第14話 穴ぐらの景色
服を着替え、
尿道カテーテルを外してもらった。
俺は車椅子に乗せられる。
女医は町を案内してくれると言う。
車椅子は自動で動くものだった。
俺は女医さんの後をついていく車椅子に身を委ねる。
「ここは街から離れた所にある地下だよ。
昔のレアメタルの採掘所で、
ライフラインは確保されてる。」
病室を出て、廊下を抜ける。
やはり天井は岩がむき出しだ。
映画で見た鉱山のような天井から吊るライトが、
等間隔で設置されている。
床は短距離走のトラックのような感じで整えられている。
特に気になったのが、
階段がない。
スロープか、
スロープタイプのエスカレーターで上下を移動する。
もしかしたら、
エレベーターもあるのかもしれないが俺には見えなかった。
「……人が多いな。」
「ここには三百人ほどいて、
政府から隠れて生活してるよ。」
人は多いが、男はいない。
女性ばかりが住む町。
そして、スロープより気になることがある。
あちこちにロボットがいて、
基本的な労働はロボットがしていた。
そのロボットは荒野で見たヒト型ではなく、
工場で見るような露骨なロボットアームとか機能的なデザインのものだ。
病室を見回ったり、
掃除をするのはロボット。
医師は人間で、
看護師は少ないようだ。
これ、肉体労働的なものは、
ロボットが全て行っているのか?
ロボット工学に取り組んだ人間として、
凄いと思う一方、これはどうなんだ?
人工が減り、労働人口も減る。
それを移民などで補えないから、
ロボットを使う。
理屈は分かるが、問題が色々ある。
特に人口知能でもイレギュラーが起きたときは、
どうしても対応できなかったりする。
臨機応変、対応の柔軟さは人間の方が上だ。
まだまだ気になることもある。
俺は口から出そうになった言葉を押し込めて、
外へ出るまで我慢することにした。
「ほら、ここが君が今いる町だ。」
女医はそう言って、自動ドアをくぐる。
俺を乗せた車椅子もそれに続く。
外も洞窟の中だった。
だが、天井が広く、広大な洞穴だ。
所々鉄柱などで補強された大きな穴。
そこに、ビルや建物が建てられていた。
完全にデストピアの町だ。
スチームパンクと言うのか、
チープSFと言うのか。
あちこちに何か分からないダクトや配線がされ、
所々錆び付いている。
人も多いが、
やはりロボットが平然と町中に溶け込んでいる。
ここでも肉体労働はロボットの役割のようだ。
いや、それより、何より。
「もう、これ、詰みじゃねぇか。」
俺はとうとう我慢ならず、
言葉にして口から吐き出した。
包帯が巻かれた両手で頭を抱える。




