――女子生徒。クールビズには、少し早い。(後)
十六話目(後編)を更新しました!
注意
春夏冬
それではお楽しみください!
「え?」
俺は思わず声を零してしまった。
ファサっと、廊下に落ちたのは、男の右腕ではなく、ブレザーとカッターシャツ(両方右腕だけ)だった。
「ふははは‼ どうだ! 右腕だけ、タンクトップになった気分は‼」
その場には高らかに笑う、風紀委員長の姿と、落ちたブレザーとカッターシャツを拾い上げる男の姿があった。
「あ~あ、俺、裁縫とか苦手なんだよなぁ」
「流石に、生徒自身の体に切り傷を入れるのは気が引けるからね! 今ここで、更生するって誓うなら、片方だけで許してあげるわ。まあ、逆に誓わないのなら、次は左腕。その次、右脚、左脚の順に、クールビズにしてあげるわよ? ふははは!」
高らかに笑う風紀委員長。それを見た男は一歩下がって、深呼吸をした。
「――春夏冬先輩。クールビズにはちょっと、早いと思うんですけど、まあ、仕方ないですよね? 春夏冬先輩も一緒にクールビズりましょっか」
男が言った瞬間、縮こまっていた男の影が、風紀委員長を目指して真っ直ぐに伸びたかと思うと、真っ赤な光に包まれた風紀委員長は「な、なんだ⁉」とその声を最後に、
「さぁ、皆さん‼ お待ちかねの時間です! 俺の右腕を寒がらせた罰として――いや、俺と一緒にクールビズってくれると言う優しい春夏冬先輩の登場です‼ 拍手で迎えましょう!」
男の拍手が廊下に響いた。
そして、次第と真っ赤な光は、薄くなっていき、男から伸びた影は元の通り、縮こまって行った。
「おぉ、春夏冬先輩って、意外とスタイル良いんですね~」
「なっ‼」
――男の幻影? 姿は見えなかった、けど、男は動いていなかったし、影が伸びて――と、考えていたのは俺の中で中断され、視線は風紀委員長に釘づけになった。
多分、俺だけじゃない。風紀委員長と男を囲んでいる生徒全員、視線を奪われた事だろう。
そう、隣にいる東雲だってぽかんと口を開けて、それを眺めているのだから。
威勢の良さは、今の状況に無かった。
「ちょちょちょ、な、なにこれ⁉」
両手を使って露わになった体を必死に隠そうとする風紀委員長。その場には上手具合に、というか、何の切込みの無い制服が落ちていた。
「流石に、制服に切り傷を入れるのは気が引けるんでね~、普通に脱がせちゃいました。言うならば、これが最強のクールビスですよ、春夏冬先輩っ?」
制服を身にまとっていない女子生徒の体というものは、こんなにも――いや、それどころではない。
「東雲、行くぞ!」
「え? ああ、そ、そうですよね! これは処罰対象です!」
目の前で繰り広げられていた展開に着いて行けていなかったのか、東雲は自分が影倫だという事を忘れていたのだろうか。
そうだとしたら、俺も一緒だ。――すっかり、忘れていた。
「すいません、影倫です! ――校内での不要な幻影召喚、及び幻影を行使した迷惑行為等で二人を取り締まります! えっと、ジュウシチヤ君はその男子生徒を、私は先輩を――」
「分かった」
とりあえず、謎の多い男子生徒を幻影倫理取締委員会室へと連れて行けという事で、
「すまんが、付いて来てくれるか?」
「――はいはい」
と、素直に。
その横では、
「ちょっと、私このまま連れていかれるの⁉」
「急いでください‼」
「――はい。……いやでも、下着姿で校内歩く勇気ないって‼」
東雲頑張れ。
俺は心から応援しているぞ。
「――ちょっと、誰かー‼」
半泣き風紀委員長の声を背中で受け止めながら俺は男を連れて影倫室へと向かう。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
僕の小説では、印象づいてほしい願いのもと、キャラ名の漢字を少し難しくしています。(簡単にいうと厨二ぽく・・・)
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次話は、七月十二日更新予定です。




