一緒に帰る?
梅雨が終わり、8月中旬。そろそろ体育祭の季節。私、武田心菜は体育祭実行委員会に推薦され、遅くまで準備をしていた。神代学園の体育祭はとても盛り上がる。その理由は最終種目であるクラス対抗リレーがあるから。縁結びの体育祭と呼ばれているらしい。クラス対抗リレーのすぐ後に大きな杉の木の下で好きな人に告白すると成功するといううわさが流れているから。実際にカップルになったっていう人も多いみたい。それもこれもあって、体育祭はとても盛り上がる。少しボーっとしていると、きれいな声が聞こえた。
「武田さん、一緒に帰る?」
見ると、神代学園の生徒会長・神代英治先輩が。うわぁ……。お顔が整いすぎだよ……。
「武田さん?」
神代先輩の言葉にハッと我に返る。
「あ、はい」
と、とっさに返事をしちゃったけど、一緒に帰ってもいいのかな……?そう思いつつも、神代先輩の善意を無駄にしたくないので一緒に家へと向かった。
「あの、神代先輩の家、こっちの方向なんですか?」
神代先輩と私の家の途中の道のりまで来た時言った。
「うん。」
あ、あれ……?確か、李由ちゃん情報によると、反対方向なはずじゃ……。
「もうここまで来たので帰れます……!」
角を曲がってまっすぐ行くと家までのところで私は神代先輩に声をかけた。神代先輩が家に帰るのが遅くなると、ご両親が心配しちゃうかもしれないと思ったんだ。
「ううん、心配だから送ってくよ」
し、心配って、私、もう中学生なんだけどな……。迷子になるとか思ってるのかな……?
「ここまで送ってくれてありがとうございました……!」
家について、神代先輩にお礼を言った。わざわざここまで来てくれるなんて……。神代先輩は優しいな……。
そして、朝。私はいつも6時に起きる。健康って大事だよね。制服に着替えて、少し時間を置き学校に向かった。まだ7時なので登校している生徒はいなかった。私は今日日直なんだよね。職員室に教室の鍵を取り、教室へと向かった。あ、あれ?もう鍵が開いてる?一回教室のドアを開けてみると、鍵がかかっていなかった。あれ?昨日の先生が鍵かけてなかったのかな……?でも先生が鍵をかけなかったことなんてなかったし……。自分の席までまっすぐ行こうとしていると、もう一人の日直・綾小路さんが日直の仕事をこなしていた。。
「あ、おはようございます。綾小路さん。」
なぜか敬語になった私に優しくふっと笑ってくれる綾小路さん。
「おはよう。日直の仕事、もうやったから大丈夫だよ。」
綾小路さんが一人でやったと聞いて、あわてて謝った。
「え、ありがとうございます!私も日直なのに……。」
「大丈夫だよ。あ、残ってるのは窓掃除だけど、やる?」
綾小路さんのお願いに、私は勢い良くうなずいた。
「ふぅ……。」
ピカピカになった窓ガラスを見て、私は達成感でほっと息をついた。
「わ~こんなにきれいになった!すごいね。お掃除得意?」
「得意って程でもないというか、普通です。」
「そっか。」
「おはようございま~す」
うしろから声が聞こえて振り向く。あ、李由ちゃんだ。
「おはよう、李由ちゃん。」
「おはよ、心菜。あ、そっか。今日は二人が日直か。それにしても早いね。私5時に起きたっていうのに準備にめっちゃ時間がかかって7時半にきちゃった。」
ごっ、5時⁉それって、私より早いよ。
「準備って何の準備?」
素直に李由ちゃんに聞いてみた。
「私の家、母子家庭だからほとんどの家事は私がしてるの。弟が幼稚園生だからお母さんが仕事に行くついでにいつも連れて行くんだけど、この一週間お母さんが海外出張だから私が学校に行くついでに弟を連れて行ったってわけ。」
「そ、それは大変そうだね……。」
「本当だよ」
そう言ってうなだれる李由ちゃん。私も何か力になれたらいいんだけどな……。
そう思っているうちに生徒がちらほらと登校してきて、あっという間に教室の窓から見える校門にたくさんの生徒がやってきた。
そして、今日の一時間目。
「今日は、神代学園体育祭の体育祭実行委員を決めます。他クラスからも、うちのクラスからも二人出ることになっているから、投票でこの人がいいなと思った人を紙に書いてね。」
投票かぁ……体育祭実行委員……。私、体育が壊滅的にダメだからまず体育祭実行委員になるのはない、と思うけど。文武両道で美人な李由ちゃんだったらいいと思うけどなぁ。そういえば、李由ちゃんを美人っていうと、李由ちゃんは恥ずかしがっちゃって、私も美少女だよっていうけど、それはお世辞だってわかってるから、感謝の気持ちを伝えるんだ。そしたら、鏡を見てきなさいって怒られる。体育祭実行委員、誰になるんだろ。楽しみだな。その日は、体育祭の事を話して終わりの日だったから、私はそのまままっすぐ家に帰った。だれが体育祭実行委員になるかも知らずに――




