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読まれる日常と、読む非日常。  作者: 金木犀
壱:非日常である、日常の大きなプロローグにあたる物語。
16/46

――作戦会議。それはベンチに腰掛けて。(後)

やっと次話を更新することが出来ました!!

読者の皆様には、改めて感謝しております!


それでは、十話目(後編)をお楽しみください!

放課後は気分が浮く。六限の授業から解放された後の校舎は、気楽で生徒たちが集まって駄弁るだけの施設のような気がする時がある。今まで受けてきた授業の事は忘れて、部活に行く者、足取り軽く帰って行く者、委員会の仕事を全うする者。色々な目的を持った時間に、俺と東雲は、『どこ寄ってく?』『買い物した―い』などと、これからの予定を考えている生徒と一緒に校門を出て、簡略的に書かれた地図を片手に目的地である書店を目指した。

先ほど予定を決めようと話していた女子生徒たちは結局、カラオケに行くようだ。学校から大通に出るまでは、ほぼ一方通行。会話に参加しているかのよう、カラオケに行く女子生徒たちの声は聞こえていた。

カラオケボックスを目指す女子生徒たちとは、大通で真反対に別れ、書店を目指す俺らは並んで書店へ足を進める。

それから数分、車の通りが少し大人しくなった所で、東雲がきょろきょろと、

「ここら辺に、書店なんてあるのでしょうか……」

不安げに言った。

「大丈夫、あるのはあるんだけど……」

前、東雲に言ったように、ここら辺の土地勘は十分にある。書店はここの角を曲がったところにあるのだが……

「――本当にここで合ってるのか」

簡略的に書かれた地図を見る限り、目的地はここで間違いないのだが、俺は目の前に現れた書店で調査をしないといけないという事に、少し、いや、すごく驚いた。

だって、そこは、

「出雲書店ですか……趣があって、落ち着く雰囲気のお店ですね」

東雲は書店があることに安心し、その安堵感に任せて言葉を吐いた通り、趣のある落ち着いた雰囲気のお店、七夕里の実家でもある出雲書店だったのだ。

「まじか……」

あまりの偶然に、俺はぽつんと言葉を無意識で吐くと、鞄の中に腕章がすぐに取り出せるように入れてあるか確認した東雲が、

「どうかしたんですか……? まさか、腕章を忘れたとかでは?」

「い、いや。腕章はちゃんとあるんだが……」

「では、何が――」

「いらっしゃいませー。――って、綴⁉」

東雲の言葉と、店から書店の制服を着た七夕里が客の存在に気付き、挨拶をしたと同時にその客が俺だという事にも気付いた為に出た言葉が被り、その状況に東雲は俺の「どうかした」という理由を察したらしく、

「なんと、お知り合いのお店でしたか」

俺と七夕里の表情を交互に確認し、驚いたように言った。

「ほんとに、偶然だな」

「例の件で来てくれたの? ――その子は?」

七夕里が東雲に視線を向けたから、紹介しようと「こちらは――」と声を出そうとしたら、

「私は、ジュウシチヤ君と同じクラスの東雲 天音と言います。 ジュウシチヤ君とは、委員会も同じで、お世話になっています」

「ジュウシチヤ君……? あ、ああ。綴と同じクラスって言う事は、同い年ってことで―― ごめんなさい。てっきり、年下かと。――あの、私は隣のクラスの出雲 七夕里って言います。綴とは中学からの幼馴染で―― 綴が……お、お世話になっています……かな」

「良いんです、良いんです。よく中学生に間違えられますから。 ――出雲さん、よろしくお願いします」

「うん、えっと、天音ちゃんで、いいかな?」

「はい、大丈夫です」

「そ、それじゃ、天音ちゃん。こちらこそ、よろしくお願いします」

東雲は丁寧に頭を下げる。七夕里は戸惑ったように同じく頭を下げる。

なんだ、この状況は。落ち着いた対応の東雲に、それについて行けていない七夕里、そして、その光景を目の前で見ている俺。

思ってもいなかった人と人の接触は、見ているこっちも少しばかり戸惑う。

「……そ、それで、えっと――」

自己紹介の交換が終わったところで、俺は七夕里にここに来た意図を説明した。それを聞いた七夕里は『ほんと、偶然ね』と、そして調査の実施を許可してくれた。

世間は狭い、その通りだと思う。

久々に入った店内は、変わっていた。それはそうだ。七夕里が配置を変えていたと言っていたのだから。でも、配置変えをした後でも昔と変わらず、落ち着く雰囲気はちゃんとあった。

俺と東雲は作戦通り、客を装って店内の監視を始めた。

目の前に並んでいる本の数々に、品の豊富さを感じたのだが、七夕里は、お客は昔に比べて減っていっていると言っていた。

原因は、店内にあるのではなく、店自体の立地条件だと久々に来て思った。

東雲が心配していたように、『ここら辺に書店なんて本当にあるのだろうか』と思うぐらいの所に出雲書店はあるのだ。

大通に大きな書店が出来たこの頃に、わざわざ、入り組んだ所に立地している書店へ行こうと思うのは、昔からの常連さんぐらいしかいないのだろう。

割と涼しい店内でそんな事を考えていると、レジに立っていた七夕里が俺に向かって手を招いた。

「ん? どうした?」

「ちょっと、耳貸して」

「え、う、うん」

「――天音ちゃんって、綴の彼女?」

「違う!」

七夕里に寄せていた片耳をすぐさま離し、俺の否定の言葉は店内へと響いた。

幸運な事に、店内には調査で来ている俺と東雲、店番をしていた七夕里の三人しかいない。お客様のご迷惑に、という事は無かった。

というか、その状況が店側の人間である七夕里にとっては幸運な事ではないのだが、調査の対象に気付きやすいという調査側の人間にとっては、これもまた幸運な事であった。

「ほ、ほら、そんなことよりも、ちゃんと、七夕里も怪しそうな人が入って来たら俺らに合図してくれよ」

「はーい、はい」

七夕里の軽い返事を背中で浴びて、俺は定位置へと戻った。

俺が担当している場所には、最新のラノベや名作が並んでいて、中学の頃にラノベに詳しい友達に勧められた本も並んでいた。

「結局、読んでないんだよな……」



――ライトノベル。

それは表紙や挿絵にアニメ調のイラストを多用している若者層向けの小説。しかし、この定義の曖昧さから、いろいろな説があり、

・ライトノベルを発行しているレーベルから出ている。

・ライトノベルは出版側のマーケティングにより創られた「ジャンル」であるため、出版社がその旨宣言した作品。

・マンガ、萌え絵のイラスト、挿絵を多用し、登場人物のキャラクターイメージや世界観設定を予め固定化している。

・キャラクターを中心として作られている。

・青少年(あるいは若年層)を読者に層に想定して執筆されている。

などといった定義が作られたが、結論とはなっていないという。


最後まで読んでいただきありがとうございます。


本当にPCが壊れ更新できなくなった時は、沈みました。

それでも待っていると言ってくださったり、心が救われました。


これからも新しいpcで頑張っていきますので、よろしくお願いします!


次話:十一話目(前編)は六月十八日に更新する予定です。

そちらの方もよろしくお願いします!

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