1-7: 調査隊派遣――迷宮は密かに牙を研ぐ
村の冒険者ギルド。
掲示板の前で、ガイルが紙を剥がした。
「新規ダンジョン調査依頼……まだ誰も奥まで見ていないらしい」
仲間のリナとドランが覗き込む。
「浅いって噂ですよね」
「なら楽勝だろ?」
ガイルは静かに首を振った。
「未成熟ダンジョンは時々、妙な“成長”をする。
朝と昼で内部構造が変わることもある」
パーティーは即決で依頼を受けた。
「……来た」
外部映像に三人の冒険者が映る。
(やばい……!
昨日の“そこそこパーティー”より強そうだ……!
でも、俺のダンジョンは安全仕様……絶対に怪我はしない……!)
三匹のスライムがぷるっ。
ぷに →(がんばれ)
ころ →(敵だー!……いや味方?)
もち →(眠い)
ガイル「……浅い階層にしては、分岐が多いな」
リナ「未成熟ダンジョンって……こんなものなんですか?」
ガイル「普通はもっと単純だ。
だが“成長途中”ならあり得る」
ガイルたちは進んでいくが、
すぐに同じ場所へ戻される。
ドラン「……迷ってないか?」
リナ「これ……通ってますよね……?」
ガイル「低階層で“迷路化”は珍しいが、
未成熟ダンジョンでは起こり得る現象だ」
(すげぇ……自然扱いされてる……!)
ユートは胸を撫で下ろした。
階層に入ると、コツ……コツ……と謎の音がする。
リナ「ひっ……!」
ガイル「これは“方向感覚阻害”。
駆け出しが踏むと吐くぞ」
ドラン「浅いダンジョンでこれは珍しいな」
ガイル「未成熟の暴走か……?」
(暴走じゃなくて俺が作ったんだけどな!!)
ユートの心の叫びは誰にも届かない。
ガイルたちは三階層のループに悩まされていた。
ガイル「……これほど複雑な通路配置、普通じゃない」
リナ「でも、誰かが意図して作ったわけじゃ……」
ガイル「当然だ。天然ダンジョンに創作者などいない。
あくまで自然現象だ」
(よし……! 世界観セーフ!!)
ユートはスマホを持つ手を震わせながら安堵した。
ガイルは階段を上ったはずなのに、
下りてきたときと同じ位置に戻ってきた。
ドラン「なんだ……これ……?」
リナ「階段って……普通、つながってますよね?」
ガイル「“成長中ダンジョン”で時々起きる現象だ。
内部構造が安定していないから階段が“どこにも繋がらない”」
(完全に俺のせいなんですけど!!!)
ユートは思わずつぶやく。
「……天然ダンジョンって強いな……俺いらなくない?」
スライム三匹「ぷるぷるぷる(お前が必要だ)」
五階層は静かだった。
モンスターも居ない。
ただ、通路だけが伸びる。
ガイル「……モンスターが出ないのは逆に不自然だ」
リナ「魔力が集まっていない……?
それともまだ“孵化前”……?」
ガイル「ダンジョンが“未成熟のまま階層だけ増えた”可能性がある」
ガイルは決断した。
「今日は撤退する。
構造が安定してから、再調査だ」
(助かったああああ!!!)
ユートは地面に崩れ落ちた。
三匹のスライムも安堵のぷるぷる。
冒険者たちは村に戻り、報告する。
ガイル「浅い階層のはずが……
内部構造が異常に複雑だ。
あれは“成長型ダンジョン”の可能性ありだ」
ギルド受付「天然の……?」
ガイル「そうだ。
近いうちに難易度が跳ね上がるかもしれない」
村人たちの不安――
冒険者たちの興味――
噂が一気に広まる。
ミリア(店でその噂を聞きながら)
(ユートさん、大丈夫かな……?)
少しだけ胸がざわつく。
黒パーカー「ふふん、来たな冒険者たち」
白パンツ「面白くなりそうじゃん」




