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読まれる日常と、読む非日常。  作者: 金木犀
壱:非日常である、日常の大きなプロローグにあたる物語。
10/46

――浮気男。実の妹がタイプだなんて、実にけしからん事だ。(前)

七話目(前編)を更新しました!!


いつも読んでくださっている方、ありがとうございます!

日々日々増えていくPVが僕の執筆の支えになっております!


これからも慣れない点などありますが、そんな僕をどうか、よろしくお願いします!



「――ほら。朝だぞ、月」

アラームと共に起床――ではなく、昨日と同じ様に編に早く起こされ余裕を持ってネクタイを締めながらここは変わらずいつもの様に月の小柄で柔らかい体を揺さぶり声を掛けた。

それからは何の問題もなく月が十分後位に目を覚まし、顔を洗い、朝食を食べ、制服を着て、「ん!」と俺にリボンを差し出す。真っ赤なそれは差し出す月の頬までも少し赤らめているような気がして、バランスよく着けられた赤いリボンは我ながらの自信作に仕上がった。

しかし、こんな可愛い妹に彼氏がいないとは……と、実の兄にしても思ってしまう程、「ありがとう」と微笑む笑顔は和む代物だった。

「それじゃあ、行って来るよ」

「うん、気を付けてね。――それと……昨日、お兄ちゃんが言ってた、影倫のお仕事頑張ってね。お兄ちゃんが委員会に入るなんて珍しい事だったから、昨日は驚いちゃったけど、私の事は別に気にしなくていいからね。人の役に立つお兄ちゃんなんてカッコよくて学校で自慢しちゃいたいぐらいなんだから」

「……まだ、何にもしてないんだけどな? ――まあ、でも臨時って事で俺は委員会に入っているから、帰りが遅くなる事は無いと思う。だから、心配しなくてもいいからな。ちゃんと家に帰るから……月を一人にはさせないから」

「もう、心配し過ぎだよ―― もし、お兄ちゃんの帰りが遅くなっても、ちゃんと一人でご飯作って、お風呂に入って、ちゃんと寝――」

そこで月は言葉を止め、

「ちゃんと、待ってるもん」

と言葉を繋げた。

「――そうか、待っててくれるんだな。――でも、大丈夫、必ずいつも通りに帰ってくるからさ。 ……それに、もし遅れることがあったとしたら、その時はちゃんと連絡を入れるから」

「……うん。分かったよ。 ――ほら、お兄ちゃん早く行かないと、遅刻しちゃうよ?」

「おう、それじゃあ、行ってきます」

「いってらっしゃい」

ガチャン、と笑顔で手を振る月を隙間に玄関の扉は閉まった。

「――てか、今日は異常に静かだな」

「うーん、なんか眠たい……」

「たら、なんで俺をアラーム前に起こしたんだよ……」

青空に太陽の光が丁度良い温度を届けている今朝のこの時、目を擦りながら小さな口を大きく開き、「ふわぁ」と欠伸をした編を横に、いつもの通学路を歩き始めた。

ここ最近、天気が良くて登校が憂鬱にならなくていい。まあ、例え雨が降っていたとしても傘という道具があるわけで、晴れの時と同様に濡れることなく登校が出来るのだが、それでも、雨の日より晴れの日の方が良い。なんていうのか、気分が舞い上がるというか、足取りが弾むというか。 

――どうして晴れが好きなの? という質問には、そんな言葉で答えると思うが、本当の話、心の奥底で雨の日というのは、どこか自分を憂鬱に、気分を落ち込みさせる、体が重くなる、とそんな悲観的出来事があるからで、だから雨の日は嫌いだと、そう答える事も嘘を付いている訳ではない。

 要するに、前者の理由で晴れが好き。と、他人に説明するのはそれでいい。

「昨日は、眠れなかったのか?」

「……うーん、分かんない。 ――でも、つっきーとつづりが気持ちよさそうに、抱き合って寝ているのは確認して寝たよ」

「――なんの冗談だ」

「本当だもーん。手前、それを見てつづりの頬っぺたをつまんだもーん。『んん……』って、言ってたよ?」

「やめんか、やめんか。そんな事を言ったって――」

一緒のベッドで寝ることはあっても、俺と月が抱き合って寝るという事は今まで無かった、はず。それに、どんなに仲が良い兄妹であったとしても抱き合ってなるなんてことは……けしからん事だ。

