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生活魔法発展に関するお話  作者: ヒロ
0章 「はじまり」
9/30

魔力理論のお話

次で追いつけるかなって感じですね。


説明が長いので飛ばしてもらっても一切問題ありません。

とりあえずこういうものですよーという話なだけですからねー

―――――――――――――――――――――――――



 魔法はエレンだけが創れる、というわけではない。



 そもそも魔力さえあれば大体のことができる。空も飛べれば、水の上を歩くことも出来る。

 ただその場合、消費魔力があまりに多くなってしまい、全く実用的ではない。


 魔法とは、いわば効率的な魔力の運用といってもよい。


 国の研究機関であっても数十年から数百年という時間が必要とされているが、事象の効率化における機構をすべて無視して魔法を最適化できるのがエレンである。


 もちろん、ほかの魔法から介入しなければならないという制約があるが。


 それに性質から考えて、戦闘中に新しく作り出すのは難しいといえる。


 なぜなら、まず使用する魔力量を決めて詠唱文を考える。それからイメージを与えて名前を付ける。

 この一連の作業は戦闘中に行えないだろうから、あらかじめ創った魔法しか使えない。



 現在エレンが使える魔法は――――


 [ファイアーボール][ファイアーアロー][洗濯][ウォーターボール][アイスフィールド]



 そして知っているけど使えない魔法というのもある。


 初級魔法であれば少し練習すれば使えるようになるが、中級や上級ともなると起こしたい現象の理解やその属性に対する経験が必要になってくる。

 つまりエレンは自分の創った魔法でさえも使えないものが存在する可能性がある。



 「ウォーターヴォルテックス」が使えないのは、まだエレンに使いこなせるほどの経験がないから。


 そこから創りだした「洗濯」の魔法が使えるのは、洗濯という身近なもののイメージが難易度を低くしているからといえる。

 また攻撃のための魔法ではないことも一因になっている。



 そしてエレンが魔法をあまり知らないのは、魔法自身の性質が原因だといえる。


 国を挙げて魔法を創りだしたならば、自国の利となるように秘匿するのが普通だ。

 したがって一般的に知られている魔法自体が少ないと言える。「魔法辞典」でさえほぼ中級魔法までしか載っていない。


 上級以上の魔法を学びたければ学校に行くか、誰かに師事するのが一般的である。

 


