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ダンジョンチーター!〜転生社畜の勘違い最強ライフ〜  作者: 北風
第1部 ダンジョン実験編

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1-4: 魔力の揺らぎ――深まる迷宮の胎動

 翌朝、ダンジョンの入口に戻ったユートは、

軽く伸びをして洞窟の中へ足を踏み入れた。


 昨夜のことが何度も頭をよぎった。


(ミリアを守れなかった……。

 でも、あの時の気持ちは本物だった)


 だからこそ、

今日から本気で“強くなるための準備”を始めたい。


 そう決めていた。


「よし……まずは罠だ」


 だがユートには、

“絶対に譲れない方針”がある。


「人もモンスターも死なせない」


 これはスライムたちが寄り添ってくれた夜――

あの小さな温かさが理由だった。


 


 ユートは《Dungeon Creator》を開き、

小部屋を見渡した。


(落とし穴は……浅くして……

 底にクッションになる苔を敷けば……いけるな)


 さらに、その先に――


《滑る床(弱)》→5DP


(これで“少し焦る程度の罠”になるはず)


 ユートはタップし、設置を確定する。


 洞窟が小さく震えた。


 ゴゴゴゴ……。


 浅い落とし穴が生まれ、

その奥に滑りやすい床ができていく。


「うん、これなら安全だ」


 絶対に怪我をさせない罠。

それがユートの矜持だった。


 


(次は……モンスターか)


 スライムだけでは弱すぎる。

しかし攻撃的なモンスターを置く気にはなれない。


 《モンスター管理》を開く。




《設置可能モンスター》

・スライム 5DP

・洞窟コウモリ群 8DP

・ホーンラビット 12DP

・コボルト(会話可能)→ 30DP



(……コボルトはまだ早いな。

 てか家族として迎える準備も心構えもない)


 ユートは苦笑しながら、

最も無害で扱いやすい存在を選んだ。


「よし、コウモリ群だ」


 8DP消費。


キィ……キィィ……!


 天井に数匹のコウモリが現れた。


「……おお、本当に出た」


 最初は少し怖かったが、

ユートに向かって攻撃する気配はない。


(……スライムの可愛さの後だと、ちょっとギャップあるな)


 だが、洞窟らしい雰囲気は格段に増した。


「これで“最低限のダンジョン感”は出たな」


 


(そういえば……ミリア、どうしてるかな)


 ユートは気がつけば村へ続く道を歩いていた。


(いや……別に会いたいとかじゃなくて……

 ただ礼がしたいだけで……)


 そんな言い訳を自分でしながら、

ローデ亭の扉を開ける。


「いらっしゃいませ――あっ、ユートさん!」


 ミリアがぱっと笑顔になった。


(……やっぱり、ちょっと嬉しそうに見えるよな?)


「昨日は……ほんとに大変でしたね」

「いや……俺が勝手に転がっただけだろ」


 ユートが照れ笑いすると、

ミリアが必死に首を振った。


「ちがいます!

 あの時……私を助けようとしたことが……嬉しかったんです」


 そのまっすぐな言葉に、ユートの心が揺れた。


(……守れてないのに、それでも“嬉しかった”って言ってくれるのか)


「……俺さ」


 気づけば、心の奥をそっと言葉にしていた。


「いつか……ちゃんと守れるようになりたいって思ったんだ」


 ミリアの肩が揺れる。


「ユートさんの……そういうところ、素敵です。

 あっ、その……“好感が持てる”って意味で!」


 顔を真赤にして慌てるミリアに、

ユートも思わず苦笑する。


(……ほんと、この子、可愛いよな)


 


「そういえば……聞いたか?

 北の方に“新しいダンジョン”が見つかったらしい」


「マジか。最近なかったよな?」


「でもな、変なんだよ。

 中にスライムしかいなかったって話でよ」


「スライムだけ? それ……

 ダンジョンが生まれたばっかりってことか?」


「らしい。

 冒険者の間じゃ“未成熟ダンジョン”って噂だ」


「成長する前に押さえ込むべき……とか言ってる連中もいるらしいぜ」


(……俺のダンジョンのことだよな、これ)


 ユートの背筋が冷たくなる。


(そうか……この世界の人間は、

 ダンジョンは“自然発生する生物”みたいに考えてるのか)


 それなら“作られた”なんて発想はそもそもない。


 だからこそ――

ユートの特異性は隠しやすいが、

同時に“未成熟だから攻略されやすい”という危険性もあった。


(……急いで整えないと)


 ユートは決意を固めた。


 


「おやおや、早くも噂になってるねぇ」


 黒パーカーの男が盤面を覗き込む。


「未成熟ダンジョンと勘違いされるとは、都合がいいな」

白パンツの男が小さく頷く。


「で、ユート君はどう動くと思う?」


「守りたい相手ができたら……人は強くなる。

 彼はその典型だろう」


 二人はいつものように、

意味深な笑みを交わした。


 


 村から戻る道。


 ユートは拳をぎゅっと握った。


(このままだと……またミリアを守れない)


 その悔しさが、足取りを早める。


(だから――

 強くなりたい。せめて、守れるくらいには)


 殺さない罠でも、冒険者を驚かせることはできる。

モンスターの配置も増やせる。

DPも少しずつ積み上げられる。


(次は……もっと本格的にダンジョンを育てよう)


 洞窟の入口に着くと、

ユートはスマホを取り出した。


《編集モード》


 その文字を見つめ、

そっと呟く。


「よし……ダンジョンチーター、今日も行くか」


 ユートはダンジョンの奥へ、

一歩ずつ進んでいった。



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