――自画自賛。少年らしい、少女の心。(前)
十三話目(前編)を更新しました!!
最近は、ブクマの登録、伸びていくアクセス数に嬉しく思っております。
それでは、お楽しみください。
「――なんでこうなるの」
暗い廊下に俺の顔は携帯のディスプレイの光に照らされ、その明かりが唯一、俺に取り合ってくれていた。
〔他人の家まで来て、廊下で一人なう〕
なんて、フォロワーの少ないSNSに投稿しようと、投稿ボタンを押そうとした時、
――ガチャン。
廊下の奥からそんな音と、
「あっれ? ――鍵開いてる。お姉ちゃーん? 今帰ったよー?」
高い女の子の声が聞こえてきた。
――まずい……だろ。
直感的にそう感じた時には、追い出された扉のドアノブに手を掛け、
ガチャッ。
「いや、戸締り完璧!?」
ドアノブは二ミリ程度にしか動かなかった。
「お姉ちゃーん? いないのー?」
――君のお姉ちゃんはいるよ! この扉の向こうにいるよ⁉
だんだんと近くなってくる声に、大きくなっていく足音。
何が『ここからは女の子トークっ』だ!
こんな状況になるって事が初めから分かっていたら、俺だって女の子トーク炸裂させてたわ!
『最近、体重が〜』
とか言っときゃいいんだろ⁉
『チョーやばくなーい』
本当にやばい時は無言になんだよ⁉
『彼氏の束縛がウザくてぇ』
愛されている証拠だろ⁉
チョーやばい状況に、掻き出した汗。
詰み将棋の王の気持ちが理解出来たような気がする。
とうとう聞こえていた声は消え、同時に足音も消えた。
「お姉……ちゃん?」
代わりに聞こえてきたのは、不安げに語尾が上がった疑問形。
声の主に背を向けている俺に課せられた選択肢は二つ。
――一つは、笑顔で振り返り挨拶をする。
――一つは、笑顔で振り返り逃げる。
しかし、ここで逃げてはかえって誤解を招きそうだ。
――よし。
深呼吸をして、ゆっくりと振り返った。
出来るだけ笑顔に、笑顔に、笑顔に。
「きゃぁぁぁぁ、変態!」
――笑顔で、
「――お、お邪魔しています……」
笑顔で挨拶をしただけなのに。
「お姉ちゃーん‼ 不審者がいる‼」
後ずさりする女の子。
俺は、携帯の反射したディスプレイに映った自分の顔を見た。
「あ、変態だわ」
日頃、満面の笑みを浮かべたことが余りない俺にとって自ら意識して笑顔を作るという事が変態製造機になっていたとは、自分自身でもかなり落ち込み、目の前で今にも泣き出しそうな女の子に申し訳なくなった。
今、そんな状況から一変して目の前には二人の女子が正座をしていた。
俺から見て右手には、
金髪スウェットで大人っぽく見える女子。
左手には、
黒髪ドレスで幼く見える女子。
その対照的な二人は、同じように向かい合って座っている俺と編に、
「「ごめんなさい」」
と、頭を下げた。
金髪スウェットの方は、テヘッ、としている。
「もう! お姉ちゃん、ふざけないで! ――本当にごめんなさい。 お姉ちゃんってこうゆう所が多々あるもので……」
「――いや、もう大丈夫だから」
「はっはっはっ! バレなかったって事は、私の演技が上手かったって事だな! ――まぁ、月ちゃんが来てたら、一目でバレたと思うけどねぇ」
演技力を自画自賛する金髪スウェット。
その隣で、「全く似てないから!」とそれを非難する黒髪ドレス。
俺と編は顔を見合わせて、クスッと編は笑って見せた。
「とまぁ、悪かったとは思っているさ! ――だから、今回、編ちゃんの服は私からのプレゼントとさせてくれ」
「いやいやいや! ――流石に、それは悪いですよ」
「綴くん! 少しは考えてみてくれ。 私の起こした事態で編ちゃんはイメチェンを未だに出来てないんだぜ? 申し訳ないっ! プレゼントぐらいさせてくれ‼」
――編に負けない程のマイペースだな、この人。
「それに――」
力説する金髪スウェットは一旦言葉を止め表情を優しく綻ばせ、
「急に敬語を使うのはやめないか?」
「――そう言われても」
『敬語を使うな』
そう言われても、大人びている雰囲気の相手に敬語を使ってしまうのは、仕方ないことでと言い訳をする前に、目の前で『敬語を使うのはやめないか?』と言っているのは、正真正銘の大人、というか、先輩だったのだから敬語を使ってしまうのは言い訳ではなく本当に仕方ない事なのだ。
ここで、二人が正座し俺ら二人に詫びを入れた経緯を説明しよう。
テンションが異様に高い、『人類皆兄弟!』が座右の銘っぽい金髪スウェットの女子、それはなんと、俺の通う悠ヶ丘高校の一個上の先輩であった。
名前は『朽葉 小百合』
小百合先輩となる。
小百合先輩は妹の『朽葉 三緑』
三緑ちゃんが月と電話で会話していた内容を聞いたらしく、編に興味を持ったらしい。
『それならば』と小百合先輩が考えたのが、
『朽葉姉妹入れ替わり作戦』という。
――その作戦によるメリットは何なのか?
小百合先輩が言うには、何もないらしい。
――では、なんで?
『イタズラしたかったっ! テヘッ』
――らしい。
大人びている容姿とは真逆に、少年の心は忘れていないらしい。
――まぁ、少女なのだか。
「私、敬語を使って話されるのが苦手なんだ。 ――うーん、なんていうか。 私ってこんな感じの人だろ? ――だから、先輩命令だっ! 敬語なんて大そうなもの、私には似合わん‼ ――そうだろ?」
そう、小百合先輩は笑って見せた。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
投稿数文字数のせいで、中途半端なところで
区切っております。
前と後で行きますので、よろしくお願いします!
次話は、六月二十九日となります。
そちらのほうもよろしくお願いします!!




