――シークレット。 黒魔術にかけられて。
十七話目更新しました!!
この物語には、前後ありません。
それではお楽しみください!
「……」
「……」
なんだか、気まずい。
東雲へ
そちらの様子はどうですか?
上手くやれていますか?
こっちは沈黙が痛いです。
「雨……すごいねぇ」
「ああ、そう、だな」
せっかくの言葉キャッチボール、返せなくてごめんなさい。
外の雨は、止む様子を見せることは無く、思うがままに降っているようだった。
「――ごめんね、迷惑かけちゃって」
「ああ……いいよ。これも委員会に入っているからにはやらなくちゃいけないことだから」
「なら、仕事を増やしてごめんなさいってとこかな? はあ、今度はどんな指導を受けなくちゃならないんだろかぁ」
「風紀委員長が言っていたけど、常習犯……なんだって?」
「あはは、そんな物騒な言い方はやめておくれよ。常習犯って言っても、俺はただ、反抗したいだけなんだから」
「……反抗したいだけ?」
「そう、反抗したいだけ。この学校って、先生なんかより、委員会の長の方が生徒の対して厳しいだろ? 生徒の自主性を尊重するとか言っているけど、それって結果、生徒内での格差が生まれるだけだと思わないか? ――生徒の問題を生徒が解決する。なんだか、チープな構成だよ、全く」
二神先輩が言っていた様に、この男もまた、生徒を取り締まる生徒が嫌いな人種なんだろうか。
「――ところで、十七夜」
「ん、なんだ? ――って、なんで俺の名前を?」
「え? ああ、さっき、黒髪パッツンの子が呼んでたろ」
「でもあれは、ジュウシチヤって……」
「いや、十七夜だろ?」
「正解だけど」
まさか、こんなにもスムーズに初対面の人から名前を呼んでもらえるなんて。
素直に、これは嬉しい。
「で、なにか俺に用事でも?」
「そうそう、十七夜。――お前の幻影ってレア度高いんだってなぁ」
「一体、どこからその情報は回っているのか……」
「結構、有名な話になってるぜ? なんか、美少女を召喚した怖い人がいるってよ」
「――怖い人だって?」
「そうそう、怖い人。まあ、俺だって初め見かけた時は、目つき悪いなって思ってたけど、うん。怖いってのは外見だけのようだなぁ」
「待ってくれ。そしたら、えっと、君はどうなるんだ? その髪はさすがに地毛じゃないだろ?」「ああ、これ? うん、染めたけど」
男は金色の髪をいじりながら、当たり前のように答える。
「確かにこの学校は、先生が生徒に対して厳しくは無いけれど、髪の色を加工して良いなんて校則に書いてはいなかったぞ。 ――だとしたら、君の方が有名な話になるのが妥当じゃないか? それにさっきの君の幻影、姿は見えなかったけど、レア度は高いはずだ」
「そうだ、先生からはなにも言われない。だけどな、見ただろ? 十七夜だって。あの鳥の様にピーピー騒がしい女を、風紀委員長を。髪の色を戻せだの、ピアスは付けるだの。なんで生徒の言われなくちゃいけないんだって話だ。それに俺の幻影の事は、うーん。まだシークレットって事で、よろしく」
「シークレットって……」
「俺の事は良いんだよ。今は十七夜、お前の事だ。で、召喚したのか? 本当に」
「待て、おかしくないか? 君の幻影はシークレットで、俺の幻影の事は赤裸々に話せと? どう考えても、それは対等じゃない。現に、俺は君の幻影の姿は見ていない。それなら、今この状況が対等なわけだ。話せる事は限られている」
「と、お前は言うが。――いや、残念だぁ、十七夜。今のこの状況は対等じゃない。俺は幻影を本当に召喚したのか、していないのか。事実か嘘かをお前に聞いているんじゃない。それにな、俺はお前の幻影をこの目でちゃんと確認している。だから、お前が『召喚した』と答える事は聞く前から分かりきっている事なんだよ。なら、なぜ、聞くのかって聞きたいんだろ? 簡単だ、考えてみろ。――今から五十メートルのタイムを計るとする。これからタイムを計る奴の中で、一番足が速いとお前は自信を持っていた。案の定、お前は好記録。しかしな、ここでまさかの事態が訪れる。目の前で、ものすごい速さで五十メートルを駆けた奴がお前の記録を上回ったんだ。そいつは満足そうにこちらへと帰ってくる。お前は負けた。目の前で自分が負けたのを確認し受け入れた。だけどな、聞くだろ? 満足しているそいつに、『~秒代って、本当か?』って。嘘だろ? って。 ――受け入れたのに、未だ飲み込めない状況に再度、自分から受け入れようと負けを認めようと。でも、もしかしたら、それは何かの間違いで、俺の方が速くて。と、わずかな可能性を求めて、現実に落とされる。――それと一緒だ」
何か返事を返そうとしたが、上手く言葉が出てこない。
俺の幻影は見られている?
