――以下省略。我が儘なのは、(前)
十九話目(前編)を更新しました!
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それではお楽しみください。
――放課後。
難なくいつも通りに学校生活を終え、家で大人しくしているのであろう編の為に、プリンでも買って帰ってやろうと思い、その為には金銭的問題に支障はないだろうかと心配になったから、確認の為、財布を開いた時、『また、明日』と、別れたはずの東雲が顔を真っ青にして幽霊のようユラユラと俺に向かって手招きをした。
――大事なお皿でも割ったのか……?
小銭入れに二百円ある事を確認して、俺は東雲のもとへと駆け寄った。
「どうしたんだ?」
「た、大変な事が起きてしまいました……」
「た、大変な事……?」
東雲の表情は重く、冗談を言っているようには思えなかった。廊下の異様な静けさが、俺の不安をさらに煽り、視線を合わせると東雲の瞳は暗く曇っていた。
「皿でも……割ったのか?」
「お、お皿ですか……? ――い、いえ、割っていませんよ」
「違うのなら……」
考えようと言葉を保留した時、異様な静けさだった廊下に「パリンッ」とガラスか陶器が割れるような音がした。
いや、ようなでは無い。
廊下の先には粉々になった窓ガラスが一面に散らばっていた。
「ジュウシチヤ君」
「――ああ、分かっている」
俺と東雲はすぐさま、割れた窓ガラスの付近へと駆け寄り、辺りを見回した。
「――誰もいないか……」
「逃げたのでしょうか……?」
外からの強い衝撃を受けて割れている窓ガラス。
ここは一階だが、屋外で球技を使う部活動は反対側の校舎のグランドで練習している為、部活動での失態と言う訳でもない。
「――石でも投げいれたのか」
「でも……ジュウシチヤ君。窓ガラスを割る為に投げ込まれたような物、どこにも落ちていないのですが……」
「……確かに」
東雲が気付いたように、散らばっているガラスの付近には割る為に使われたであろう物は一つとして落ちてはいなかった。
窓ガラスをほぼゼロ距離で、自分にも破片が飛んでくる危険性があるのに割るような強者がこの学校にいるのだろうか。
そもそも、窓ガラスを故意に割ること自体が間違えているのだが、
「――ジュウシチヤ君」
「……大丈夫だ。もう少しで妹が帰ってくる頃だから――編の事は心配いらない。今は、犯人を捜すことを優先しよう」
――そんな顔で名前を呼ばれたのなら仕方ないだろ。
割れた窓ガラスに、二人だけの空間、聞こえてくるのは東雲の優しい声だけ。
なんていうのか、このハプニングは分岐した結果の一つだったのかもしれない。
日常にいくつでも転がっている分岐点。俺はそれをちゃんと理解して大切に選択していなかったのだろう。
「では、この事態を私は風紀委員会にも知らせてきますね」
「それじゃあ、俺は外を回ってくるから」
お互いが役割を分担し、解決へと急ぐ。なんとコンビネーションが良いのだろうか。
再び別れようとしたその時、
「おい」
聞いたことのある声が聞こえた。
高くもなく低くもない、人を馬鹿にする時には抑揚が上がる、分かりやすい奴。
忘れる事は無い。
その声の主は、割れた窓ガラスの外から目付きを尖らせていた。
「君は――」
言葉が出てこない。そりゃそうだ。だって教えてもらっていないのだから。
「城島君⁉」
「……え?」
俺が吐いた言葉の続きを、確かに隣から聞こえてきた。
それは東雲の声で、『ジュウシチヤ君』といつものように呼ばれているそんな風に、優しく色付いていて、鮮やかで。
「――なぁ、こいつが犯人だ」
俺の驚愕を無視して『城島』と呼ばれた金髪ピアスは放さぬよう首根っこ掴んでいる男子生徒を突き出した。
「――犯人って……?」
余りの事に、金髪ピアスが言っていることを理解出来ず、それを見兼ねた東雲が口を開いた。
「ほ、本当ですか? ――城島君」
「あぁ、本当だ。 ――おい、そこを動くなよ?」
金髪ピアスは掴んでいた首根っこを放し、男子生徒をその場で直立させた。
手をパンパンとはたき、金髪ピアスは口を開く。
「――俺に見つかったのが運の尽きだったなぁ。 んで、天音、詳しく知りたいんだろ? 」
「あ、天音って……わ、私の事は東雲と呼んでくださいって言ったのに」
「そんな細かい事を言っているんじゃ、モテないぞ? せっかく可愛い顔してんだから――もったいない」
顔を赤らめる東雲 天音。
――なんだ、この展開。
「か、可愛いなんて……」
「お、おい。 ――そいつが犯人だって証拠はあるのかよ」
分かりやすく照れている東雲を見兼ねた俺は、代わりに金髪ピアスへと聞いた。
「――それはだな」
――以下省略。
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七月二十二日に更新予定です!!
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