――自重自愛。それは記憶を掻き立てる。(前)
十八話目(前編)更新しました!!
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それでは、お楽しみください!
「――これくらいか」
お粥なんてものを作ったのはどれくらい前の事だろうか。
確か小学高学年の頃、風邪で寝込んでいる母さんの為に、俺はインターネットを駆使して、お世辞とも美味しそうには見えないお粥を作った覚えがある。
母さんは『美味しい』と、それに俺は満足していた。
――懐かしいな。
「おーい、編。大丈夫か? ――お粥作ったから食べようか」
片手にお盆に乗せたお粥を持って、ベッドで横になっている編に話しかけた。
「――つづり。 委員会の仕事は……?」
「東雲に任せてきたよ。 ちゃんと許可を取ったから大丈夫だ。――気にするな」
「ゔ……ごめんなさい」
いつもの元気っ子がこの日、素直で、表情はキツそうだった。
「馬鹿を言うな。 委員会の仕事より、編の方が優先に決まっているだろ」
「……うん」
編の頬はポッと赤くなる。
「――また、熱でも上がったか」
お盆をランプテーブルに置き、俺は編の前髪が邪魔にならないように、おでこに手をあてた。
「うーん、熱はないと思うんだがな……」
しかし、俺の言った事とは裏腹に編は顔を赤らめる一方で、
「ね、熱はないよ……だ、だからお粥食べたい」
「食欲があるっていう事は良いことだ、美味しくできたからな。――ほら、口開けて」
「い、いいよ! て、手前、一人で食べれるもん!」
「なーに今更、遠慮してるんだよ。 最近、気まずかった義理の兄妹としての仲が良くなってきて、もっと仲が縮まっていく為の義理ギャルゲー展開じゃないんだから」
――何言ってんだ、俺。
「ほら、だから遠慮すんな」
食べやすいよう一口サイズをすくい上げ、息を吹きかけ冷ました。
編はそれを、どこか遠慮しがちに「あーん」と小さい口を開いて、パクリと食べる。
「――どうだ?」
そう聞くと、
「美味しい」
と、答えた。
「そ、そうか。 ――それは良かった」
思い出す。あの日の頃が、湯気をモクモクとユラユラと立てているお粥みたいに、それは曖昧に俺の記憶を掻き立てる。
そんなお粥は、すぐに無くなった。
編は本当に美味しかったという。
空になった器をキッチンへ持っていくと、急いだ様子で月が帰宅した。
「編ちゃん、大丈夫かな⁉」
月も心配していてくれたらしい。
月の不安そうな声に、編はそれ打ち消すかのように「大丈夫だよ」と。
器を洗いながら、そんなやり取りに俺は微笑んでしまう。
今の顔を誰かに見られたら『変態』とまた、怯えさせてしまうかもしれない。
でも、それでも良かった。
嬉しかった。
「――母さん」
久々に声に出したと思う。
「お墓参り……編を紹介してやらないと」
でもそれは、編の体調が戻ってからでいい。今は、回復を待つだけ。
「家族みんな揃ったことだし、今日はみんなにってプレゼントを貰いました」
手には可愛く包装された袋を持って、編と月がいる寝室へと向かう。俺の言葉に一番に食いついたのが月だった。
「ええ‼ なになに? ――白物家電か何か?」
「いや、地域のビンゴ大会じゃないんだから……」
「なら、お菓子?」
「お、察しがよろしいぞ、編。――正解だ」
「ちぇー、冷蔵庫かと思ったのに……」
――この小さい袋で、いったい何が冷やせると思うんだ?
「そ、それにだな。お菓子は、お菓子なんだが、これは普通のお菓子ではないぞ?」
「食べられないお菓子‼」
「いや、なぞなぞじゃないから⁉ つうか、いつもよりテンションがお高いようで……」
――席替えで後ろの席でも勝ち取ったのだろうか。
「手作りとか……?」
「おお、またまた正解だ、編。今日は調子が良いんだな。――いや、悪いのか」
そんなやり取りを終え、東雲手作りのクッキーを三人で仲良く食べた。
率直な感想を言うと、美味しい。
市販で売っているクッキーとは違い、やはり手作り感は出ていて、このハートの型をしたクッキーなんか――
「お兄ちゃん、ニヤニヤしてるけど……」
「つづり、なんか勘違いしてるんじゃないの?」
――勘違いなんてしているものか。
このハート型のクッキーは、
「――美味しいな、本当に」
「幸せそうだね、お兄ちゃん」
「――手前だって、その気になれば、あまねちゃんぐらい美味しいクッキー作れるもん」
「それは楽しみだけど、まずは体調を戻さないと始まらないからな?」
パッと、部屋に掛けてある編の真っ赤な着物が目に入った。
本当に似合っていて可愛いと思う。
――まあ、月だって可愛さに関しては負けてはいないが。
「また、ニヤニヤしてる……」
「つづりって変態……?」
「――月、変態さんなお兄ちゃんなんて嫌だよ」
「――手前も嫌だ」
「――俺だって、変態は嫌だ」
笑い声が響くこの家に自分の存在があるのが、嬉しい。
月や編が俺を呼んでくれるのが、嬉しい。
上手く言葉に表せられないけど、心地が良い。
しかし、
――憎かった幻影。その気持ちが薄れていくのが、分かっている。
それは父さんの事を忘れていくかの様に、思えてしまう。
母さんが泣いたあの日、月が泣いたあの日、俺は決して忘れてはいけないだろう。
でもそれは、編の笑顔を否定しているかの様で、混迷を極めている自分が情けないとも思う。
単純に考えすぎなのかもしれない。
今はまだ、目を逸らしてもいいだろうか。
――微笑む編に、俺は錯乱する。
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