―――――――――――――――――――――――――――



 合格発表から数日後、エレン達は学校の講堂に集められていた。


 現在は入学式の真っ最中。



「……という学生としての本分を全うするに当たって……」



 そしてエレンはイスに座って、世界で一番おそろしいといわれる魔物、通称「眠気」と戦っていた。

 ウトウトしてしまうのは仕方がない。なぜなら最恐の睡眠魔法[校長先生のお話]が発動しているからだ。



 それから5分後、校長先生の長くてありがたいお話が終わる。



「それでは皆さん、教室まで担任の先生について行ってください」


 それぞれクラスごとに2列で並んでいるが、それらの列の前に先生が並んだ。

 エレン達のクラスの前には、長い青髪でスレンダーな感じの女性の先生が立っている。


 そのまま入学式は終わり、1組(アインズ)から順に講堂から出ていく。



 先生の誘導に従って、エレンたち3人は「1-10」の教室に入った。



「おし、お前らー。席に着けー」



 席は決められていて、どうやら受験番号順だ。しかも窓側の席。

 ユルスが一番後ろの席、その前にエレン、さらにその前がガレッドの席になっていた。


 クラス全員が座ったのを確認してから、担任の先生は口を開いた。



「私がお前らの担任の"ミスティア・ウェルンシュガー"だ。受け持つ科目は魔法陣生成学。よろしくな」



 男勝りな性格がうかがえる言葉づかいであるが、彼女が次に発した言葉は生徒たちを凍りつかせた。



「よし、本題に入るぞ。お前らは10組(ツィーン)だ。本来は9組(ノイン)までしかクラスはない。まあ、実は毎年恒例なんだが……」


 ここで一呼吸置く。生徒たちはまだ何をいわれているのか理解できていない。



「これより、クラス対抗戦を行う。その対抗戦の結果によってお前らが退学になるかどうかが決まる」



 一瞬だけ静寂が訪れる。しかし状況を理解し始めた生徒が口ぐちに騒ぎ始めた。


「お…おい! いったいどういうことだ!」


 すぐにクラス中に広がるざわめき。



「どうもこうも、今言った通りだ。むしろお前らはホントならとっくに落ちてたんだぞ? 成績順なのはわかってるだろ。せっかく挽回する機会が与えられるってのに……」



 きわめて冷静に、ただ淡々と告げていく。「ホントならとっくに落ちている」という一言に全員口を閉じた。



「……そうだ、覚悟を決めろ。勝てばいいんだ。では、対抗戦の内容を伝える――――」



――――――――――――――――――――


 マジック・デスマッチ


・各クラス代表を3人選出する。

・場所は学内にある魔法訓練所にて行う

・攻撃手段は魔法に限定するが、使う魔法は問わない。

・予め支給される「身代わりの衣」が破壊された時点で脱落とする。

・相手を全滅させれば勝ち


――――――――――――――――――――



「―――以上が伝達事項だ」



 マジック・デスマッチ、ようするに魔法の撃ち合いだ。


 エレンは自分が出れば有利なのでは、と初めこそ思ったが全校生徒に見られてしまうことを考えると創った魔法はどれも使えない。


 もちろん魔力量だけでも他の生徒を上回っているため、有利であることに変わりはない。



「あとは、お前らでメンバーを決めろ。それからクラス長は――入試の結果を踏まえて、ユールシス・エクリーバ。お前がやれ」


「………はい、分かりました。」


 クラス長にはユルスが選ばれた。クラス長といっても行事などでまとめ役をするだけなのだが。



「あとはクラス長にしたがって動け。施設等は自由に使ってくれて構わないが事前に申請が必要になるからな」



 それから今後の日程について説明するミスティア先生。

 2日後にクラス対抗戦が行われる。実際に授業がはじまるのは3日後。それまでは自由に行動して構わないらしい。

 それから今日だけはすでに魔法訓練所の使用申請を済ませてあるので自由に使うようにとだけ伝えて、そのまま教室を出て行ってしまった。




 そこからはユルスが場を仕切る。


「それでは、まずメンバーを決めます……が、まだみんなの実力が分かりません。なので今から適当に3人のチームを組んでください。模擬戦をして実力を見ます」


 実力が分からない、だからまずは実力を測る。

 ユルスの言葉の聞いて疑問に思ったガレッドが挙手をして質問する。



「なあ、おいクラス長」


「……ガレッド、なんでしょうか?」



「それで勝ち残ったやつらがマジック・デスマッチにでるってことか?」


「そう思ってもらっても結構です。まあ、少し変えるかもしれませんけどね」



 3人1組ならやっぱりガレッドとエク君がいいなー、とエレンはぽかぽかな陽射しの中で考えていた。



「では30分後に魔法訓練所に集合してください。それまでにチームを作っておくこと。以上です」


 ユルスが話を終えると、クラスはまたがやがやと喧噪に包まれた。