例え話が長くて飲み込めない。
この二つが俺の言葉を遮った元だった。
――つまり?
申し訳ないがそう聞き返そうとした時、「はあ」と思いため息を吐き男は、
「分かっていないようならいい。これもシークレットだ」
と、歩くのを止めた。
男が止まった場所は正しく、影倫室。
色々と長く言われたものだから、一番大事な事を忘れてしまっていた。
男は大きくため息を吐き、俺を見て言った。
「それじゃあ、お仕事お疲れさまぁ〜 ここに来るのは初めてだけど、風紀委員会よりは優しく罰してくれそうだな」
「どうだろうな、優しく罰してくれるかは分からないけど、あのハチャメチャな風紀委員長みたいな人は、この影倫には多分いない」
「それが聞けて、良かったよ」
男は今から罰せられるというのに、ニコッと口角を上げた。
「な、なぁ、君の名前はなんて言うんだ? 俺の名前だけ知られていて、俺が君の名前を知らないのは対等じゃないだろ?」
「そうだな、そうか。 俺の名前は――」
男はうーんと、考えるポーズを取り金髪の髪をワシャワシャと掻き分け、
「名乗るほどの者じゃねーよ、じゃあな」
ガラガラっと、影倫室の扉は開かれ、「お邪魔しまーすっ」と男は陽気に入っていった。
ガチャンっと、扉が締まったかと思うと、
キーンコーン、と昼休みを告げる合図が鳴った。
「名乗るほどの者じゃない……か」
昼休みの終了、仕事の終わり。
各々自分の教室へと帰っていく生徒に混ざり、俺も教室へと戻った。
「今日は、早く帰ってもいいか?」
「はい、よろしいですよ。大きな仕事は今日の昼休みに終わりましたから、後は影倫室での報告書やらの処理なので、私一人で十分です」
「ありがとう、恩にきるよ」
「いえいえ。そもそもジュウシチヤ君は臨時と言うことで幻影倫理取締委員会に入って頂いたので、放課後の仕事は気にしないで下さい。それに――」
東雲は表情を変え、鞄から可愛く包装された袋を取り出し、
「編ちゃんの様子は大丈夫ですか? あの……これ、編ちゃんに食欲あるか分からないんですけど、良くなりますようにって願いを込めて作りました。良かったら、ジュウシチヤ君も、つっきーちゃんも食べて下さい」
「おぉ、手作りか。編も喜ぶよ。本当に、ありがとう」
心配そうな趣で手渡されたのは、東雲手作りクッキーだった。
例え、編の食欲がないとして、俺が全部食べてもいいって事なら、それはそれで嬉しい事なのだが、この東雲手作りのクッキーを編に、願いの込もった想いを食べて元気になって欲しいというの、また本音である。
「お大事にって、編ちゃんに伝えといて下さいね」
「分かったよ」
「それじゃあ、ジュウシチヤ君も下校には気を付けて下さい。 また、明日」
「また明日」
俺と東雲は靴箱で別れた。
放課後の靴箱と言うのは、家に帰れるという安堵感と、また明日学校という切迫感が入り乱れている場所だと俺は思う。
「さようなら」ではなく、「また明日」
また明日というのは、解放された学校生活からは逃げる事のできない、暗黙の魔法を兼ね備えている呪文みたいなもので、それを言われる相手によって、学校へ向かうのが楽しみに変わる事だってある。
――そう、こんな雨の日だって。
東雲が吐いた「また明日」という言葉に俺は、明日の学校生活を楽しみにさせてしまう黒魔術にかけられてしまったのかもしれない。
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