表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
男女比1:5の世界でサバイバル  作者: 桃野産毛


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

89/89

第75話 エピローグ

 あれから、怒涛の忙しさが俺を襲った。

『オメガドライブ』とバネロの間を取り持ち、

あの国の女性たちを『実地研修』として、

俺の前世の仮想現実に旅行させることにした。

 カルチャーショックはなかなか効果的で、

一部の女性は男性に好意的な印象を抱き始めた。

特に二次元趣味とアイドル趣味が盛んで、

グッズを持ち出したいとの要望が出るほどだ。

 だが、薄い本はまだダメだ、と俺が止めた。


 それと平行して、

仮想現実側をゆっくり現実に近付ける計画を進めている。

いきなり『これは全て幻だ』、と言われても、

きっと誰も受け入れられない。

徐々に、徐々に。

オカルトに現実を混ぜ混む。

 そして、

アニメや映画のように自力で真実にたどり着いた人は、

こちら側に呼び寄せる。

ゆくゆくは科学的に現実の世界を発見してもらうことで、

ゆっくり仮想現実を壊して行く。

 罪悪感がヤバいが、

俺自身アレはとんでもなくショックだったので仕方がない。

クッションは必要だ。


 いつぞや俺が提案したクローンたちの町は、

計画通り進められることになった。

主導はロボットたちだ。

 彼らは己の役割を、

例えば掃除ロボットなら『掃除』を、

人間で言う心臓の鼓動のように認識している。

やって当然、やらないのは死んだとき、と言う具合だ。

そんな彼らはその各々の役割を果たせる場所を求めていた。

 人の減っていくあの女性の街では、

満足な役割が割り振られないロボットもいた。

新しい街、人がいる所へ、

是非に行きたいと多数の機体が希望していた。

特に子守りや教育をする役割のロボットたちは、

熱望と言っても過言じゃない勢いだった。

 そして、できれば役割を人間と取り合いたくないので、

街作りから何から何まで全部ロボットでやりたいと希望していた。

 協議を重ねてロボットたちのメンテナンスだけは人の手で行い、

他は全部彼らがやることで円卓と合意している。

進捗は随時報告され、

円卓が用意した監査役と『オメガドライブ』が監視する。

 モデルは俺の前世で住んでいた日本の街で、

『オメガドライブ』と小池さんからデータをもらって既に街は完成した。

この前俺も完成した街を訪れたが、

前世で住んでいた街と見間違えそうなほどの出来だった。

 つーか、前世の俺の家を建ててやがる。

マジで止めて。

俺が泣く。


「地球の地表温度が下がったので、

地球全体の気温が少し下がりました。

ただ、まだすべての動植物を戻すことはできません。

 今も生き残っている品種を調べて、

近似種をクローンで作って増やします。

この過酷な環境で独自進化した個体もいるはずですので、

それらを保持、尊重しながら。

かつ、徐々に生態系を戻せるように計算しております。」


 そう語る『オメガドライブ』こと、

小池さんのその顔は好奇心に満ちた人のものだった。

余生と言うか、後生と言うか。

彼女は地球の環境と生態系復活を目標に活動をするつもりらしい。

 円卓と常に連携しつつ、

ロボットたちとも同期して『オメガドライブ』は今も空を泳ぐ。

 

 その間、俺は必死にバニラの亜種たちをメンテナンスした。

勝手にコピーした挙げ句、

模造品は粗悪な出来で非常に腹が立ったからだ。

レオを含め、

アンドロイドにドはまりしたマリーたちに全力で説教して。

全部回収した挙げ句、

全部正規品に作り替えて再配布した。

 メンテナンス中、

アンドロイドの所有者たちを入院させて依存症の集中治療を施した。

依存症が治らなかったヤツは気長に治療してくれ。


 円卓は新たな世界の礎を作ろうと、

必死に働いている。

デスマーチなんて目じゃないほどだ。

 『オメガドライブ』の仮想現実で八時間寝て、

現実時間は三時間半で起きる仮眠装置を作って使用してる。

俺はマジで早死にするから止めろと再三言っているが、

全員苦笑いするだけだった。


 バネロは年齢を理由に円卓を抜けた。

そして、小池さんに頼んで仮想現実への『実地研修』に参加した。

バネロは速攻でスキューバダイビングの免許を取って、

海へクジラを見に行った。

 子どものようにはしゃぐ彼女を、

円卓のメンバーたちはかなり心配していた。

見た目は若いが、七十二歳のお婆ちゃんだ。

周囲の反応は当然のものだが、

本人は隠居を楽しんでいる、と豪語している。


 そして、円卓のニューメンバーに指名されたのは、俺。


「マジで勘弁して!

マジで! マジで!!」


 俺は全力で拒否した。


「適任だろ?

むしろ、お前しかいないし!」

「チぃップ!

てめぇ、煽んな!」


 一票。


「私も賛成です。」

「レオぉ!

復讐か?! 復讐なのか?!」


 二票。


「賛成に一票。」

「リトスぅ!

てめぇまで!」


 三票。


「他にいないでしょ?」

「リンキーさん、

マジで止めろください!」


 四票。


「私も賛成します。」

「ソウジヲシマス!」

「小池さん、

貴女がやればいいじゃんか?!

 掃除ロボのは掃除ロボの総意か?!

それとも全ロボットたちの総意か?!

どっちも違うと言って!!」


 六票?

あれよあれよと、全員賛成。

あぁ、俺に安寧は二度と訪れないのか?


「ちくしょう!

絶対、絶っ対、逃げてやるからな!」


 どうぞ、どうぞ、と皆に言われた。

ぬぁぜだぁ?!



終わり

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
祝完結! この作品を知ったのは本当につい最近でしたが、とても良い作品でした!
完結おめでとうございます! この作品が2時間映画になる事を願っております!
すごく面白かった。 後半部分が駆け足になっていたけれどずっと続きが気になる作品だった。ラストでもう一回1番助けてくれたロボ達も振り返ってくれたらもっと良かったです。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