 みんなチームを組むために動き回っている。


 そんな中、ユルスの周りにはちょっとした人だかりが出来ていた。


 ミスティア先生が「入試の結果を踏まえて……」なんて言っていたからクラスで1番の成績がいいのは間違いない。


 エク君と組むのは無理っぽいなー、とか呑気に思っていたエレンだったがしばらくすると、エク君が1人の女の子と一緒にエレンの元にやってきた。



「エレン、もしよければ一緒に組みませんか?」


「え……ええっと、その子は?」



 エレンにとっては願ってもない申し出だったが、それよりまず隣の女の子が気になった。


 背が小さく、日の光を浴びてキラキラ輝くような橙色の髪が印象的な女の子。



「はじめまして~! "ミリーナ・エストール"です!」


「私はエレンシア・ヒュージー。よろしくねー」



 第一印象はかわいらしい感じだったが、今の一言で元気な子というのが判明した。


 2人が自己紹介を終えたのを見計らって、ユルスが口を開く。



「ミリーナとは入学前からの知り合いだったんですけど、彼女までこのクラスなのは驚きました」


「わたしも驚いたー!」



 すでに面識があったという2人だが、お互い10組(ツィーン)だったのは驚きだったようだ。


 ということは彼女もエク君みたいに「できる子」なんだろうかと密かに悩むエレン。



「でも楽しそうだからいいのだよー!」



 ミリーナの子供らしい満面の笑みを見て、ついつい頭を撫でてしまったのも仕方ないだろう。


 まさにマスコットのような可愛さがあるのだ。



「それでですね、実はミリーナを誘ったのは理由がありまして……」


「はい! 実はわたし、魔力の流れが見えるんです!」



 突拍子もないことを言われ、つい沈黙してしまうエレン。

 ミリーナからは「どうだー!」といった感じで後光が射しているようにも見える。


 呆けているエレンにユルスは説明を始めた。



「エレン、そもそも魔力とは何か知っていますか?」


「えっとね……、確か魔子(フォロン)の集まり……だっけ」



 親方がそんなことを言ってたなーと思い出すエレン。


 魔力の流れはすなわち、魔子(フォロン)の移動に他ならない。そして魔子(フォロン)が振動することで魔法の種類が変わる。



「そう、その通りです。ミリーナは少し特別で、魔力の流れを視ることが出来るんです」


「へ~、ミリーナすごいねー」



 褒められて素直に喜んでいるミリーナは、魔力が見えることの利点を話し始めた。



――――――――――――――――――



魔子(フォロン)の移動」によって魔力は流れる。

魔子(フォロン)の振動」によって魔法の種類が決まる。


 そしてもう1つ大事な要素がある。それは「属性」。


 理論的には「ファイアーボール」と「ウォーターボール」の固有振動数は同じだ。違うのは属性だけ。



 では属性はどうやって決まっているのか。


 簡単に言えば、それぞれの属性に対応した「輪っか」を魔子(フォロン)が通過することでその属性を帯びる。

 ファイアーボールならば「火の輪」、ウォーターボールなら「水の輪」といった具合だ。



 それにともない、大事になってくるのが「適正」である。


 この適正は、その属性がどの程度扱えるようになるかをあらわすもの。


 適正がある属性ほど「輪っか」が大きくなり、一度に通過できる魔子の個数が増える。

 この適正が、上級魔法や最上級魔法を使うための条件になる。


 そもそも魔法には、初級や中級といった分類のほかに属性による分類がある。


 それは、「火、氷、風、地、雷、水、光、闇」の八属性。



 これはよく六角形を用いて説明される。

 六角形の頂点に、上から順に時計回りで火~水を、内側に光と闇を置く。


 火→氷→風→地→雷→水→火 ……とそれぞれに、得意不得意がある。



 ・火は、その身をもって氷を解かす。

 ・氷は、その身をもって風を妨げる。

 ・風は、その身をもって地を切り裂く。

 ・地は、その身をもって雷を封じる。

 ・雷は、その身をもって水を貫く。

 ・水は、その身をもって火を鎮める。

 ・光と闇は、その身をもって互いを打消す。



 人は属性ごとに適正があり、普通は2つまで持っている。3つ持っている人は本当に少ない。



『火を持つ者は、地を持ちやすい』


 ……というように、六角形の対極に位置するものほど適正が高い傾向がある。


 反対に、火の両隣である水と氷の適正は低い傾向にある。



――――――――――――――――――――――――――




 「……という事ですね」



 なぜか途中からミリーナではなく、ユルスが説明していた。「むずかしーよね!」とミリーナに胸を張って言われては反論の仕様もない。



「え、じゃあエク君の得意な属性って?」


「僕は風と雷ですね」


「わたしは水と光だよ~」



