第35話 狂気をフルスイング
警備室にはまだロボットは来ていない。
俺は監視カメラだと思われる画像をみると、
建物の周囲は完全にロボットたちに囲まれている。
「ラッキー。
トラックは無事だ。
服と薬と食い物は確保しときたい。」
さっき『境界』近くで銃を向けられた位置より、
更に遠くに装甲車と人影が見える。
そして、『境界』の上辺りにロボットたちがラグビーのスクラムのようにならんで構えている。
「カメラ越しだと壮観だな。
チープなロボットもここまで整列するとSFだわ。」
俺はマイクを見つけた。
建物内に向けての放送用だとは思うが、
最大音量なら向こうにも届くか?
「今の俺はアイツらからしたら種馬かなんかだ。
話したところで、珍獣扱い。
どうする? 考えろ!
最低で人間同士。
いや、
ディーラーとギャンブラーくらいの立場にならないと交渉は成立しない!」
今の俺の手持ちでなんとしてでも地位を手に入れる。
ブラフあり、なんでもあり。
命がけの大一番。
しかも土俵際スタート!
「ハッハッハッ!
もう、こんなんばっかじゃねぇか!」
転生してからこっちの人生が酷すぎる。
立ち止まってゆっくりで来たのはトラックの車内くらいだ。
俺は息を吸ってマイクのスイッチを入れた。
「聞けぇ!
俺が乗ってきたトラックの荷台に爆弾を仕掛けた!
見分けなんてつかないように、
水素電池で作ってロボットに仕込んだ!
俺がスイッチを入れたら、
秒読みもせず即爆発する!」
マイクのハウリングを無視して俺は続ける。
「変な動きをするな!
ロボットも動かすな!
こっちは建物の設備でそっちを詳しく監視してる!」
「『とっ! 投降……!』」
「うるせぇ! 黙れ!
発言は許可しない!
俺が壊したロボットの話を聞いてないのか?!
水素電池をいじってロボットを壊したんだ!
今度はもっとたくさんの電池で!
もっと威力があるぞ!」
静寂が周囲を支配する。
「この作戦に噛んでる一番給料が高いやつと交渉させろ!
お前みたいな安月給お呼びじゃねぇ!」
役職名で誤魔化されるわけにはいかない。
それに、俺はこの組織の中の役職の上下を知らない。
一番偉いから、一番貰ってる給料が高い。
それは時代が違っても変わらないはずだ。
「『わ、私の……』」
「発言を許可してねぇぞ!
爆発したいか?!」
もちろん、嘘だ。
だが、ペースを握られるわけに行かない。
声の大きさと勢いで押しきる。
「聞けっつてんだよ!
安月給!
お前は黙って、高給取りを呼んで来い!」
俺は目が血走るほどカメラを注視し、
人もロボットも動かないことを確認する。
「どうせ通信はできるんだろ?!
早く呼び出せ!
給料泥棒が!」
俺は煽りながら、
叫びながらも頭は全力で回転させる。
まだ、俺の立場は話す種馬のままだ。
早く人間まで引き上げなければ。
滴る手汗を握って止める。
俺はこんなところで終わるわけに行かない。