というか、隣には編がいるというのにそんな事は――

「――信じないからな」

「……写真でも撮っておけば良かった」

編は目を擦りながら口を尖らせ言った。

「と、そんな事よりも」

信憑性の無い編の言う事を聞くより、朝からずっと気になっていた事を解消した方が良いと俺は判断した。

「ツインテールが左右対称になってないぞ? ――ほら、止まって。直してやるから……」

「やめて、浮気者!」

「ここは修羅場か! もう、変な事は言わなくて……ちょ、動くと上手くできないだろ」

「いいの! どうせ、手前はツインテール似合ってないんだしぃ! それにこの薄いワンピースだって、子供みたいで嫌だぁ! つっきーみたいな髪型にして、つっきーみたいな服が着たい!」

急にごねり出した編、体全体で不満を表現するせいで、ツインテールが左右対称に上手く調整できない。

「どうしたんだよ、全く。 ――編のツインテール姿は似合ってると思うぞ? ――でも、確かに服装は坂本の件があって危ないから考える必要があるな……てか、つっきー、つっきーって、どうしてそこまで、月にこだわるんだ?」

「……つづりのタイプっぽいから」

「ばか」

素直に『ばか』しか出てこなかった。実の妹がタイプな兄なんて……これも実にけしからん事だ。

「でも――」

「いいか、編。編には編の良さってのがちゃんとあるんだ。例えな? 例えだぞ? 俺のタイプが編の想像した通り月だったとして、それで編が月の格好を真似したとしても、俺は編に心惹かれることはない。どんなに忠実に真似したところでも、やっぱりオリジナルには勝てないからな」

「――それじゃあ、手前は一生、つっきーに勝てないの……?」

「だから、例え話だ! てか、月に勝つとか、俺のタイプとか、やめなさい」

「でも、愛してる人の好みになりたいって思うのが普通で――」

「また、愛してるとか……」

今朝もハードな登校となった。見た目の割にはグイグイと攻めてくる編に俺はギャップという言葉がこの場合に適しているのか脳内の辞書で模索している最中にトントンと後ろから肩を叩かれたところで辞書はパラパラっとページが乱れて、振り返った俺の脳内の辞書には『七夕里』という文字が大々的に書かれていた。ご丁寧にルビまで振って。

「おはよう、綴。それに、編ちゃん」

「おお、七夕里。おはよう――だから、動くなって」

「おはよー。――ちょ、やめて、この浮き輪男!」

「誰が浮き輪だ‼ ――もう……あ、そうだ。七夕里! ちょっと編の髪をバランスの良い綺麗なツインテールに結んでくれないか? やっぱり、七夕里も女子だから髪を結ぶのとか上手だろ?」

「やっぱりって何よ。――まあ、私も髪は長い方だから結ぶのとかには慣れてるけど、ツインテールには今までしたことないから、上手く出来るか分からないんだけど……それでも、綴よりは上手く出来るかも」

「俺より上手に出来るなら、十分だよ。――ほら、浮き輪男の俺が結ばなきゃ、編は素直にじっとしていてくれるんだろ? 七夕里が結んでくれるって言うから、結んでもらいなさい。見ての通り、七夕里も髪が編くらいに長いから慣れているだろうし、俺がするよりは似合うと思うぞ」

「ふぇーう」

編はふぬけた返事で、俺の時とは違って素直に七夕里に身を任せ、七夕里は慣れた手つきで、左右対称、綺麗に束ねられた二本を作り上げた。真っ赤なそれが重力に従ってサラッと垂れている姿には、編の魅力を最大限に引き出し、ありのままの姿、そう語っている様にも見えた

「――はい、完成」

「ありがとう、なゆさん」

「いやぁ、本当に編ちゃんの髪はサラサラで羨ましいね! 束ねやすい事、束ねやすい事。なんで、こんな可愛い子が、綴の幻影なのかしらね~」

「どうも、七夕里。やっぱり、俺がするのとは見た目からしても違うし、整って見えるよ。それに、その質問には、俺も答えを持ち合わせていないからな」

「まあ、言ったってしょうがないわよね」

完成した究極のツインテールっ子を挟み俺と七夕里は、学校へ向かうため再び歩き出した。

七夕里と通学路が重なるこの道をひたすら真っ直ぐ進み、石で出来た、アーチ形の趣ある小っちゃな橋を渡って、俺と月が住んでいる所とはまた違った雰囲気に包まれる田んぼ道を進んだ先に俺らの通う学校があった。

別にコンビニに行くのに車で何十分もかかる……と言うほどの田舎町では無いのだが、俺らが通う学校の付近は、夏になれば、麦わら帽子を被り片手には虫取り網を持った無邪気な子供たちが遊びまわっているような、少し森に入れば、ひぐらしが世界のBGMの様に鳴いているような、そんな雰囲気を漂わせている所に建っていた。

