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ダンジョンチーター!〜転生社畜の勘違い最強ライフ〜  作者: 北風
第2部 修行と旅立ち

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36/45

2-11: 横に避けて、切る

 乗合馬車が二つ目の村を出て、街道に戻ってから半日ほど経ったころだった。


 馬が、不自然にいなないた。


 御者が手綱を引き、馬車を止める。


「……おかしいな」


 道の先。  低木の影が、不自然に揺れている。


 次の瞬間――


「ギャギャッ!」


 甲高い叫びとともに、緑色の影が飛び出した。


「ゴブリンだ!」


 御者が叫ぶ。


 数は――十体以上。


 しかも、街道を挟むように左右から現れた。


「……囲い込みか」


 ガイルが即座に判断する。


「ドラン、前! リナ、後衛制圧!」


「任せろ!」


「了解」


 馬車の外へ飛び出す三人。


 その動きは迷いがなかった。


(……速い)


 ユートは、馬車の中から一瞬で状況を理解する彼らに、息を呑む。


 だが――


(この数……  馬車を狙ってる……!)


 ゴブリンの視線は、明らかに荷と人に向いていた。


 逃げ場はない。


(……出るしかない)


 ユートは、そっと地面に降りた。


 サスケとコジロウが、無言で左右に立つ。


「主、参戦でござるな」


「殿、後ろはお任せを」


 ユートは小さく頷いた。


「……俺は前に出ない。  “起点”だけ見る」


 光秀に教わった言葉が、頭の中に蘇る。


――相手が動く前の、最初の“兆し”を見ろ。


 最初に飛び込んできたゴブリン。


 棍棒を振り上げる、その肩の動き。


(そこだ)


 ユートは半歩、横にずれる。


 風を切る音が、頬をかすめた。


 そして――


 切る。


 真正面からではない。  横から、逃げ道を塞ぐように。


 ゴブリンの腕が、力なく落ちた。


「ギャッ!?」


 そのまま体勢を崩した首元に、もう一度。


 倒れる。


「……っ!」


 自分でも驚くほど、動きに迷いがなかった。


(できる……!)


 次。


 別のゴブリンが飛び込む。


 同じように、避ける、いなす、切る。


 それだけを繰り返す。


 派手な動きはない。  ただ、相手の動きを“消す”。


 横では、ドランが大盾で群れを押さえ込んでいた。


「ははっ! いい動きしてるじゃねぇか!」


 後方では、リナの魔術が正確に数を減らしていく。


「無駄がない……あれ、独学じゃないわね」


 最後の一体が逃げ出そうとした瞬間。


 サスケが影のように回り込み、足を払う。


「主、今でござる!」


 ユートは、深く踏み込み――


 切った。


 静寂。


 ゴブリンの死体が、街道に転がる。


 息が、荒い。


 だが、手は震えていなかった。


「……終わったな」


 ガイルが剣を収める。


 ユートを、じっと見る。


「……兄ちゃん」


 その声は、先ほどまでとは少し違っていた。


「今の動き……  どこで覚えた?」


 ユートは、正直に答えた。


「……昨日、森で。  教わっただけです」


 リナが目を細める。


「一日で、あれを“使える”ようになる人は少ないわ」


 ドランが笑う。


「足手まといどころか、十分戦力だろ」


 ユートは、少しだけ視線を落とした。


「……まだ、足りません。  外では、まだ弱い」


 ガイルは、しばらく考えるように黙り――


 そして、言った。


「……アステッドに着いたら、話そう」


   “ただの同行者”から“仲間として見られ始めていた”。


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