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読まれる日常と、読む非日常。  作者: 金木犀
弐:これから始まりを告げる為に幕が上がる。
29/46

――自重自愛。それは記憶を掻き立てる。(前)

十八話目(前編)更新しました!!


いつも読んでくださっている方、ありがとうございます!!

感謝感激です!


それでは、お楽しみください!

「――これくらいか」

お粥なんてものを作ったのはどれくらい前の事だろうか。

確か小学高学年の頃、風邪で寝込んでいる母さんの為に、俺はインターネットを駆使して、お世辞とも美味しそうには見えないお粥を作った覚えがある。

母さんは『美味しい』と、それに俺は満足していた。

――懐かしいな。

「おーい、編。大丈夫か? ――お粥作ったから食べようか」

片手にお盆に乗せたお粥を持って、ベッドで横になっている編に話しかけた。

「――つづり。 委員会の仕事は……?」

「東雲に任せてきたよ。 ちゃんと許可を取ったから大丈夫だ。――気にするな」

「ゔ……ごめんなさい」

いつもの元気っ子がこの日、素直で、表情はキツそうだった。

「馬鹿を言うな。 委員会の仕事より、編の方が優先に決まっているだろ」

「……うん」

編の頬はポッと赤くなる。

「――また、熱でも上がったか」

お盆をランプテーブルに置き、俺は編の前髪が邪魔にならないように、おでこに手をあてた。

「うーん、熱はないと思うんだがな……」

しかし、俺の言った事とは裏腹に編は顔を赤らめる一方で、

「ね、熱はないよ……だ、だからお粥食べたい」

「食欲があるっていう事は良いことだ、美味しくできたからな。――ほら、口開けて」

「い、いいよ! て、手前、一人で食べれるもん!」

「なーに今更、遠慮してるんだよ。 最近、気まずかった義理の兄妹としての仲が良くなってきて、もっと仲が縮まっていく為の義理ギャルゲー展開じゃないんだから」

――何言ってんだ、俺。

「ほら、だから遠慮すんな」

食べやすいよう一口サイズをすくい上げ、息を吹きかけ冷ました。

編はそれを、どこか遠慮しがちに「あーん」と小さい口を開いて、パクリと食べる。

「――どうだ?」

そう聞くと、

「美味しい」

と、答えた。

「そ、そうか。 ――それは良かった」

思い出す。あの日の頃が、湯気をモクモクとユラユラと立てているお粥みたいに、それは曖昧に俺の記憶を掻き立てる。

そんなお粥は、すぐに無くなった。

編は本当に美味しかったという。

空になった器をキッチンへ持っていくと、急いだ様子で月が帰宅した。

「編ちゃん、大丈夫かな⁉」

月も心配していてくれたらしい。

月の不安そうな声に、編はそれ打ち消すかのように「大丈夫だよ」と。

器を洗いながら、そんなやり取りに俺は微笑んでしまう。

今の顔を誰かに見られたら『変態』とまた、怯えさせてしまうかもしれない。

でも、それでも良かった。

嬉しかった。

「――母さん」

久々に声に出したと思う。

「お墓参り……編を紹介してやらないと」

でもそれは、編の体調が戻ってからでいい。今は、回復を待つだけ。

「家族みんな揃ったことだし、今日はみんなにってプレゼントを貰いました」

手には可愛く包装された袋を持って、編と月がいる寝室へと向かう。俺の言葉に一番に食いついたのが月だった。

「ええ‼ なになに? ――白物家電か何か?」

「いや、地域のビンゴ大会じゃないんだから……」

「なら、お菓子?」

「お、察しがよろしいぞ、編。――正解だ」

「ちぇー、冷蔵庫かと思ったのに……」

――この小さい袋で、いったい何が冷やせると思うんだ?

「そ、それにだな。お菓子は、お菓子なんだが、これは普通のお菓子ではないぞ?」

「食べられないお菓子‼」

「いや、なぞなぞじゃないから⁉ つうか、いつもよりテンションがお高いようで……」

――席替えで後ろの席でも勝ち取ったのだろうか。

「手作りとか……?」

「おお、またまた正解だ、編。今日は調子が良いんだな。――いや、悪いのか」

そんなやり取りを終え、東雲手作りのクッキーを三人で仲良く食べた。

率直な感想を言うと、美味しい。

市販で売っているクッキーとは違い、やはり手作り感は出ていて、このハートの型をしたクッキーなんか――

「お兄ちゃん、ニヤニヤしてるけど……」

「つづり、なんか勘違いしてるんじゃないの?」

――勘違いなんてしているものか。

このハート型のクッキーは、

「――美味しいな、本当に」

「幸せそうだね、お兄ちゃん」

「――手前だって、その気になれば、あまねちゃんぐらい美味しいクッキー作れるもん」

「それは楽しみだけど、まずは体調を戻さないと始まらないからな?」

パッと、部屋に掛けてある編の真っ赤な着物が目に入った。

本当に似合っていて可愛いと思う。

――まあ、月だって可愛さに関しては負けてはいないが。

「また、ニヤニヤしてる……」

「つづりって変態……?」

「――月、変態さんなお兄ちゃんなんて嫌だよ」

「――手前も嫌だ」

「――俺だって、変態は嫌だ」


笑い声が響くこの家に自分の存在があるのが、嬉しい。

月や編が俺を呼んでくれるのが、嬉しい。

上手く言葉に表せられないけど、心地が良い。

しかし、

――憎かった幻影。その気持ちが薄れていくのが、分かっている。

それは父さんの事を忘れていくかの様に、思えてしまう。

母さんが泣いたあの日、月が泣いたあの日、俺は決して忘れてはいけないだろう。

でもそれは、編の笑顔を否定しているかの様で、混迷を極めている自分が情けないとも思う。

単純に考えすぎなのかもしれない。

今はまだ、目を逸らしてもいいだろうか。

――微笑む編に、俺は錯乱する。


最後まで読んでいただきありがとうございます。


読者の皆様、どうでしょうか。

先が気になるような、そんな味が出ていますでしょうか。


これからも、執筆向上に努めていきたいと思っておりますので、

応援よろしくお願いします!


また、評価・ブクマの登録、

感想に、アドバイスなどもぜひともよろしくお願いします!

評価や、ブクマの登録、感想などは

僕から分かりやすい、読者の皆様からの応援だと思っております。


温かい目で、見守ってください!


次話は、七月十六日に更新予定ですので、

そちらの方もよろしくお願いします!

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