空気は美味しい、それに和む。校舎の周りには木々に囲まれている為、夏でも涼しい。精神が完璧に安定していると言えない俺に月が調べて勧めてくれた学校でもあった。家からは歩いて行けるのに、別世界に来たような――そんな気分にさせてくれる場所。

入学して間もないが、この学校を受験して良かったと思う。――月には頭が上がらない。

 もうすぐで学校に着く。と、そんな時、七夕里が思い出したかの様に、話を聞いてほしいと言いだした。

「ん、なんだ?」

「最近ね、泥棒にあっているような気がするの。ほら、この頃、綴はうちの書店に来てくれないけど、お店の中を大々的に模様替えしたのよ。うちの周りにも他に大きな書店が出来たりしてお客さんはどうしても、そっちへ流れえちゃうから対策として。新刊や、おすすめの本とかを、店頭へ出して、呼び込もう的な作戦もあったからなんだけど……それでね。まあ、効果が出たのかお客さんが少しは増えてよかったんだけど、一つ模様替えをして気付いたことがあって。――なんだか、本が消えてる? って、思うようになったのよ。うちの書店には、監視カメラなんて物はないからちゃんと確認はできないんだけど、それでも狭いから店の手伝いをしていると監視カメラなんて無くても不審な人がいたら目につくのよ。ある日は、別に不審な人なんかいなかったし、いつもと何の変りもないんだけど、同じ位置へまた視線を向けたら、本が一冊無くなってる? って事が最近よくあるのよ……どうなんだろう?」

「いや、どうなんだろうって言われてもな……」

 要するに、目を離した隙に、本を盗られているんじゃないか? という話。七夕里は話を聞いてほしいと言って、何? と話を聞こうとすると休憩を挟まずに聞いてほしい内容を全部を話すタイプの為に、理解するのには少し戸惑う事がある。今回の場合は、あまり苦労はしなかったのだが、その事で中学校時代はいろいろと面倒な事も多かった。

「やっぱり、万引きかな……?」

「――うーん、それが確かなら、そうゆうことになるだろうけど……監視カメラが無いんじゃ、それが本当なのか、犯人は誰なのか確定が出来ないし、そもそも証拠もないから、難しいだろうな……」

「――そうかぁ」

七夕里は、すこし困った顔を見せ、肩を落としながらそれの為に落ちた鞄の紐を肩へ掛けなおした。

しかし、七夕里のいう事が本当なのならば、それは大変な事だ。

――出雲書店。店は大きくないが、困らない程度に本の種類も豊富で、どこか居心地が良く、落ち着ける場所。

それに俺が小さい頃よくお世話になっていた書店でもある。

中学生になり一番初めに仲良くなった友達が、お世話になっていた出雲書店の一人娘だと知った時は、驚愕を隠し切れなかった。――それぐらい驚いた出来事ベスト三位にランクインしている事実だった。

そんな、出雲書店が本当に万引きという被害にあっているとしたら、一人娘の七夕里にその友達であって、昔からそこで落ち着かせてもらっていた俺にとって、無関係というわけにはいかない。

「それじゃあ、今度。俺も手伝いに行くから、その時に張り込まないか?」

「え?」

「だから、犯人を捜すんだよ。さすがに、注意して見ている奴が二人以上いたら、分かると思うんだ。誰が怪しいかなんて」

「手伝ってくれるの……?」

「――おう、当たり前だろ、友達なんだし。それに昔、俺だってお世話になってたんだからさ」

「……ありがとう」

編を挟んで見える七夕里は小さくそう呟き、慌ててその気持ちを悟られないようにする為に、

「――バ、バイト代は出さないんだからね⁉」

そんなふうにツンデレを発動させた。

つまらなそうな顔をする編に、ツンっとしている七夕里、苔が生えきちんと読むことが出来ない『悠ヶ丘高校』と彫られた校門を俺ら三人は各々の表情で潜った。


最後まで読んでいただきありがとうございます。


どうでしょうか、ここまでの流れ。

自分ではちゃんとおかしくないように書いているつもりなのですが、

読者さんからみたら、おかしいな?という点もあるかと思います。

その違和感がストーリー性に抱いたのなら、それは僕の想像力、構成力不足です。


読者の方に、面白いな、また読みたいな、そう思っていただけるよう

これからも精進していきたいとおもいますので、

応援よろしくお願いします!

それに伴って、感想、評価のほどもよろしくお願いします。


*この物語は、一日置いて更新しています。出来るだけ、その流れを守っていきたいと思いますので楽しみに待っていただけるなら幸いです。

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