第三話:エレキハーツ
ライブ後のスタジオには、亘や他のメンバーもいた。なんかセッションしていた。亘はギターだった。
洋楽のコピーらしい。あのiPodのコマーシャルで流れている奴だ。
てか、うまいんですが。
歌いながらギターソロしているのですが。
俺はよくギターのことはわからんけどギターだけでやるのがギターソロだと、先輩に教えてもらった。
その先輩は相撲部だった。
軽音部いけよ!!
亘が奏でるメロディはすげー優しくて、ハードコアでもパンクでもないメロディーだ。フォークパンクとかいうジャンルもあるらしい。
俺が聴いてたのはレゲエだからよくバンドのことはわからん。
でもあいつのギターはなんか、心に染みる。
「あいつのギター、心に染みるだろ?」
「はい。なんか」
「それを、エレキハーツとあいつは名付けた。ギター一本さえあれば、あいつは心に染みる演奏が出来る。そう自信に満ちた心だ」
「へえ」
「ちなみに、俺はそれをまだ習得してないんだ…」
「マジっすか」
「あいつがどれだけギターをいじってきたかわからんが、俺の中ではあいつのギターが一番だな」
ただ技術がよくても、売れよう売れようとする心も必要以上持たない。最高のバランス力をあいつは保てているんだ。
バケツを両手に一つずつ持って、一輪車に乗ったような感じかな。
あいつは、やはりすげー。
「竹中、来てたのか」
「ああ、まあ」
「どうだったかい?亘の演奏は」
「最高ですよ、俺の歌にバッチリ合う」
「はっ?」
「んっ?」
「えっ?」
「亘、バンドを組むぞ。俺がギターとボーカル、お前がガイドギターで」
「リードだろ」
「そう、リザード」
「ポケモンかよ」
「…悠斗、バンドはギターとボーカルだけじゃない。わかるか」
「殴っていいか?」
「上手すぎず、下手すぎず、丁度いい最高のバンド」
「つまり、最高のベースと、最高のドラムだな。そんなの、俺が見つけてやる」
ついに始まったバンドライフ。俺もエレキハーツが欲しい。
そして、文化祭デビューするぞ。