2-3: 出会いと別れは唐突に
朝の森は驚くほど静かだった。
昨晩の特訓の余韻を感じながら、ユートはいつもの木立に向かって歩く。
(今日は昨日の復習をして……
光秀にも見てもらって……
もう少しだけ、剣の“間”を知りたいな)
そんな期待を胸に足を速めた――が。
「……あれ?」
光秀の姿がない。
昨日、二人で座って休んだ切り株の上に、
白い紙が一枚だけ、ひらりと落ちていた。
嫌な予感がしてユートは拾い上げる。
そこには、整った字でこう書かれていた。
――――――――――――
ユートさんへ
せっかく剣術のお話をもらったのに、
水を差すようでごめんなさい。
実は、僕は事情があって
“こっち側にいられるのは今日まで”なんです。
たぶんこの手紙を読んでいる頃には、
もう僕はいません。
昨日伝えた“起点を見る”練習だけ、
しばらく繰り返してみてください。
あとは身体が自然と動くようになります。
応援しています。
また会えるような奇跡があったら、
その時はお茶でも飲みましょう。
もちろん――
ユートさんの奢りで!
安田 光秀
――――――――――――
ユート「……………は?」
風が紙を揺らす。
(……マジかよ。そんな急に帰る?
ていうか事情って何? 昨日死線くぐったとか言ってたし……
え、もしかして……また日本に戻った!?)
軽くパニックになったあと、
ユートはふっと笑ってしまった。
「……最後まで、マイペースなやつだな」
昨日の光秀の姿が思い浮かぶ。
“動きを見て、起点だけ崩せば剣は通るんですよ”
“殿、そこは踏み込みが浅いです”
真剣すぎる顔でそう言いながら、
時折、年相応の無邪気な笑みを見せる少年。
(……ありがとう。
本当に、あいつに教わってよかった)
ユートは紙を大切に折り、ポーチに入れた。
「絶対、上手くなるからな。光秀」
そう呟き、
ユートは木刀を握り直した。
その姿はほんの少しだけ、
昨日よりも“剣士らしく”見えた。