 エレンは「みんな六角形の対極とか関係なくない?」と思ってしまったがあえて口にはしなかった。



「そもそも、どうやって調べるの?」


「調べるための道具があるんですけど、ミリーナは視るだけでその人の適正を知ることが出来ます」


「おー! ミリーナすごいなー」



 褒めると喜ぶ。かわいいなーと眺めていたエレンだったが、ふと自分の適正が気になった。



「じゃあさ、私の適正も分かるの?」


「それはもちろん~」



 そう言ってミリーナはエレンの方をじっと見つめだした。そのまま10秒ほど経過したがミリーナが動かない。



「ミリーナ? どうですか」


「……まったく分かんなかった!」


 ユルスの問いかけに、自信満々といった様子で答えるミリーナ。



「……どういうことですか?」


「上手く言えないんだけどねー、エレンの魔力がキレイすぎる!」



「キレイならいいよねー」


「……そういう問題ではありません」



 ビシっとエレンを指差すミリーナの姿に和むエレン。



「魔力がキレイすぎるってどういうこと?」


「人によって魔力もちょっとずつ違うんだよ。エレンの魔力は純度が高いというかー、透明度が高いというかー……」


「……つまりキレイすぎて「輪っか」が分かりづらい…と。」



 魔子そのものが人によって異なるのか、とユルスは今初めて知った。



「分かりづらいだけなら、頑張ればわかるんじゃない?」


「……あーうん、そーなんだけどねー」



 なぜか歯切れが悪くなっているミリーナだったが、ぽつりぽつりと言葉を紡ぎだした。



「……間違ってるかもって思って、全部に適正あるなんてー」


「ああ、なるほど。それは間違いですね」



 「全属性に適正が!?」とエレンが驚くヒマもないほど早くユルスが否定する。


 あまりの早さにユルスをじとーっと横目でにらむエレン。



「エク君、なんでもかんでも否定するのは良くないよ?」


「というか、すべてに適正があるというのはありえません。光と闇がありますからね」


「えっと…………つまり?」


「互いに相反する属性です。両方に適正があるとは考えられません」



 光と闇は互いを打ち消す。だから両方に適正をもつのはありえない、というのがユルスの考えだ。


 彼の言葉を聞いてエレンは少しだけ残念そうな顔を見せた。



「あー、そっか。じゃあ私の適正はわかんないのか……」


「もう一つだけ可能性があるとすれば、どの属性にも適正がないってところですかね」



 「輪っか」は人によって大きさが違う。適正があるかを調べるにはその大きさを調べなければならないが、基準となるものが存在しない。


 だから適正を調べるときは、その人の他の属性の「輪っか」の大きさと比べて判断する。


 つまり、相対的にしか調べられないのだ。



 どっちにしたって駄目じゃん、と軽く落ち込むエレン。



 しかしすべてに適正がないのもありえないとユルスは語る。


 どんな人でも必ず1つは持っている、もしくはそのうち持つようになるからだ。



「それで話を戻しますけど、ミリーナがいれば相手の適正が分かります。しかも、相手が詠唱を始めた時点でその魔法の属性が分かるので有利なんですよ」



 確かにそれは有利だと思ったエレンはミリーナを再び撫で始める。


 (はた)から見れば和むよりほかない光景だが、ユルスは意に介さないといった様子でエレンに話し続ける。



「それにガレッドから聞いたんですけど、エレンは魔力が多いそうですね」


「ん? ガレッドがそう言ったの?」



 ガレッドはなんでそう判断したんだろう、とエレンは疑問に思ったが次のユルスの発言で判明する。



「エレンに魔道具突きつけられて追い回されたと言っていました」


「……あー、あったね。そんなこと」



 合格発表の翌日に、再び遊びにメインテイン工房を訪れていたエレンは「ファイコルム(空の筒)」を持ってガレッドを追い回した。


 どうせダメージ無いんだからいいよねー、と「ファイコルム(空の筒)」に魔力を溜めて放出してを繰り返して遊んでいた。もちろん筒先をガレッドに向けて。



「そういうわけで僕はこの3人で組みたかったんです」


「へー、そこまで考えてたんだ。エク君すごいねー」



 2人の横でミリーナが早く行こうよ~とじたばたし始めた。 


 それはそれで和む光景ではあるが時間もあまり無くなってきたため、3人は教室をあとにして魔法訓練所に向かった。



ミリーナ登場。

※ミリーナの70%は「ほのぼの成分」で構成されています


今回、主に魔力に関する話が多いです。

独自に理論を構成しているので、もし矛盾があれば教えてください。

感想欄でも活動報告からでも構いませんので、よろしくお願いします。

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