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男女比1:5の世界でサバイバル  作者: 桃野産毛


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第47話 後悔はしたくない

 銃を突き付けられるのは、

気分が悪いが納得はしている。

俺は脱獄犯だしな。

 俺は一息ついて、話し始める。


「説明をする前に、いくつか質問をしても?」

「この場で私がすぐに答えられるものだけだ。

調べて時間を稼ぐのはなしだぞ?」

「それでいい。

どっちがと言うと俺の考察の答え合わせだ。」


 俺は銃を構えている三人に近寄る。


「IVG技術と狂った男女比のせいで、

遺伝子的な多様性が失われてる。

 先天性の疾患や感染症も問題だが、

今切羽詰まっているのは認知能力の低下だろ?」


 三人とも出るところは出ているが、

しっかり括れている。

多分、矯正下着だろうが、

三人ともHカップくらいはありそう。


「そこまで考えているのか。

概ね正解だ。」


 右のが俺としてはタイプだな。

左は良い身体つきだが、顔が可愛い系だ。

俺は美人系がタイプ。


「労働者はロボットで代替できる。

ただ、そのロボットを保守管理する人材が圧倒的に不足している。

今それに携わっている人たちは、

皆高齢だろう?」

「本当に、たった数日か?

何年も見てきたようだ。

 その通りだよ。」


 真ん中は顔から俺に対しての嫌悪感がにじみ出てるな。

命令なくても撃ちそうだ。


「技術的に可能かどうかは後で判断してくれ。

 俺の提案は二つ。

短期的な対応策と、長期的な解決策。

対応策で時間を稼いで、解決策を推し進める。

理想的だろ?」

「聞こう。」


 俺は三人の軍服を眺めつつ、

話を進める。


「この三人の軍人さんは、

身体改造までおこなった女性だろ?

 改造は主に内蔵。

心臓と腎臓、肝臓。

肺もか?」

「人によるが、主にその辺りだよ。」

「バネロさん。

貴女以外で遺伝子的な問題が起きてない。

もしくは、軽微な人は何人くらい用意できる?」


 バネロは少し思案して、答える。


「……ざっと五百人程度。」

「その五百人のクローンを作れるか?」

「クローン技術は確立されているが、

成長は自然に任せる必要がある。」


 俺は円卓のメンバーを見回しながら、

バネロに答えた。


「良いんだ、それで。

俺がいた収容所の男らで、

遺伝子的にその五百人の女性と遠いのを五百人用意できるか?」

「調べる必要はあるが、なんとかしよう。」


 俺はバネロに向き直る。


「長期的な解決策はこうだ。

さっき確認した男女千人のクローンをこことは違う場所で、

町を作って育て、暮らしてもらう。

 できれば、

俺の頭に入れた記憶の二十世紀から二十一世紀の日本の学校を作って共学でみっちり一緒に生活させろ。

 もちろん、女尊男卑も男尊女卑もなし。

教育内容もその辺りを注意しろ。

あと、怪我や病気にナノマシンや身体改造は基本なしだ。」

「何故だ?

その二つは技術が確立されていて、

後遺症も何もないぞ?」


 これは今さっきのバネロの話を聞いて追加した。


「もし、俺がこの世界を。

女尊男卑社会を作った人間なら、

死後もそれが続くような仕掛けを残すはずだ。

 教育や社会の構造だけじゃない。

きっと身体に直接作用する何かで残す。」


 バネロは腕を組んで唸る。


「……ナノマシンで思考誘導。

可能だな。

 かなり効力は弱いが、

教育と併用すれば強固にできる。」


 俺は腕を組んで続ける。


「よし、その町はここと直接交流しないようにする。

幼児の間からロボットとかで育てろ。

大人は可能な限り関わらない。

経済も医療もその町だけ独立させた方がいいな。」


 分けた町での思考誘導を防ぐ意味でも、

文化を独立させる意味でも。

ここの人たちと関わるのはしばらく後が良い。


「四十年もすれば自然に子供が産まれて、

人口が徐々に増える。

男女比が一対一だから、

遺伝子的な多様性も確保しつつ人口を増やせる。

 ただ、数を揃えるのには数世代かかると思う。

自然死以外の死因もあるだろうから、

十世代は見ないと。」

「それでは間に合わない。」


 我慢しかねたのか、

円卓の他の女性から声が上がる。

俺はその人の方を見て答えた。


「だから、一つ目の人口が一定数になったら、

追加でもう一つ別の町を作る。

同じように女性から五百人、

男性から五百人のクローンを出してな。

 その二つ目の町は一つ目の町と積極的に交流させる。

交流が頻繁になれば、

純粋に分母が増えるから人口の増加量も増える

 ただし、コストがかかるから、

三つ目以降の町の追加は様子を見て要否を決める。」


 俺は真ん中の軍服を指差して追加する。


「同時並行で、

ここの女尊男卑思想を徐々に撤廃する。

さっきのナノマシンと身体改造もだが、

教育内容を根本から見直せ。

 クローンの町に人口が揃ってきたら、

フラットな思考になったここの住人と併合する。

男女比の様子を見てだがな。

 それでも百年以上は必要だろう。

だから、もう一つの対応策で時間を稼ぐ。」


 俺は自信満々で話を進める。

バネロの感触も良い。


「君の長期的な解決策については、

検討する価値がありそうだ。

問題はまだあるが。」

「よし、対応策はゴリゴリの極悪で行く。

身体改造も記憶の植え付けも、

なんでもありありだ。

 壁を撤廃して、

働ける人材をアンドロイドに改造してでも増やす。

トリスさんのやってるような時間がかかるものじゃない。

 もう暴力で強制していく。

強制労働だ。

改造だけじゃなく、教育と訓練も強制しろ。

 その際は、俺を悪人にしろ。

俺は男だし、簡単だろ?」


 俺は格好をつけつつ笑う。


「『感情』には正論じゃ勝てない。

損得勘定すら度外視するのが『感情』だ。

人の歴史がそれを証明している。

例え自分も何もかも失っても、

『感情』を優先するのが人間だ。

 ゲルマン民族大移動もフランス革命も、

織田信長もナポレオン・ボナパルトも。

世界大戦だって、

恐怖や怒りの感情から端を発しているはずだ。」


 認知能力の差があろうがなかろうが、

感情は誰にでもある。

こういう大きな変化に対して、

抵抗する感情は主に恐怖だ。

 例え現状が悪くたって、

変化を恐れることは自然だ。

それを上回る興味や興奮などがあれば乗り越えられるが、

全員がそうではない。


「それによる国民の怒りは、

今までどおりトリスさんがすくい上げて解放軍に集める。

解放軍の規模も拡大だ。

隠れ家も増やせ。」

「私がこんなことを言うのもなんだが。

君は悪魔か?」


 バネロは苦笑いしながら俺に尋ねる。

俺は全力で悪い顔して笑う。


「おうとも。

俺は、魔王だ。」


 そうだとも。

だってこの話、全部嘘だから。

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