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ダンジョンチーター!〜転生社畜の勘違い最強ライフ〜  作者: 北風
第3部 初めての外部ダンジョン

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3-1: 帰るための依頼

あけましておめでとうございます。


今年もよろしくお願いします。


ラースとの約束を果たしにアステッドまで来たものの、金なし、宿なし、知り合いなし。


冒険者登録でき、ルミアさんに助けられなんとか王都へ。


しかし、金欠問題がまたしても…


というわけで第3部スタートです。

 王都の朝は、冷たい。


 夜の名残を引きずった石畳が、靴底にじっとりと張りつく。

 人の往来は多いのに、空気はどこか乾いていて、余所者を歓迎していない。


 賑わいの中にいながら、温度だけが一段低い。

 この街は、そういう場所だった。


 ユートは、人波に紛れながら歩いていた。


 背中の荷袋は、軽い。


 中身が少ないわけではない。

 むしろ、持ち物としては最低限すら怪しい。


 売れる素材は、ない。

 換金できる戦利品も、ない。

 食べ物も、ほとんど残っていない。


 あるのは、使い古した道具と、着替えと、

 ――「まだ生きている」という事実だけだ。


(……昨日は、パン一個で終わった)


 腹が減らないわけじゃない。

 ただ、減るのが当たり前になっているだけだった。


 空腹を「異常」と感じなくなった時点で、

 生活はすでに崩れている。


 足元では、半透明のスライムが三匹、

 プルンプルンと跳ねながら、器用にユートの歩調に合わせて追従している。


 転ばない。

 遅れない。

 文句も言わない。


 スライム三体――ぷに、ころ、もち。


 それに、ユートの両脇を静かに歩く二体の従魔。


 狐型の獣、サスケ。

 犬型の獣、コジロウ。


 どちらも、間違いなく強い。

 本気を出せば、下手な冒険者よりよほど頼りになる。


 だが――


 拠点はない。

 インベントリもない。

 外では、《Dungeon Creator》のアプリも沈黙したままだ。


 この世界に来たばかりの頃、

 ユートは勘違いしていた。


 初めて異世界の地に立った時。

 モンスターを倒し、素材を手にし、力を得て。


 アニメの主人公みたいに、

 ワンパンで敵を倒せて、

 千切っては投げ、千切っては投げ――


(……イージーモードだと思ってた)


 だが、それは違った。


 強かったのは、自分ではなく場所だった。

 使えたのは、世界ではなく条件だった。


 インベントリはない。

 外ではアプリも使えない。


 知り合いを助けるために、考えるより先に身体が動き、

 気がつけば王都まで飛び出して――


 残ったのは、

 完全な一文無しという結果だけだった。


(……馬鹿だな)


 胸の奥で、自嘲する。


 それでも、後悔はしていない。

 選び直せと言われても、同じことをしただろう。


 だが現実は、選択の善悪など気にしない。


(帰るための金が、必要だ)


 目的は、ひとつ。


 フェルミナ村。

 ローデ亭。

 ミリアさんに言った「すぐ戻る」という言葉。


 あれは、嘘じゃない。

 だからこそ、戻らなければならない。


 だが現実は、容赦がなかった。


 王都からアステッド、さらに地方への馬車代。

 往復便がある分、値段は下がらない。


 泊まる金。

 食べる金。

 戻るための金。


(……全部、足りない)


 数えるほどもない所持金を思い浮かべ、

 ユートは静かに息を吐いた。


 だから、ここに来た。


 冒険者ギルド本部。


 巨大な石造りの建物は、朝から活気に満ちている。

 鎧の音、革の擦れる音、紙をめくる音。


 ここでは、

 生きることと、仕事をすることが直結している。


 ユートは、胸元で揺れる冒険者証を指で押さえた。


(……昨日までは、これすらなかった)


 それだけで、話を聞いてもらえない。

 仕事を探す権利すらなかった。


 今は違う。


 中へ入ると、壁一面の掲示板が目に入る。

 依頼札は、ランクごとに分けられている。


 上位ランクは数が少ない。

 下に行くほど、紙が密集している。


 ユートが向かったのは、一番下。


 Fランク。


 雑用、運搬、清掃、見回り。

 危険度が低く、報酬も低い。


(……十分だ)


 今のユートに必要なのは、

 名声でも、経験値でも、英雄譚でもない。


(生きて帰るための金)


 指先で札をめくる。


 そこで、目が止まった。


『小規模ダンジョン浅層調査

 同行:Eランク探索パーティー

 募集:荷物持ち(F)

 内容:資材運搬・戦利品搬送補助

 報酬:日当+成功時追加』


 浅層調査。

 小規模ダンジョン。

 荷物持ち。


 胸の奥が、わずかに軋む。


(……ダンジョンか)


 拠点の中では強い。

 外では、まだ弱い。


 それを、もう嫌というほど思い知らされている。


 だが――


(選べない)


 ユートは、札を掴んだ。


 生きるために。

 帰るために。


 それだけの理由で。


 受付へ向かう。


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