――梅雨明け。伴い、明けるこれから(前)
二十一話目(前編)を更新しました!
いつも読んでくれている方、ありがとうございます!
それではお楽しみください!
梅雨上がりと言うのは、なんと気持ちが良いのだろうか。
鉛色の空を眺めていた日頃から解放され、嘘のように晴れ上がっているではないか。
ここで『待った』と言われるかもしれない。
しかし、大丈夫だ、分かっている。
梅雨でも、快晴で晴れ上がる中休みと言うのがある事ぐらい経験しているし、異常に暑さが増して、ぶっ倒れそうな時だって俺にはあった。
――あったのだが。やはり、どうも違うのだ。
「つづり……今にも死にそうな顔しているけど大丈夫……?」
「――あぁ、大丈夫だ。 それは生まれつきだから……」
――暑い。 暑すぎるではないか。
梅雨が明けたと、テレビは言う。
喜びの感情を抱いた人もいる事だろう。
俺だってそうだ。 梅雨が明けたという事に、喜びの感情を抱いた。
だけど、それは――
「――暑いの?」
「……もう、溶けていても過言じゃないぞ」
一瞬で砕かれた。
この国の気候は早速、夏を取り入れたのかもしれない。
この田んぼ道、涼しそうに見えて、そうでもない。 夏特有の草の匂い、サラッとしていないジメッとした熱気。
――苦手だ。
「学校まで、あと少しだから頑張ってよ」
「――応援してくれるのは有難いんだが……それなら、もう少し離れて歩いてくれないか?」
この暑さなのに、赤髪ツインテールっ子の編は、真っ赤な着物を着こなして、夜道を散歩しているかのよう密着して歩くのだった。
幻影の着ている服は特殊で、着込んでいても暑さは加算されないという事。
だからこそ、編だってこの暑さはちゃんと感じているはずなのだ。
――それなのに。
「つづりと居たいー! ……だめ?」
「うっ……」
甘えた声で、上目遣いを巧みに使う。
――こんちくしょう、不覚にも……可愛い。
暑さが増すと同時に、なんだか最近、編は人が変わった――いや、幻影が変わったかのではないのかと思ってしまうほどに大胆さは増していた。
まぁ、それでも前から甘い言葉の攻撃を食らっていたのだが、今は甘過ぎて糖尿になりそうなぐらいである。
「――それに、今日はあんまり暑くないよ? 昨日と比べたら暑いと思うけど……我慢出来ない程じゃないはずだよ」
「いやいや、待ってくれ。今日は普通に暑いだ――」
いや、待ってくれ俺。
これは推測であって、結論じゃない。
もしかしての話であって、確定じゃない。
――認める事は余りしたくない。
俺が感じている暑さと言うのは、梅雨上がりとか気候の問題ではなく、隣にいる赤髪ツインテールっ子に――。
「もしかして、つづり――手前に興奮してる?」
「No, I definitely don't!」
――はい、興奮していま、いや、そうじゃなくて。
「――余りのことに英語になっちゃったじゃないか」
「……つづり、動揺し過ぎだよ」
俺はすでに糖尿なのかもしれない。
「ところで、つづり」
「なんだ?」
「今日は学校お休みなのに、どうして学校へ向かってるの?」
「あぁ、言っていなかったっけ?」
「うん、聞いてない。 ――つづりがニヤニヤしながら女の子と電話していたのは聞こえなかったし、電話が終わった後、鼻歌を歌いながら制服着てるのしか分からなかったから、聞いてないよっ」
「――そう……っすか」
――編さん、怖いんだけど。
それに、ニヤニヤしてたのか俺。
そんな自分ですら理解していない醜態を編に嫌味っぽく見られていたその時、俺は確かに電話をしていた。
日頃、鳴る事がない俺の携帯に着信が来たのだ。それも、東雲から。
――出るしか道はない。
「――はい」
『あ、もしもし。 東雲です。 ジュウシチヤ君の携帯で間違いないですか?』
「……ジュウシチヤ君で間違いないです」
「あっ、良かった。 おはようございます、ジュウシチヤ君」
「あぁ、おはよう、東雲。 ――それで、何か用でもあるのか?」
『はい――用事っていうほどの事でもないのですが……ちょっと手伝って欲しい事がありまして……』
「手伝って欲しい事か――俺に出来ることなら手伝うぞ」
『はい、そんな難しい事ではないので大丈夫だと思うのですが……そう言ってもらえるなら頼んでもよろしいですか?』
と、頼まれた事を解決するために俺は学校へ向かうという事となったのだ。
簡略とした会話でも俺は嬉しかったのかもしれない。
必要とされているという事に、感じるのだ。
――存在の意義というものを。
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