1-11: 正式調査隊、侵入――そして偽りの召喚が始まる
朝靄の濃い森の中、正式調査隊はダンジョン入口に集結していた。
ガイル「――最終確認だ。
今回は“異常発生のおそれあり”。
各自、油断するな」
ドラン「へっ、隊長。軽いウォーミングアップ程度じゃねぇか?」
リナ「ドラン、真面目にしなさい。
こういう時ほど足元をすくわれるわよ」
軽口を挟みつつも、全員の表情は引き締まっていた。
上級冒険者である彼らでさえ、“何か”を察していた。
調査隊は静かにダンジョン内部へ足を踏み入れる。
ドラン「……こりゃまた妙な通路だな」
リナ「滑らかすぎる。
自然にできたとは到底思えないわ」
ガイル「まだ断定はするな。
まずは安全確保が先決だ」
だが、三人とも“普通ではない”と感じていた。
「前方、小型魔物!」
透明のスライムがぽよんぽよんと跳ねて現れる。
ドラン「スライムか。丁度いい準備運動だな!」
ドランが踏み込み、大剣を横薙ぎに振る。
――ブシュッ!!
一閃で三体が蒸発。
リナ「気持ちいいくらいよく斬れるわね」
ガイル「……だが弱すぎる。
通路の作りと噛み合っていない」
リナ「同感よ。違和感があるわ」
少し進んだ先で、横道から巨大な影が飛び出した。
「ブモォォッ!!」
リナ「ホーンボア! 突進来るわよ!」
ドラン「任せとけ!」
ドランは一瞬で間合いを詰め、
突進の直前に“半歩横”へズレて衝撃を殺す。
ゴッ!
ホーンボアが鼻先を打ちつける。
リナ「今よ!」
《アイスジャベリン!》
氷槍が額に突き刺さり、ホーンボアは沈む。
ガイル「無傷だな。
だが……やはりバランスがおかしい」
リナ「通路は完全に人工的なのに、魔物は弱い……」
ドラン「誰かが作ってるのか?こんな変な迷宮をよ」
ガイル「議論は後だ。前方、気配に集中しろ」
進むほど魔物の気配が薄れ、
“静かすぎる”空間が広がっていく。
リナ「……鳥肌が立つわね。
モンスターの気配がほとんどない」
ドラン「罠もねぇ。誰かが意図的に“空白”を作ってるみてぇだ」
ガイル「……全員、構えろ」
通路奥から微かな“振動”が響いた。
巨大な扉の前で足が止まる。
グ……ググ……グ……
リナ「この震動……魔力反応よ!」
ドラン「いや、違うな……“何かが動いてる”振動だ」
ガイル「……開けるぞ」
ギ……ギギギ……
扉が開いた瞬間、三人は息を呑んだ。
ドラン「でっ……か!!」
リナ「魔力密度……異常!!
こんなゴーレム、文献でも見たことない!」
ガイル「陣形を取れ。前衛はドラン、私は左に回る!」
ドラン「任せろ!!」
その瞬間――
ゴガアアアアアッ!!
ゴーレムが全身を震わせた。
リナ「っ!? 魔力増幅……いや、これは……!」
震動と同時に、
ゴーレムの後ろの壁に“穴”が突然開く。
ガシャッ!!
ガイル「後方出現!? 構えろ!!」
穴の奥から光が溢れはじめ――
リナ「魔力の光……?違う、これは……!」
ドラン「くるぞ!!」
ボウウウウッ!!
光が弾け、粉砕する。
グチャッ!グチャッ!グチャッ!
「「「グギャアアアアア!!!」」」
穴からゴブリンの大群が吐き出されるように出現した。
ドラン「な……なんだよこの量は!!」
リナ「連続召喚!? こんな魔法、存在しない!!」
ガイル「全員迎撃!! 後衛は死ぬ気で踏ん張れ!!」
その頃、少し上階層。
ユート「よしっ!
召喚演出、完璧……!!
冒険者も“ボスが召喚した”って絶対思うだろ……!」
ぷに →(ぴかーん)
ころ →(どんどん音してる〜)
もち →(にげよ……?)
ユート「いやいや、演出だって! 完璧!」
――すぐ下で命がけの戦闘が起きていることなど知らずに。




