1-13: 調査隊帰還――揺れるギルドと村の不安
夕日が地平へ溶け込むころ、
村の入口に三つの影がゆっくりと現れた。
――正式調査隊。
中級調査隊の中でも実力を認められた、ガイル隊。
門番「おお……! ガイルさん! 皆さん、無事だったんですね!」
ガイル「ああ……全員、生還した」
門番の声に反応して村人が集まり、
一斉に安堵の息を漏らす。
「すごい……!」 「正式調査隊が全員帰ってくるなんて……」 「でも……なんか表情が暗くないか?」
その通りだった。
討伐成功の報告があってもおかしくないのに、
三人の顔には決して喜びと呼べない影が落ちている。
ギルドに戻ると、受付嬢エマが勢いよく駆け出してきた。
エマ「み、皆さん……! 本当に、無事で……!」
胸に手を当てて震えるように安堵している。
しかし、調査隊の硬い表情がその喜びをすぐに押しつぶした。
エマ「……ダンジョンは、どんな……?」
ガイル「ボス……巨大なゴーレムを確認し、討伐した」
エマ「そ、それなら……問題は解決したんですよね?」
ガイル「いや――
むしろ“解決から遠ざかった”と言っていい」
エマ「え……?」
リナ「ゴーレムの胸部にあった“核のようなもの”……
あれ、中身はただの《魔力塊》よ」
エマ「魔力塊……? あの……ただの魔力の固まりですよね?」
ドラン「ああ。ダンジョンコアとは呼べん」
ガイル「本来、ダンジョンは“コア”を中心に形成される。
なのに今回は……その肝心なものが、どこにもなかった」
エマ「……そんなこと……」
言葉が続かない。
リナ「魔力の流れも、構造も……
自然に発生したダンジョンじゃないわ。
“理屈に合わない”。」
ドラン「通路は整い過ぎていた。
まるで誰かが意図して形を作ったような……そんな具合だった」
ギルド内には緊迫した沈黙が落ちた。
「……自然変異か?」 「聞いたことないぞ、コアなしのダンジョンなんて……」 「魔力暴走? いや、違う……」
囁きが混じり、混乱が広がる。
エマ(ユートさん……
あなた、今日もあの森へ向かったわよね……
こんな危険な状況だったなんて……)
胸が締めつけられる。
(どうか……無事でいて)
ガイル「――今日は撤収とする。
このダンジョンは“未知の領域”だ。
下手に深入りすれば、隊の命が危うい」
リナ「中級調査隊の権限では分析し切れないわ。
もっと上位の専門家が必要」
ドラン「ここまでおかしいなら、
本部が動く可能性が高い」
ギルド内に再びざわめきが走る。
エマ「そこまで……危険な……?」
ガイル「未知は、それだけで脅威だ」
静かで深い声が、空気を震わせた。
ユート「いや〜……冒険者がびびって帰ってったな……
今日の演出、完璧だったわ〜!」
ぷに(ぽぽん) ころ(すごかったー) もち(ねむ……)
ユート「よしよし。
しばらく安心して開発できるな!」
――村が今まさに“非常事態”へ向かっているとも知らず。
ユートは満足げにスライムを撫でていた。




