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読まれる日常と、読む非日常。  作者: 金木犀
弐:これから始まりを告げる為に幕が上がる。
32/46

――以下省略。我が儘なのは、(後)

十九話(後編)を更新しました!!


いつも読んでくださっている方、ありがとうございます!


それでは、お楽しみください!

「お疲れ様です、ジュウシチヤ君」

「――お疲れ様」

犯人は金髪ピアスが連れて来た男子生徒で間違いなかった。

金髪ピアスが言うには、焦った様子で走ってきた男子生徒が肩にぶつかり、それを呼び止めて話をしようとした所、割れた窓ガラスとそれに駆け寄る俺と東雲が目に入り、気になって男子生徒に聞くと、なかなか口を開かなかったという。

窓ガラスを割った理由は、幻影の制御不足らしい。編とまでいかなくても、幻影の持っている力と言うのは、窓ガラス一枚や二枚、赤子の手を捻るほどの事で、簡単に割ることが出来てしまう。

それはとても恐ろしい事で、言ってしまうなら生身の人間なんてレア度が低い幻影でもその気になれば物理的に殺してしまう事だって不可能ではない。

割り切って言うならば、可能になる。

その為、幻影の責任問題と言うのは例え、生活指導の怖い先生に一喝入れられる程度の不祥事でもそれに幻影が絡んでいれば罪が重くなるというケースが多かったりもする。

『幻影の失態は召喚者であり、共有者である人間の失態でもある。』

幻影倫理の授業で使われる教科書の表紙に堂々と書かれている言葉。軽く考えることは決して出来ない。

男子生徒は大人しく速やかに影倫室へと始末書を提出することだろう。


似合わない手柄を上げた金髪ピアス。

――これで関わるのは最後だと思っていた。


それなのに、

「影倫に迷惑をかけるって言っていたのはこうゆう事か……」

「そんな事をジュウシチヤ君には言っていたのですね。 私は何も聞いていなかったので、受け入れ難い事ですよ。 ――それに」

思い出したのか、東雲はまた顔を赤らめる。

「――大変だな、ほんと」

東雲が金髪ピアスに対してどんな想いを抱いているのかは分からないが、そんな東雲から感じ取れるのは否定するだけでは無いように見える。

「たったの数回だけ、言葉を交わしただけなのに……失礼だと思いませんか?」

「そ、そうだな。 うん、そう思う……」

――異性を下の名前で呼ぶなんて……付き合っているの?

そんな幼稚な考えしか出てこなかった俺の恋愛事情はいつから止まっているのだろうか。

下の名前で呼べる女子なんて、『七夕里』ぐらいしか思い付かない。

しかし、それは七夕里が俺にとって友達だと自信を持って言えるからである。

七夕里だって、同じ気持ちだろう。

初めて会った日から『綴』と呼ばれていたのだから。

「でも、そうしたらジュウシチヤ君の事も下の名前で呼んでも良いはずなのに……」

「――そうはならないだろ。だった、俺なんて名前すら教えて貰ってないんだぞ。 格好をつけて、『名乗るほどの者じゃない』って――」

金髪ピアスの声真似をしたその時、ピンときた。

嘘だろ? ――何て事だ。まさか、そんな繋がりがあったなんて俺は、受け入れたくない。

――いや、マジで。

「そうだったんですか? ――そしたら、知らないと思うんですけど、私も今日、気付いたのですが城島君ってジュウシチヤ君を――」

「東雲! ――それ以上、先は言わないでくれ」

「え? ――あ、はい」

クエスチョンマークを浮かべているであろう東雲には申し訳ない。

信じたくないのだ。 カッコいいなんて言ってしまった自分なんて。

「……それじゃあ、俺は帰るから。 ――東雲も帰りには気を付けるんだぞ」

「はい、ありがとうございます。 それでは、また明日もよろしくお願いしますね」

東雲は笑顔で手を振った。

敬語を使う東雲に堅苦しいイメージを抱く生徒もいるかもしれない。

しかし、俺は知っている。本当は優しく暖かい、人間味のある人なんだと。

でも、その笑顔は俺だけに見せるものじゃないっていう事だって知っている。

午後六時前だと言うのに、空はまだ薄っすらと青い。

自然に囲まれたこの学校の周辺では、森の香り、草木の緑というのが校門を出て、漂い目に入る。

家からは数キロも離れていないのに、別世界に来たような感じ。

俺の事を誰も知らない土地に、例え言うならば、異世界転生系のラノベ主人公のような心情に浸る時がある。

学校から真っ直ぐと続く田んぼ道、カエルの鳴き声、川のせせらぎ、赤トンボが今にも目の前に現れて優雅に飛んで去って行きそうな。

こんな場所に魅力を感じる事が出来るのは、高校へ入学し、幻影を召喚して、友達と呼べる程に関わりを持つ人間が常に側に居るからなのかも知れない。

中学生の俺には、この光景がどう映っていたのだろうか。

うるさい鳴き声、落ち着かないせせらぎ、邪魔な赤トンボ、苦痛だったのだろうか。

確かにそれは自分の事なのに、それを受け入れたくない自分がいて、拒んで、逃げて。

それなのに思い出してしまうのは、その自分すら拒んでいるからで。

――頭が痛くなる。

これは俺の悪い癖なのかも知れない。

自分を客観視してしまう癖。

自分を悟っているかのようで核心は分かっていない。

でも、そんな自分だって、

「プリン……買って帰るか」

――受け入れて分かりたい。


俺は我が儘だ。

心情とは逆にあるこの穏やかな道は、そんな人間の想いさえ引き立て映えさせていた。



城島 糸遊


  右を幻影倫理取締委員会への入会を認め、それと同時に、

  自重自愛の信念のもと、委員会の職務を全うすることを命ずる。


                             総括委員会

                         幻影倫理取締委員会


最後まで読んでいただきありがとうございます。


このごろ、台風が近づいているせいか雨に打たれる毎日です。

体力を奪われ、帰るとそくバタンとそんな日々を送っています。


執筆の方は、順調で、

まだまだ乏しい語彙力ですが、読んでくださる方がいることで、やる気がでる次第です。


これからも応援よろしくお願いします。

また、評価、ブクマの登録の程もよろしくお願いします。


次話は、七月二十四日に更新予定ですので

そちらの方もよろしくお願いします。

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