2-1: 光秀との出会い
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安田光秀は別作品の主人公です。
光秀の死線の秘密を知りたい方は、ぜひ光秀リピート ー運命の1週間ーに立ち寄ってみてください。
ミリアを守れなかった日の夜。
ユートの胸には、ずっと重たい塊があった。
「……俺、弱すぎるよな」
ダンジョン内では強い。
だが、外に出た瞬間ただの一般人以下——その現実は、胸を刺すように痛かった。
(ミリアをまた危険に巻き込んだら……俺は、今度こそ立ち直れない)
そう思うと、じっとダンジョンに籠もっていることができなくなった。
「……よし、鍛えよう。
せめて外で“人並み”には戦えるくらいには」
だが、村でまともな武器を買う金はない。
そこでユートは素材屋カナトで買った安いナイフを使い、森の倒木を削りはじめた。
シュッ、シュッ。
数時間かけてようやく形になったのは、
丸太を角取りしただけの、粗削りな一本の木刀。
「……まあ、最初はこんなもんでいいだろ。
ただの棒よりはマシだし」
試しに素振りをしてみる。
ブンッ……ブンッ……。
(うん、なんか“剣の稽古っぽい”……)
そうやって少し気持ちを整えたユートは、
森の中で基礎訓練をしようと歩き出した。
*
「さて……独学でどこまでいけるか——」
そのときだった。
「……あれ?」
木々の間で、やたらキョロキョロしながら歩き回る少年がいる。
服装は……どう見ても日本の私服。
(え……えぇ!?)
ユートは思わず声をかけた。
「ねぇ、君……もしかして日本人?」
少年はビクッと振り向いた。
「なんでわかったんですか!?
えっ……ここ、日本じゃないんですか!?」
「いや……異世界だよ」
「うわぁ〜〜……また飛んだのか……」
少年は頭を抱えながら、
「寝るか?いや、寝たよな?」「夢じゃないよな?」
などと意味不明なことをぶつぶつ言っている。
(……この子、大丈夫か?)
その時、木々の隙間から低いうなり声が聞こえた。
ブモォォォォ……ッ!!
「あ、ホーンボア!」
ユートが身構えた瞬間——少年の目つきが変わった。
「お兄さん、木刀借りますね!」
ユートの手から木刀を奪うと、
信じられない速度で振り抜いた。
ヒュッ、ヒュヒュッ、ヒュバンッ!!
5回振ったように見えた。
だが実際は——
(……え、16打!?)
ホーンボアは一瞬で倒れ伏した。
呆然とするユート。
「き、君……強いね!?
何か武道やってたの?」
少年はあっさりと答えた。
「まぁ……死線を何度かくぐってまして」
(死線!? シセン!?
それって……え、何の?
刀?……銃? え、まさか“そっち系”?
カチコミとか……そういうアレのアレですか!?)
脳内で勝手に暴走するユートのイメージ。
(いやいやでも……指は揃ってる。よかった……)
絶対に聞けない。聞いちゃいけない。
「………じゃあさ、よかったら俺に剣術を教えてくれない?」
恐る恐る言ってみる。
少年はニコッと笑った。
「いいですよ!
ただ、僕が教えられるのは剣術というより“剣道”ですけど」
この日、ユートは安田光秀と出会った。




