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第3話 独房の生活

 通路の先には部屋がある。

六畳くらいの広さだ。

部屋に入るや否や、扉が閉じられる。

 部屋の壁や天井は真っ黒だが、ほんのり光っている。

黒一色を映したモニタくらいの光量だ。

床はスポンジではなく、

ゴムのような滑りにくい素材になっている。

 少しするとまたブザーが鳴り、

床から水がにじみ出てきた。

はじめてのときは驚いたが、

この水は俺の腰の位置まで溜まると止まる。

 そして、天井と壁に映像が映し出された。

森の中の小道。鳥がさえずり飛び交い。蝶が舞う。

 床がゆっくり動き出した。

俺はそれに合わせて歩き出す。

これはつまりルームランナーだ。

 歩く速度に合わせて周囲の景色が流れていく。

悪くはない。

ただ、これらもいかんせん色褪せている。

 モニタは俺でも数度しか見たことがない、

ブラウン管の映像のように荒く、湾曲している。

スピーカもよろしくない。

音が若干割れてたり、ブレたりする。

雰囲気はホラー映画の導入だ。

 SFの世界ならば、

この辺りは現実と見紛う程の仮想空間とかあるでしょ。

立体映像とかあるでしょ。

なんか、スチームパンク感がする。

 黙々と歩かされ続けること、体感で二時間。

床が止まり、映像が消えた。

水位が下がり、解放される。

 ゆっくり歩く速度だが、

止まらず歩き続けるのはなかなか辛い。

息が上がることはないが、身体がダルい。

 扉が開いた。

今度は来た道と違う道へ誘導する矢印が点滅する。

俺はため息をつきつつ、その矢印に従う。

 次の部屋は狭い。

四畳より少し大きいかな、というくらいだ。

その部屋の中央辺りの床に足跡のマークがある。

俺はそこまで行って、

マークに合わせて左右の足を置く。


「両手を広げ、掌を開け。」


 スピーカから、そう言う指示が出た。

女性の声だ。

俺はそれに従って大の字になる。


「洗浄を開始する。

三十秒間息を止め、目を閉じろ。

動くな。」


 俺は大きく息を吸い込んで止めた。

次の瞬間、

部屋の壁、床、天井から、

スプリンクラーのように水が吹き出される。

水が溜まることはないが、

息はできないくらいの水圧だ。

目なんて開けてられない。

 次に薬液のようなものをかけられる。

水圧は落ちるが、

この液体のアルコール度数が高いのか浴びると寒い。

俺は目に入らないよう、キツく閉じておく。

 そして、お湯が始めの水と同じ水圧で浴びせられる。

そこそこ熱い。

我慢できないほどではないが、熱い。

 また、水に戻る。

今度は冷水だ。

緩急がキツすぎる。

何も整わない。

 水が止まった。

次は乾燥がはじまる。

ドライヤーのターボくらいの熱風が、

正面からかなりの風圧で浴びせられる。

思わずよろめくが、なんとか体勢を立て直す。

ここので転ぶと始めからやり直しにされるのだ。

 熱風が収まると、今度は強風が来る。

テレビとか見たことしかないが、

でっかい扇風機のあれだ。

両足を踏ん張ってなんとか耐える。

 しかも、これは正面からだけではない。

数秒毎に左右、前後から浴びせられる。

これに耐えたら終わりだ。

 三十秒間?

ふざけんな。

泥まみれの芋を洗うんじゃねぇんだから。

もっと方法があるだろうが。


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