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ダンジョンチーター!〜転生社畜の勘違い最強ライフ〜  作者: 北風
第1部 ダンジョン実験編

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9/45

兆し

 今日は朝から、村の噂はいつもよりにぎやかだった。


「北の丘の向こうに、新しいダンジョンができたらしい」

「未成熟なのに浅いって話だぞ」

「ギルドも調査に動くらしい」


 こういう話は、この村にとって日常のひとつだ。


 だけど――

その噂が、誰か特定の人の顔とつながることは、あまりない。


 最近までは。


(……ユートさん、今日も来るかな)


 ふと思った自分に気づいて、

慌ててその考えを押し戻す。


 だってユートさんは変な人だ。


 突然あらわれて、

装備も古い布の服だけで、

でもスライム三匹を連れていて、

言葉はちゃんと通じて、

どこか抜けていて、

危なっかしくて――


(……でも、悪い人じゃないんだよね)


 あの日、困っているときに助けてくれたから。

そして今日も、彼は店に来た。


「いらっしゃいま――あっ、ユートさん!」


 自然と声が弾んだのが、我ながらちょっと恥ずかしい。


「今日は……客として来た」


 そう言って、カウンターに銅貨を置いたとき。

胸が少しだけ、きゅっとなった。


(……本当に稼いできたんだ)


 言葉にしなくても、

その努力は伝わる。


「お金、手に入ったんですね?」


「まあ、スライムのおかげでな」


 彼の声は、昨日までよりほんの少し自信があった。


 その変化が、なんだか嬉しくて。


(この人……ちょっとだけ、頼もしくなったのかな)


「スープとパンだけど……よろしいですか?」


「最高だよ」


 本当においしそうに食べるから、

見ているこっちまで嬉しくなる。


(……努力して稼いだお金で食べるご飯。

 そりゃあ美味しいに決まってるよね)


 そう思うと、つい口が滑ってしまった。


「ユートさん……今日、すごくいい顔してます」


「そうか?」


「はい。なんだか……前より少し、頼もしいです。

 ええと……“少しだけ”ですけど」


 自分で言っておいて、

ちょっとだけ照れくさくなる。


 ユートさんは、何か誤解したみたいに、

一瞬固まって、それから慌ててスープに集中した。


(……なんで固まるの? 変な人)


 でも、それが彼らしくて。


(まあいいか。こういう人、嫌いじゃないし)


 ただ――

“好き”とか“特別”とか、そこまではまだわからない。


 私はただ、

いつも頑張ってる人を見ると応援したくなるだけだ。


(また来てくれるといいな)


 そう思ったのは、

ユートさんが店を出て、

しばらくしてからだった。


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