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読まれる日常と、読む非日常。  作者: 金木犀
弐:これから始まりを告げる為に幕が上がる。
33/46

――主観変更。編(あみ)の編(へん)。

記念すべき二十話目更新です!?


前後ありません。

自分でもここまで更新できるとは思ってもみませんでした。


それでは、お楽しみください。

幻影の存在価値というものについて――手前には分からない。

でもそれは同時に、手前自身の存在価値、理由も分からないということになってしまう。

だから、否定しておきたい。

手前には今、存在価値、理由というものがある。

干渉することが出来ない暗闇から、目指すことすら許されない空間から、手前は召喚された。

手前がどんな姿をしているのか、どんな声をしているのか、そんな自身の事も分からず、名前すらなかった現状から、ある男によって手前は救われた。

『今日から、お前は編だ‼』

見た事の無い空間に、見た事の無い生き物、知っていることはそれが人間だという事だけ。

黒髪クセ毛で、目付きは……所見では怖かった。

手前を見て、驚いていたそんな人間。

――震えた。今まで感じた事の無い感情に、自分の存在が出来た。

その男と歩くと、心が弾んだ。

暗闇から救ってくれた、手前の恩人。

今、目の前に見えているものすべてが眩しい。何事も新鮮で、綺麗に映る。

この世界の理は知っている。

人間と幻影が共に協力し合って生きていく、そんな世界だと。

不思議と生命を共有しているのに、お互いにお互いの気持ちは分からない。

男が手前の事をどう思っているのか、手前が男の事をどう思っているのか。

伝わる事の出来ないこの想いが――楽しい。

分からない事があるからこそ、想える事だってあるのだと、その逆に分かってしまう事があるからこそ、想えない事があるのだと、鏡に映った手前を見て、考えをリセットさせた。

容姿と思想が合っていない。

そんな悟った事を口に出して言うのならば、成長が足りなかったから。

だから、決めた。

左脳で動くのではなく、右脳で動こうと。

男の照れた顔は好きだ。温厚ではない目付きも好きだ。手の温もりも好きだ。

相応しい幻影になりたい。

天秤に乗せ、釣り合いのとれる相応しい共有者として、手前は生きていきたい。

『編』

名前の由来は分かっている。

関連性を付けないといけないという決まりも分かっている。

――編綴。

手前の想いを綴ったら、何ページになるのだろう。

この世界で過ごす時間が長くなるほど、ページ数は増えていって、広辞苑、六法全書など比にならないほど、綴じる事すら難しくなることに違いない。


手前の力さえあれば、男の気持ちなんて簡単に操れることが出来る。

手前が損することがないように、この世界を廻すことだって出来る。

せっかく、召喚されたのだ。

楽しく生きなくちゃ、意味がない。


――でも、そんな事はしない。

冒険家は旅をする。目的地を目指して冒険する。しかし、難なくたどり着けたのなら、それは冒険家の旅だと言えるのだろうか。

冒険家は思うはず――物足りないと。


物足りない事なんて、手前はしたくない。

もがいて、あがいて、そこに得られるものが無いとしても、過程が有るのと無いのは話が違う。


「おーい、編。 体調はどうだ?」

「うん、落ち着いてきた。 つづりとつっきーのお陰だよ、ありがとう」

「そうか、そうか。 ――ところで月はお風呂か?」

「うん、そうだよ?」

「なら、タイミングは良かった。 ――ほら、プリン買ってきたから」

男はスーパーの袋から市販で売られているプリンとプラスチックのスプーンを手前へと渡した。

「恥ずかしながら、金欠でな。 ――編の分しか買ってきていないんだ。 食べるなら今しかないぞ? ――そのプリン、月も好きだから」

手前は体を起こし、男からプリンとスプーンを受け取る。が、

「――つづり」

受け取ったそれを男へ差し出した。

「遠慮はするな、俺の事はいいか――あ、食べさせろって事ね……」

皆まで言わなくても分かるらしい。

これまた不思議な事だ、想い通っているわけでもないのに。

男は一人で呟き、プリンの蓋をビリっと開け、スプーンを包んでいる袋を剥いだ。

瞬間、甘い香りがほんのりと部屋に漂った。

一口分、スプーンですくい上げ、男は手前の口元まで運ぶ。

「――ほら、口開けて」

含んだと同時に甘さは広がり、香りは鼻を通る。

「――うだ、 美味しいか?」

「うん」

――美味しいに決まっている。

もしも、手前に味覚が無くともその味はちゃんと『美味しい』と言えたに決まっている。

こんな幸せな事はない。

男の存在は、プリンが無くなっていくと共に大きくなっていく。

最後に食べたカラメル部分が少し苦かった。

でもそれは、男と手前の関係を表しているようなもので――

「あ、お兄ちゃん。 帰ってきてたんだ、おかえりなさい」

「あぁ、ただいま。 ――早く服を着るんだぞ? 次は月が風邪を引くなんて事が起きたら、お兄ちゃん、耐えられないからな」

「はーい、分かってるよ。――てか、なんか甘い匂いしない……? プリンみたいな……」

「え? ――そ、そうかぁ? 甘い匂いなんてしないけど……なぁ、編」

どうしてこうも、嘘が下手くそなのだろうか。好きな妹に嘘をつくのを体が拒んでいるのだろうか。

――でも、そんな姿だって。

「つづりが、プリンを買ってきてくれたの」

「――編さん⁉  約束が――」

「えぇ、編ちゃんだけにぃ! ずるいよ、お兄ちゃん! 月の分も買ってきてよぉ! 」

風呂上がりタオル一枚の妹に抱きつかれ、強請られている男の表情は、困惑とまんざらでもなさそうだった。


ほのかに残る甘さとカラメル苦さ。

各々が主張し合っていては、美味しくない。

溶け合ったその時、その瞬間が一番美味しいんだと――


男は財布を涙目で確認し、それを尻ポケットへと突っ込み、外出する準備をする。

「――ほんと、編らしいな」

そして、男は優しく微笑んだ。

――そうやって怒らないところが手前を。

「それじゃ、行ってくよ」

「月の為にありがとぉ、お兄ちゃん!」

「はいはい、月のためならどこまでもってな――」

――そうやってみんなに優しいところが手前を。


手前は、きっと――多分。

――いや、そうなのだろう。


手前は、我が儘だ。


最後まで読んでいただきありがとうございます。


昨夜更新するはずだったのですが、

pcの調子で更新することができませんでした。

すみません。


この頃は暑い日が続くと思いますので

お体にお気をつけください!

僕も、汗たらたらで頑張ります!


次話は、七月二十七日ですので、

そちらの方もよろしくお願いします。

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