」

東雲は書類棚を指さし、

「委員長が言っていたのですが、古い書類は不要だという事なので……書類整理をお願いできますか?」

「任せとけ」

綺麗に整頓されている書類棚の整理をする事となった。

乱雑に入れられている訳でもない書類整理は案外早く終わると思っていたのだが、それも今まで気にしていなかった分、いざ取り掛かると書類の量が多くて気が遠くなるほどだった。

「――よし。 編、次はその書類を取ってくれ」

「はい」

流れ作業で編から書類を貰い、一枚ずつ確認して保存、廃棄に分ける作業に疲れながらも慣れて来た時、変わらず渡された書類に目が留まってしまった。

「――幻影倫理取締委員会歴書……」

「ん、どうしたの?」

「いや、ちょっと気になって――」

今までの書類は、学校行事を書いてある新聞や、生徒に配られたであろうプリントの集まりだったのだが、『幻影倫理取締委員会歴書』と書かれている書類は何か重々しく異なっていた。

俺は、編が興味津々に覗き込むなか、多少、埃被っているその書類をヒラッと一枚めくった。

そこには、歴代の幻影倫理取締委員長の名前がずらりと並んでいて、その記録は数年前で更新されてはいなかった。

『何も考えることなく、次のページを開いてしまった事に後悔しているのか』

そんな、質問をされたら俺は間違いなく、

『している』

と答えてしまうだろう。

知らぬが仏、なんて言葉があるくらいだから、多分俺と同じような境遇にあったことがある先人が言葉を紡ぎ合わせて、感情を表現したのだとしたら、俺はこの時、どんな言葉を紡ぎ合わせて、表現するのだろうか。

黒々しいその文字は、何も考えなかった俺を嘲笑ているかのよう、言葉を並べていた。



行方不明者 



 佐々木 未来(当時 高校二年 女子生徒)

 古谷 真二(当時 高校二年 男子生徒)

 柳下 隼人(当時 高校二年 男子生徒)

 一宮 優樹菜(当時 高校二年 女子生徒)

 神崎 勇人(当時 高校二年 男子生徒)

 東雲 彩人(当時 高校二年 男子生徒)


                   捜索調査は打ち切りとする。

                              総括委員会

                          幻影倫理取締委員会



「……これって」

行方不明者と簡略的に書かれ、当然のように名前が並んでいるただの紙に、作業を止め呆然と座っている俺に東雲が寄って来た。

「どうしたのですか、ジュウシチヤ君――」

ひょこっと、顔を覗かせた東雲はそこで止まった。

忘れることは出来ない、

――東雲の見せた表情は、俺の脳裏に、強く淡く焼き付いた。



最後まで読んでいただきありがとうございます。


感想・評価・ブクマの登録の程もよろしくお願いします!


次話は少し空きまして八月四日に更新しますので

そちらの方もよろしくお願いします!!

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